「一億総活躍社会」は「一億総ストレス社会」!?(写真は官邸HPより)

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 今年12月1日に施行される改正労働安全衛生法。その取り決めにより、事業者は従業員に対し、ストレスチェックと面接指導の実施等が義務づけられることになった。

 50人以上の従業員がいる企業にとっては、あと2カ月足らずで適用されるこの制度(従業員50人未満の事業は当分の間、努力義務)。いったいどのようなものなのだろうか?

 厚生労働省が発表している「制度の概要」によると、このストレスチェック制度は、「定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させる」「検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものも低減させるもの」だという。

 さらに「その中でメンタルヘルス不調のリスクの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する取組」だと説明している。

 ストレスチェックの調査票にどのようなものを使うかは事業者が自ら選択できるが、国が推奨する標準的な調査票もあり、それがネットでも公開されている。

ネットで公開された"標準的な調査票"

 「A あなたの仕事についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください」という設問には、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理できない」「一生懸命働かなければならない」「かなり注意を集中する必要がある」など17問。それぞれ「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4段階から回答する。

 「B 最近1カ月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはまるものに○を付けてください」とい設問には、「活気がわいてくる」「元気がいっぱいだ」「生き生きする」「怒りを感じる」など29問。それぞれ「ほとんどなかった」「ときどきあった」「しばしばあった」「ほとんどいつもあった」から選択する。

 「C あなたの周りの方々についてうかがいます」には、「上司」「職場の同僚」「配偶者、家族、友人等」についてそれぞれ「どのくらい気軽に話ができるか」「どのくらい頼りになるか」「個人的な相談をどのくらいきいてくれるか」を回答する、といった具合だ。

 最後のDは「満足度について」。「仕事」「家庭生活」それぞれに対し、「満足」「まあ満足」「やや不満足」「不満足」の4つから回答する。

制度と逆行する「一億総活躍」の掛け声

 うつ病による休職者や退職者の高止まりが社会問題となり、多くの人が苦しんでいるなかで、職場におけるストレスの度合いを早めにチェックする調査が制度化されることは評価したい。

 だが、このような機械的な調査が根本的な解決につながるのかというと、それは疑問だ。「調査をちゃんとやっているからうちの会社は大丈夫」という免罪符に使われてしまい、職場におけるコミュニケーションの柔軟さや、ゆとりのある仕事内容、勤務時間の短縮といった本質的な問題がむしろないがしろにされはしないかという懸念が残る。そもそも、調査対象となる人が会社に気を使って正直に回答しない可能性だって否定できないのだ。

 折しも、安倍晋三首相は「一億総活躍社会」などということを言いだし、先の内閣改造で「担当大臣」まで任命した。「一億総活躍」というのは、要するに小さな子ども以外は、どんなにしんどくても休みたくても身体や心が疲弊しても働き続けろ、という意味につながりはしないのか?

 そのように、走り続けなければふるい落とされてしまうようなハードな社会の動きこそが、疲弊するビジネスマンを大量に生み出しているのではないだろうか――。

 厚生労働省の「ストレスチェック制度の概要」によると、このストレスチェックで高ストレスの通知を受けた労働者から申し出があったときは、医師による面接指導を行なうことが事業者の義務になるという。

 願わくは、この「ストレスチェック調査票」が正しく使われ、休みたいときは休める社会にもっと近づくことを期待したい。うつ病の多くは、まぎれもなく「職場の過重負担」によって起こっているのだから。
(文=編集部)