南米でも2018年W杯予選が開幕、10月8日と13日に第1節、第2節が行なわれた。そして第1節は、ブラジルとアルゼンチンの二強が揃って敗れるという波乱の幕開けとなった。

 ネイマールを出場停止で欠くブラジルは、7月にコパ・アメリカを制した南米王者のチリとアウェーで対戦し、0−2で敗れた。試合後、ブラジルのドゥンガ監督は、「1点目を取られるまでは互角の戦いだった」と語ったが、これは裏を返せば、試合全体では内容でもチリに劣っていたことを認めたことになる。

 元ブラジル代表のロナウドは、「ブラジルは予選突破で苦労するだろう。それはチームの問題ではなく、他の国によってもたらされる」と、南米諸国のレベルアップがブラジルを脅かしていると見ている。もはやブラジルという名前は脅威ではないということか。しかし第2節は格下のベネズエラをホームに迎え、3−1で快勝してひと安心。次節からは頼みのネイマールも復帰する。

 同じく第1節、前回W杯準優勝にして現在FIFAランキング1位のアルゼンチンは、ホームでエクアドルに0−2で敗れるという大失態を演じた。

 左ひざの負傷でメッシは不在。彼の代わりに10番を背負いキャプテンマークを着けたアグエロが早々と肉離れでピッチを去るという不運もあった。しかしそれでもこれまでなら、エクアドルに"完敗"することなど考えられなかった。エクアドルは引き分け狙いやカウンターオンリーでなく、ビッグネームに臆さずしっかりと攻めてきた。

 鋭いサイドアタックに苦しむアルゼンチンは多くのセットプレーを相手に与え、ついに耐え切れず、という感じで終了間際にCKから失点。その1分後には、絵に描いたようなカウンターでとどめを刺された。アルゼンチンがモニュメンンタル・スタジアム(リーベルプレート・スタジアム)で敗れたのは、1993年9月5日に行なわれたアメリカW杯予選のコロンビア戦(0−5)以来のことだ。

 アルゼンチンの第2節は、アウェーでのパラグアイ戦。直近の対決(コパ・アメリカ準決勝)では6−1で一蹴した相手だ。しかしパラグアイのベテランMFオルティゴサは、「アルゼンチンには世界トップレベルの選手がたくさんいる。でも別格はメッシだけ。それ以外の選手には対応できる」と試合前に自信を示した。

 このコメントは、非常に核心を突いたものだ。アルゼンチンにメッシがいる場合、相手はまず、メッシをどのように押さえるかというメッシ対策を考えねばならない。マンツーマンでピッタリ張り付くのか、2人でメッシ番をするかなどの作戦を立てる。そしてこの対策がこれまで培ってきたチーム戦術に足かせとなり、本来の力を出し切れなくなる。エクアドルも、メッシがいたらあれほど攻撃的にプレーできなかったはずだ。

 テベスにメッシの代役を期待する声もあるが、両者はプレースタイルが違う。テベスはゴールに近い場所で能力を発揮する。一方のメッシは、得点能力も非凡ながら、中盤やサイドに開いてのプレーが得意で、そこから攻撃を組み立ててチャンスを作る。マルティーノ監督も「テベスにメッシの替わりはできない」と明言し、完全なトップとして起用している。

 結局、アルゼンチンはパラグアイ戦も試合をコントロールできず、0−0の引き分けに終わった。メッシの欠場を想定し、彼の不在バージョンはかねてより準備してはいるが、それがうまく機能しない。知らず知らずのうちに、選手がメッシに頼り過ぎているのだろう。

 アルゼンチンは2試合を終えて勝ち点1の7位という状況だが、今後もさらなる苦境が予想される。11月12日に行なわれる第3節の相手はブラジル。ホームではあるが、宿命のライバルにはエースのネイマールが戻って来るのに対し、メッシはまだ復帰できない。そして17日の第4節はアウェーでのコロンビア戦。こちらも現在負傷中のハメス・ロドリゲスが戻り戦力はアップする。しかも試合会場のバランキージャは灼熱の地で、アウェーチームには厳しい条件となる。つまり、2連敗の可能性があるのだ。

 90年イタリア大会で準優勝したアルゼンチンは、94年アメリカ大会の予選では苦しみ、オーストラリアとのプレーオフに回ることとなった。今後の展開次第では、W杯で準優勝すると次回の予選で苦労する、という新たなジンクスが生まれるかもしれない。

三村高之●文 text by Mimura Takayuki