2011年のプロテスト合格後、プロ5年目となる今季、初めてレギュラーツアーにフル参戦している青木瀬令奈(22歳)が奮闘している。

 メジャー大会のワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップ(5月7日〜10日/茨城県)で4位タイに入るなど、ベスト10フィニッシュを3回マーク。まだまだ予断を許さない状況ではあるが、賞金ランキング47位(10月15日現在)につけて、初の賞金シード獲得(50位以内)が目前に迫ってきた。

 青木はこれまで、翌年のツアー出場権を争うQT(※)でなかなか結果を残せなかった。2011年はファイナルQTにさえ進めず、2012年、2013年はともにファイナルQT74位という結果にとどまった。しかし昨年、ファイナルQTで25位という好成績を残して、ついにツアーの出場資格を手にした。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 青木が、昨年のファイナルQTを振り返る。

「今はすごく調子が上がってきていますが、昨年のQTはよく通過したな、って思います(笑)。飛距離がまったく出なくて、調子が悪い最中でしたから。それで、よくシードを勝ち取ったな、と」

 ツアーフル参戦という念願叶った今季、青木はオフからしっかりと準備を整えてきた。

「初めてのフル参戦ですから、どういうペースで自分の体力や調子を持っていったらいいのか、それを考えながら調整してきました。そして、第一の目標に掲げていたのは、一年を通してケガをしないようにすること。コースが毎週変わる中、それに対する、自分の対応力や応用力が問われると思ったからです。そのうえで、賞金シードを獲ることも目標としていました」

 だが、青木はいきなり"壁"にぶつかった。開幕2戦連続で予選落ちを喫すると、3戦目のTポイントレディス(3月20日〜22日/佐賀県)こそ25位タイという結果を残したものの、そのあとは再び、6試合連続予選落ちという憂き目にあった。

 予想以上に苦戦を強いられる中、青木は混乱していた。このままでは予選通過すらままならない。どうしたらいいのか――青木は苦悩の日々を過ごしていたが、そんな彼女の悩みなどお構いなしに、トーナメントは休むことなく、毎週開催されていく。

 そこで、青木は決断をした。「自分が変わらなければいけない」と、急きょ4月から新たなコーチを迎え入れた。

 その効果はすぐに現れた。6戦連続予選落ちの直後、国内メジャー初戦のワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップでいきなり上位争いを演じて、4位タイでフィニッシュした。「この結果は、コーチの力が大きかった」と青木は言う。

「コーチというのは、ツアーを志向している大西翔太プロです。同い年で、ジュニアの頃から知っていて、キャディー兼コーチという形でお願いしました。大西さんのおかげで、確実にゴルフは変わりましたね。序盤戦は調子が悪かったのもあるんですが、ドライバーの飛距離が210〜220ヤードくらいしか飛ばなかったんです。それが、サロンパスカップでは開幕戦当時よりも20ヤードほど飛距離が伸びました。今では、30〜40ヤードくらい伸びていると思います」

 飛距離が出るようになった要因は何なのか。続けて青木が解説する。

「スイングをアッパー軌道に修正していったんです。『トラックマン(※)』のデータに、"アタックアングル"というものがあるんですが、クラブヘッドがボールをとらえる入射角度を計測するもので、その数字がプラス表示だと、アッパー軌道で打てているということになるんですね。で、開幕当時に私は、マイナス6だったんです。それが今では、プラス3.5とか4という数字が出るようになって、それだけで飛距離が30ヤードは伸びました」
※さまざまな打球のデータを測定する機械。スイングのチェックもできる。多くのツアープロやコーチが活用。クラブフィッティングやクラブ開発にも役立っている。

 そうは言っても、シーズン中にスイングを改造することは、かなり勇気がいることだ。修正に失敗すれば、たとえ飛距離は伸びても、ボールが真っ直ぐに飛ばなくなることもある。スイング改造に着手して、第一線から消えていったトッププロも少なくない。

「正直、最初は(スイング改造へ)思い切る勇気がなくて......。自分でも、スイングが悪いのはわかっていたんですけどね。ドライバーの飛距離だけじゃなくて、アイアンも左へ、右へと飛んでいましたから、これは直さないといけないと思っていましたが、とにかく(決断する)勇気がありませんでした。でも、コーチが後押ししてくれたんです。初めは多少の違和感があったとしても、『この練習をしておけば、普通に打てるくらいには戻れるから』って言われて。それで、がんばってみようと。そうしたら、1カ月くらいで結果が出たんです。もしスイング改造に踏み切っていなかったら、今でも予選通過できていたかどうか......。上位争いなんて、絶対にできていなかったですね」

 そう言って、青木は屈託なく笑った。

 青木はプレー中、バーディーを取っても、ボギーを叩いても、あまり表情を変えないようにしているという。

「完全にポーカーフェイス。周囲から『いつでも同じ表情をしているね』って言われます(笑)」

 そんな青木が、今季は一度だけ、ガッツポーズを見せた。センチュリー21レディス(7月24日〜26日/静岡県)の2日目のことだ。

「残り3ホールで、ひとつバーディーを取らないと予選通過できないって状況で、(INスタートでの終盤)7番、8番とバーディーチャンスを外してしまって......。そして、最後の9番ホール。これを決めなければいけない、というバーディーパットは7〜8mの距離が残っていました。そのとき私は、『絶対に入れる!』と思ってしっかりと打ったんです。そのパットが入って、思わずガッツポーズが出ましたね」

 初のツアーフル参戦で苦労しながらも、着実に結果を出し始めた青木。初の賞金シード獲得という目標達成も現実味を帯びてきた。そのために必要なこと何か。青木は「メンタル」と言い切った。

「スイングに一番影響するのは、メンタルだと思うんです。ゴルフ5レディス(9月4日〜6日/岐阜県)のときがそうでした。最終日に優勝争いに加わりながら、15番でダブルボギー、17番でボギーを叩いて、そこから脱落してしまいました(最終的に11位タイ)。結局、途中で自分が上位にいることがわかって、(それがプレッシャーとなって)スイングがおかしくなったと思うんです。だからこそ、やっぱりメンタルが大事なんだろうな、と。

 実は、以前はスコアボードを見ないようにしていたんですが、コーチから『(ボードを見て)自らの状況を受け入れてプレーしなきゃダメだよ』って言われたんですね。それで、あのときもボードを見ていて......。でも実際、それも克服していかないと上に行けないと思いますから、スコアボードを見ても、プレーが揺らぐことのないようにしたい。そういうメンタルを培っていきたいです」

 前半戦は、予選突破すらままならなかった青木。しかし今では、「予選を突破したい」というのはもちろん、それ以上に「上位争いをしたい」という気持ちが強くなってきた。自らを「変えよう」と、あらゆる"チャレンジ"を重ねてきた彼女なら、そうした機会は必ず増えていくだろう。その結果として、目標とする賞金シードも手にするに違いない。

text by Kim Myung-Wook