Q:亡き父が精力剤と称して「黒焼き」を飲んでいました。私も還暦を迎え、精力減退を実感しています。黒焼きは、マムシやスッポンを土鍋で焼き、炭にした民間薬と聞いています。炭になれば何でも一緒のように思いますが、本当に効くのでしょうか?(60歳・工務店経営)

 A:黒焼きは中国から伝来した日本の伝統的な民間薬で、江戸時代には精力剤や媚薬として盛んに使われ、庶民に人気があったようです。現在も根強いファンが存在します。
 以前、故・山本巌先生(大阪・京橋で開業の漢方医学の大家)が、研究会での講義で「無精子症には白州散(黒焼きの一種)が効く。補中益気湯(漢方エキス製剤で保険適応もある)と併用すると良い」と言われたこともありました。
 私の経験ですが、入院していた50代の男性患者で、ひどく痩せて食欲もない方がいました。それでまず、補中益気湯を処方してみましたが、効きません。そこで白州散を取り寄せ、補中益気湯と併せて飲んでもらうと、みるみる元気になり、あれだけ増えなかった体重も増加したのです。
 何よりご本人が「あの薬はええ」と喜ばれたのを、今でも鮮明に覚えています。

●マムシ以上の強壮効果
 白州散は、サワガニ、マムシ、鹿角の黒焼きを均等に混ぜたもので、マムシ以上の滋養・強壮があるといわれます。この男性患者の臨床例から、黒焼きにはすぐれた滋養・強壮効果があると確信しました。精力増強も期待できます。
 さらに興味深いものに、イモリの黒焼きがあります。映画『千と千尋の神隠し』にも出てきたので、覚えている人もいるでしょう。イモリの黒焼きは惚れ薬です。好きな女性にこの黒焼きを振りかけると、その女性が惚れてくれるというのです。
 江戸中期、好色じいさんが気に入った若い女性に黒焼きを振りかけ、夕刻に待ち伏せしていると、なんとその女性が腕に噛みついたというのです。
 それで、じいさんが慌ててその黒焼きの包みを再確認したら〈狼〉と書いてあったそうです。
 この話は江戸時代のジョークですが、ご質問の方はぜひ黒焼きを試してみてください。

牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など、保険診療の枠にとらわれずベストな治療を実践。小山病院(大阪市東住吉区)院長。