【日本サッカー見聞録】寂しい内容のイラン戦

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▽10月13日、日本はテヘランでイランと対戦し、前半アディショナルタイムにPKのこぼれ球から先制を許したものの、後半立ち上がりに本田が右サイドから上げたクロスが武藤の背中に当たってゴールに入り1-1で引き分けた。両国の対戦成績は日本の5勝5分け6敗とほぼ互角だが、敵地で初勝利を奪うことは今回もできなかった。

▽試合後のハリルホジッチ監督は、会見で次のように口火を切った。

「前半はまったく満足していない。まったくゲームをコントロールできず、相手がフィジカルで我々を支配した」

▽まったくその通りである。日本はシリア戦のスタメンから、センターバックに森重、左サイドバックに米倉、ボランチに柴崎、左FWに宇佐美、1トップに武藤と、5人の選手を入れ替えてきた。とはいえ米倉以外は交代出場などで“それなりに”代表経験のある選手ばかり。にもかかわらず、試合に“入れて”いないのだ。

▽30分には米倉のバックパスが浮き球となり、吉田が処理に手間取っているところをガフリに奪われ、あわや独走のピンチを招く。これは吉田がファウルで止めたものの、二人とも軽率なプレーだった。

▽パサーとして期待した柴崎はほとんどボールに触れない。それというのもDFラインからのタテへのロングパスが多いため、ボールは柴崎の上空を通過するシーンが多いからだ。同様に香川、宇佐美も足元でボールを受けられないため、得意とするドリブル突破を仕掛けることができず、ほとんど攻撃に絡めなかった。

▽その原因を、元東京Vなどで監督を歴任し、現在はスカパー!で解説を務める川勝良一氏は次のように分析していた。

「タテに速いサッカーは分かりますが、センターバックの二人はフィードが不正確のため、単なる蹴り合いになってしまった。ハリルホジッチ監督の戦術を実行するには、正確なフィードのできる選手が必要。ロングパスが蹴れて、それが難しい時はボランチにもつけられる。宇佐美や香川は足元でパスをもらってこそ生きる選手ですが、彼らの足元に正確なロングパスが何本入ったか」

▽そう疑問を呈しつつ、今の日本の現状からロングパスやスルーパスを出せて、なおかつ試合のリズムを変えられる選手に若手はいないとして、遠藤保、中村憲、中村俊のベテラン一人をベンチに入れることを勧めた。

「ハリルホジッチ監督はW杯を戦うメンバーの人選を進めているようですが、それよりもW杯予選を勝ち切れるメンバーで戦うべきでしょう。そのためにもベテランの力を借りる。このままではアジア最終予選は相当きついと思います」

▽日本の失点は、背後からアプローチした吉田の左足が相手の左足に引っかかり、腰砕けのような格好から右足で相手の右足を払ったような、“年寄り”のようなプレー。DF陣のリーダーとして不安を感じずにはいられない軽率なプレーだった。

▽何とか後半は相手もバテてきたため日本のペースに持ち込めたとはいえ、決定機はゴールシーン以外になく、せいぜい惜しかったのは清武、宇佐美とつなぐカウンターから武藤が抜け出した場面くらい。イランにもチャンスらしいチャンスはなかったのでドローは妥当な結果と言えなくもないが、試合内容はアジアのトップレベルとしては寂しいものだった。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。