「死ぬ権利」の議論に大きく影響 bugtiger/PIXTA(ピクスタ)

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 患者が死を望んだとき、医師がそれを手助けすることは許されるのか──。生命倫理の根本にかかわるそのような命題を、否応なく突きつけるニュースが飛び込んできた。

 米カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事が、末期患者が自ら死を選ぶことを認める「死ぬ権利」法案に署名したのだ。同州上院は今年9月、余命わずかな患者に対し医師が致死薬を処方することを認める法案を賛成23票、反対14票で可決した。

 アメリカではすでにオレゴン州、バーモント州、ワシントン州、モンタナ州で安楽死が法的に認められている。だが、人口約4000万人のカリフォルニア州がこの決定をしたことは、広くアメリカ全体における死ぬ権利の議論に大きく影響を与えるだろう。

保険会社が弱者を死に追いやる可能性も

 この法案は、1994年にオレゴン州で成立した「尊厳死法」にならったものだ。昨年、カリフォルニア州で末期の脳腫瘍と診断された29歳の女性がオレゴン州に移住して安楽死を選んだことも、今回の可決を加速させる一因となったという。

 これら2州の法律ではいずれも、医師2名が患者の予後を診断し、余命6カ月未満であること、患者に精神疾患や気分障害がないこと、決定を強要されていないことを保証する必要があるとのことだ。

 しかし、身体障害者擁護団体Disability Rights Education and Defense Fundの政策アナリストであるMarilyn Golden氏は、「この"自殺幇助法"によって、保険会社が弱者を死に追いやる可能性がある」と懸念している。

 そして、すでにオレゴン州で患者が致死薬の処方を認める医師が見つかるまで、「ドクターショッピング」を続けるケースが起こっていることを指摘している。

日本での「尊厳死」の動きにも影響か?

 日本でも延命治療をしない「尊厳死」を求める動きは広がってきている。一般財団法人日本尊厳死協会には、実に11万8300人もの会員がいる。

 だが、尊厳死で求めている「延命治療をしない」ということと、カリフォルニア州で今回成立した、医師が患者の求めに応じて致死薬を処方する「死ぬ権利」との間には、大きな隔たりがあると考えるべきだろう。

 今回カリフォルニア州で成立した法案に関しては、「死ぬ権利」が次第に拡大解釈され、医療費のかかる末期患者が周囲を慮ってこの権利を行使してしまうのでは、という懸念が存在する。

 それ以前に、患者本人にせよ医師にせよ、人間が生命をコントロールしていいものだろうか、という根源的な命題につきあたる。

 生命は、それぞれがただひとつのもの。自分ひとりだけのものではない。医療や科学の発展が、生物の寿命を延ばすことに寄与してきた一方で、最期の遂げ方にどう関わるのか、今後も議論を呼びそうだ。
(文=編集部)