お正月の一大イベントへの出場権をかけた箱根駅伝予選会が10月17日(土)に行なわれる。本戦の晴れ舞台に出場できる大学は20校。前回大会で10位までに入った大学にはシード権があるため、残り「10校」が東京・立川での20kmレースで決まることになる。

 予選会では毎年のように"波乱"が起きている。前回も上位通過が有力視されていた東京農業大が49秒差で落選。70回目の出場を目指した古豪を終盤に逆転したのは、前年の予選会19位の創価大で、走者ひとりあたり、わずか5秒差で初出場を勝ち取った。

 予選会は各校10名以上12名以下が20kmレースに出場し、各校上位10位までに入った選手の合計タイムで争われる。駅伝方式ではなく、一斉スタートとなるため、ペースメーカーのもとグループでレースを進めていく「集団走」など独特の戦略も存在する。

 出場校の実力を見比べると、トップ候補は帝京大と神奈川大だ。帝京大は前回の箱根駅伝でシード権まであとわずかの11位、選手層も厚い。神奈川大は前回の予選会をトップで通過。両校とも予選会での戦い方を熟知している。國學院大、拓殖大、上武大も予選会の走り方がうまく、通過が濃厚だ。また、戦力的には順天堂大と日本大も大失敗をしない限り、心配ないだろう。

 となると、残りは「3校」。中央大、日本体育大、創価大、東農大などがこの激戦の中心にいる。このうち、落選すれば確実にニュースとなるのが、中央大と日体大だ。最多14回の総合優勝を誇る中央大は、前回までに86回連続89回の出場という超名門。日体大も10回の総合優勝、初出場以来67回連続での出場を継続している。

 中央大は6月の全日本大学駅伝関東学連選考会で18位(シード6校を含めると関東地区で24番目)に沈んだが、徳永照が日本インカレ10000mで日本人トップ(4位)に輝き、直前の記録会でも3人が自己ベストをマークするなどチームの状態は上向きだ。前回、前々回も落選の危機を乗り越えてきた経験もある。

 問題は日体大だ。今季から豊川工業高校(愛知)を駅伝強豪校に育てた渡辺正昭監督が就任。夏には約1カ月半にも及ぶロング合宿を長野県で敢行するなど、前任者とは違うカラーを打ち出してきた。単純に戦力だけなら上位候補だが、チーム状態を考えると微妙な位置にいる。13年の箱根駅伝を制した優勝メンバーである山中秀仁と勝亦祐太が、エントリーに漏れたからだ。特に関東インカレ10000mで復活Vを遂げた山中は大学駅伝からは「早期引退」という形になり、その"穴"は大きい。予選会は他のレースと違い、「ミスをしてはいけない」という重圧を吹き飛ばさないといけない。エース離脱というマイナス要素は選手たちのメンタル面にも影響するだろうが、渡辺新監督はチームにどんな走りをさせるのか。

 前回の因縁がある創価大と東農大も難しい戦いになるだろう。連続出場がかかる創価大には、昨年と違い、大きなプレッシャーがのしかかる。一方、前回は過去最速タイムで落選した東農大は4年生中心のチーム。今回通過を逃すと、しばらく本戦に復帰できない危険性をはらんでいる。

 その他では、伝統校の法政大、専修大、国士館大に"復帰"のチャンスがある一方で、前回12位の東京国際大に初出場の期待がかかる。東京国際大は駅伝部を創部してまだ5年目。3年生以下のメンバーだった前回より選手層は厚くなった。ケニア人留学生のシテキ・スタンレイでタイムを稼ぐこともできる。

 また、第82回大会(06年)で初の総合優勝に輝いた亜細亜大にも注目したい。岡田正裕監督(現・拓大監督)の勇退後、後任の指揮官たちは"岡田イズム"を受け継いだものの、第86回大会を最後に箱根路から姿を消した。前回の予選会では20位まで転落。今季からセビリア世界選手権男子マラソンで銅メダルを獲得した佐藤信之監督が就任して、チームは変わろうとしている。

 佐藤監督は旭化成で世界と戦ってきたノウハウを取り入れながら選手たちを指導。設定ペースを抑えつつ、じっくりと距離を踏んできたという。また、20km、16km、10km、5km、1500m、200mなど学内のタイムトライアルを積極的に行ない、チーム内の競争意識を高めてきた。「予選通過ラインに迫れるかなという手応えはあります。10年前には優勝している大学ですし、早く箱根に復帰して、まずは強い亜細亜大を取り戻したい。同時に将来は日の丸をつけて走れる選手を育成したいと思っています」と佐藤監督。復活への第一歩をどう刻むのか。

 予選会の見方としては、チーム10番目の選手のタイムをチェックしてほしい。前回は62分台でフィニッシュした11校のうち、10校が通過(法政大だけが落選)。過去3年間の結果を見ると、63分をオーバーした大学はすべて落選している。気象条件にもよるが、10番目の選手を62分台でまとめることが、予選突破の「最低条件」といえるだろう。

 予選会のスタートは10月17日(土)の朝9時35分。地上波では日本テレビ(関東地区ほか)でライブ中継される。夢の舞台を目指す学生ランナーたちの熱き戦いを、ドキドキしながら観戦してほしい。

酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato