試合後に辞意を申し入れた原監督、最後の試合は今季を象徴する試合に

 2015年の読売ジャイアンツの戦いが終わった。クライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージに進出したが、リーグ覇者のヤクルトに1勝しかできずに敗退。これは2006年から続いた原政権の最後の戦いでもあった。

 試合後、巨人・原辰徳監督は辞意を申し入れた。2013年オフに新たに2年契約を結び、今年で契約が満了。2006年からの10年間の第2次政権では6度のリーグ優勝。2度の日本一を果たした。

 CS最終ステージでは2試合連続完封負けをするなど、バッティングが奮わなかった。「打線が1点も取れなくては…」と嘆いたように、17日の試合で阿部に2点タイムリーが出るまでは25イニング連続無得点。内野ゴロ1本で得点が入るような絶好機でもポップフライが続くなど、シーズンを象徴するような戦いだった。

 2012年からのリーグ優勝を支えたのは、阿部慎之助、村田修一、坂本勇人、長野久義といった、原監督が言うところの「枢軸」の4人の打者だった。阿部はCSファイナルステージでは16打数11安打、6割8分8厘と安打を量産したが、村田や長野は守備のミスにチャンスで凡退と足を引っ張った。坂本も初戦で勝ち越し本塁打を放ったが、なかなか阿部の前に出塁できなかった。

最後は主力選手と心中した原監督

 原監督がファーストステージで坂本を7番に下げた試合もあった。村田や長野に関しては、スタメンから落としてもいいぐらいの低迷ぶりだった。

 村田は第1ステージで先発落ちしたものの、最終ステージでは出場が続いた。シーズン中、厳しい言葉をぶつけたり、2軍降格をさせることもあった村田を原監督は最後まで信じて起用した。しかし、失策や無安打と期待に応える活躍は出来なかった。そして、負けに直結した。

 退任を覚悟した上での最終ステージ。原監督はかつて栄光に導いてくれた主力選手と心中した。第1戦の先発投手にはシーズンでまったく活躍していない内海哲也を信じて先発させた。内海もまた、原政権で優勝に何度も貢献したかつてのエース左腕だった。

 彼らで負けても悔いはないー。そんな思いが戦いから伝わってきた。

愛情が見え隠れした最後の采配

 ヤクルトに敗れた17日の試合は、捕手の小林誠司以外、野手をすべて使った。代走の切り札・鈴木尚広、2013年の日本シリーズで本塁打を放つ活躍を見せた寺内崇幸、阿部の不在時に加藤とともにマスクでカバーしてきた実松一成ら、サブメンバーもどんどん送り出した。自分を名将にしてくれた選手たちに感謝の思いを告げるかのようだった。

 そして、9回2アウト。この試合で2本の長打を放っていた立岡宗一郎に代えて、高橋由伸を代打に送った。最後の最後にとっておいたベテランが空振り三振に倒れ、原監督の最後となった。

 ファンの悲鳴も聞こえる中、原監督は神宮球場のレフトスタンドへ、応援してくれた一人一人に感謝の思いを伝えにいった。阿部らと握手し、言葉を交わした。

 ひとつの区切り、新陳代謝の必要性を訴えて、原辰徳は巨人のユニホームを脱ぐ決意をした。時には冷徹に勝負に徹してきた指揮官だったが、最後の選手起用にはどこか愛情が見え隠れしていた。