ラグビー日本代表は予選プールで3勝1敗という好成績を残しながら、決勝トーナメント進出は果たせなかった。決戦の地から帰国したあとも、「ワールドカップ史上最強の敗者」と称されたエディー・ジャパンの人気は、ますます過熱している。

 そんななか、10月17日より生き残った8強による決勝トーナメントが、いよいよ幕を開ける。このノックアウト方式のトーナメントを勝ち上がった勝者のみが、「ラグビーの創始者」とされる伝説的選手の名にちなんだ優勝杯「ウェブ・エリス・カップ」を手にすることができるのだ。

 準々決勝の対戦カードは、以下のとおり。

(1)南アフリカ代表(プールB1位/1.33倍)vs.ウェールズ代表(プールA2位/3.50倍)
(2)ニュージーランド代表(C1位/1.17倍)vs.フランス代表(プールD2位/6.00倍)
(3)アイルランド代表(プールD1位/1.53倍)vs.アルゼンチン代表(プールD2位/2.75倍)
(4)オーストラリア代表(プールA1位/1.10倍)vs.スコットランド代表(プールB2位/8.00倍)

※準決勝のカードは10月24日に「(1)の勝者vs.(2)の勝者」、10月25日に「(3)の勝者vs.(4)の勝者」で行なわれる。カッコ内の倍率はイギリス最大のブックメーカー「ウィリアムヒル」によるもの。

 この準々決勝4試合のなかで、何と言っても世界的に注目されているのは、ニュージーランド代表対フランス代表戦だ。その理由は、前回大会の決勝戦のカード(8−7でニュージーランド代表の勝利)というだけでなく、前々回の大会でも激闘を演じた「因縁の対決」だからだ。

 2007年のフランス大会、両者は今大会と同じ準々決勝で、しかも同じ会場(ミレニアム・スタジアム)で対戦した。このときは、「レ・ブル(フランス語で青)」の愛称を持つフランス代表が青のジャージでないセカンドジャージを忘れたという理由で、ニュージーランド代表は黒ジャージの「オールブラックス」でなく、グレーのジャージを着てプレーしなければならなくなった。

 さらにニュージーランド代表がハカを踊るとき、フランス代表たちは全員で肩を組み、ハーフウェーラインのギリギリまで前進して相手を威嚇。試合前から一触即発のムードとなった。結果、勝利を収めたのはフランス代表。ニュージーランド代表はミスを連発し、18−20でW杯から去っていった。

 今大会の準々決勝に話を戻そう。

 フランス代表は予選プールの最終戦でアイルランド代表に敗れたものの、常にレベルの高い試合を継続しており、準々決勝も不安なく試合に入ることができるだろう。2007年大会を経験しているFL(フランカー)ティエリー・デュソトワール主将、SO(スタンドオフ)フレデリック・ミシャラクは好調で、悲願のW杯初優勝に向けて意気込みも十分。前回大会決勝のリベンジに燃えており、ニュージーランド代表戦への集中力は極めて高い。

 一方のニュージーランド代表は、予選プール初戦のアルゼンチン代表戦以外、ほとんど苦労した試合を経験していない。よって、準々決勝でいきなりギアを上げられるかが、勝負のカギとなるだろう。「絶対王者」と言われつつも、「欧州での開催地では優勝できない」というジンクスを持つオールブラックス。準々決勝のフランス代表戦は、それを打ち破る最大の難関かもしれない。ちなみに今回、ニュージーランド代表はアウェージャージではなく、いつもの「オールブラックス」で試合に臨めるという。

 予選プール初戦で日本代表に苦杯を喫した南アフリカ代表は、準々決勝でウェールズ代表と対戦する。このカードは、やはりW杯2回の優勝を残る「スプリングボクス」こと南アフリカ代表が有利だ。日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)に「彼がプレーしないと南アフリカは優勝できない」と言わしめた、世界最高のSH(スクラムハーフ)フーリー・デュプレアがウェールズ代表戦でもゲームキャプテンとして先発する。デュプレアが試合をコントロールすれば、まず負けることはないだろう。

 ただ、ウェールズ代表はケガ人が続出しながらも、イングランド代表を破って「死の組」予選プールAを突破してきたチームだ。FLサム・ウォーバートン主将とキックの名手SOダン・ビガーを中心に、固い結束力で南アフリカ代表にぶつかってくるに違いない。ほぼホームともいえるイングランドという地からの声援も、彼らを後押しするだろう。

 ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズ(倍率)でもわかるとおり、準々決勝で一番の好勝負が期待されているのが、アイルランド代表対アルゼンチン代表戦だ。アイルランド代表は予選プール最終戦でLO(ロック)ポール・オコンネル主将がケガによりチームから離脱し、司令塔SOジョナサン・セクストンも負傷の身。準々決勝を前に、かなりのピンチを迎えている。彼らに代わる選手がどこまで奮起できるかが、勝敗を左右するだろう。

 対するアルゼンチン代表は、SOニコラス・サンチェス、CTB(センター)フアン・マルティン・エルナンデスの調子が非常に良く、準決勝進出に向けてチームの雰囲気も上々だ。2007年大会以来となるベスト4進出なるか、「南米大陸の雄」が満を持して挑む。

 そして最後のカードは、オーストラリア代表対スコットランド代表。「ワラビーズ」の相手がエディー・ジャパンだったら......と、つい思ってしまうのは仕方ないところか。

 予選プールAを2位突破したスコットランド代表が相手でも、W杯2度制覇のワラビーズ有利は崩れない。W杯直前に行なわれた「ザ・ラグビー・チャンピオンシップ(南半球4ヶ国対抗)」で優勝したオーストラリア代表は、その勢いのまま本番に突入。「死の組」と呼ばれた予選プールAにおいても、イングランド代表とウェールズ代表を倒し、全勝で準々決勝に進出してきた。

 知将マイケル・チェイカHCが率いる今大会のオーストラリア代表は、まったく隙がないと言っていい。FLマイケル・フーパーやCTBマット・ギタウを筆頭に、どのポジションも選手層が厚い。一方のスコットランド代表は、主軸のHO(フッカー)ロス・フォードとLOジョニー・グレイが予選プール最終戦で危険なタックルを犯して3試合の出場停止となり、決勝トーナメントのフィールドに立つことができない。SHグレイグ・レイドロー主将を中心に、どこまで粘りを見せることができるか。

 準決勝のカードの戦前予想は、「南アフリカ代表対ニュージーランド代表」「アイルランド代表対オーストラリア代表」が多くを占めている。個人的には、ウェールズ代表とアルゼンチン代表の奮闘に期待したい。ちなみに、エディー・ジョーンズHCの決勝予想は、「ニュージーランド代表対オーストラリア代表」だ。

 2015年のラグビーワールドカップも、残り8試合(3位決定戦含む)――。ここからは、負けたら終わりの一発勝負が始まる。さぁ、心ゆくまで「楕円球の祭典」を楽しもう。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji