秋華賞に挑む「良血3強」の勝算(2)
■ミッキークイーン編

 今春の3歳牝馬路線で「主役」と目されていたのは、牡馬相手にデビュー3連勝を飾ったルージュバック(父マンハッタンカフェ)だった。しかし、大きな期待を集めたGI桜花賞(9着。4月12日/阪神・芝1600m)、GIオークス(2着。5月24日/東京・芝2400m)と、ともに人気を裏切って敗戦。牝馬クラシックは、無冠に終わった。

 さらにこの秋、当初は凱旋門賞挑戦などもプランに挙がっていたが、復帰を予定していた札幌記念(8月23日/札幌・芝2000m)を熱発で回避。凱旋門賞どころか、3歳"牝馬三冠"最終戦となる秋華賞(10月18日/京都・芝2000m)の出走さえ叶わず、完全に「主役」の座から遠のいてしまった。

 そうなると、オークスにおいて、ルージュバックを真っ向勝負でねじ伏せたミッキークイーン(父ディープインパクト)こそ、今秋の3歳牝馬の「主役」最有力候補と言っていいだろう。

 そもそも同馬は、デビュー当時から評判だった血統馬。桜花賞こそ抽選漏れで出走できなかったものの、必勝態勢で臨んだ忘れな草賞(4月12日/阪神・芝2000m)を快勝すると、逆に桜花賞出走を逃した"不運"を味方につけてオークスの勝利につなげた。見事牝馬クラシックの一冠を手にして、当初からの高評価が間違いではなかったことも証明した。

 秋初戦となった、秋華賞トライアルのGIIローズS(9月20日/阪神・芝1800m)でも、スタートで出遅れる不利がありながら、メンバー中、最速の上がりタイム(33秒8)をマーク。勝ったタッチングスピーチ(父ディープインパクト)には屈したものの、休み明けとしては上々の走りを見せて、本番での飛躍を予感させた。

 多くの専門家も、ミッキークイーンの、その前哨戦の走りを高く評価。デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう語る。

「春は、馬体減りを気にしながらの調整とローテーション。それで結局、桜花賞は無念の除外となりましたが、それまでに無理使いしなかったことが、オークス制覇につながったと思います。その後、夏場も順調に過ごして、ローズSには馬体重プラス8kgで臨むことができました。レースでは、一度はかわしたタッチングスピーチに差し返されましたが、オークス馬の意地を見せたというか、地力の強さを十分に示した内容だったと言えるのではないでしょうか」

 とすれば、迎える秋華賞でも、ミッキークイーンはおそらく1番人気で出走することになるだろう。が、はたして全幅の信頼を置いていいものか。巷では、2つの不安が囁かれている。

 ひとつは、京都内回りの芝2000mという、ややトリッキーなコース形態からか、秋華賞では1番人気の馬が過去に何度となく戴冠を逃していること。この10年で言えば、昨年のヌーヴォレコルトをはじめ、一昨年のデニムアンドルビー、2011年のホエールキャプチャに、2009年のブエナビスタ、2008年のトールポピー、そして2007年のウオッカなど、そうそうたる面々が1番人気で苦杯をなめた。

 レース創設以来19年で、1番人気の成績は、5勝、2着3回、3着4回、着外7回。勝率は2割6分ほどで、連対率にしても50%に届かない。

 また、オークス馬の秋華賞における成績も、決して芳しくはない。これまでに17頭(3頭が不出走。2010年はオークス1着が同着のため2頭出走)が出走して、6勝、2着1回、3着2回、着外8回と、連対率は5割を割り込んでいる。

 こうしたデータを見ると、ミッキークイーンを絶対視するには、確かに不安がある。

 ふたつ目の懸念材料は、出遅れ癖があること。

 ミッキークイーンは、デビューから4戦連続で出遅れているように、スタートに難がある馬。3戦目に挑んだ重賞のクイーンC(2月14日/東京・芝1600m)でも、外枠の7枠14番ゲートから発走して出遅れ。クビ差2着に敗れた。敗因には大幅な馬体重減もあったとはいえ、スタートさえうまく切っていれば、難なく勝利を飾っていたはず。そうすれば、桜花賞も抽選に回ることなく、出走できていただろう。

 その出遅れ癖が、オークスではやや解消されたように見えたが、ローズSで再び露呈。スタートで後手を踏んで、最後方からの競馬を強いられた。阪神外回りコースで、最後の直線が長いため、大きな問題とされなかったが、本番の秋華賞は京都の内回りコース。最後の直線は短く、再度出遅れたりしたら、致命傷になりかねないと見られている。

 だが、前出の吉田氏は、そうした不安を一蹴した。一度叩かれたことによって、ミッキークイーンの「二冠は濃厚」と見ている。

「秋華賞に向けて、確かにミッキークイーンの陣営も、『ちゃんと(ゲートを)出れば勝っているからね。次走もスタートがポイント』と話しています。ただ、中3週で、デリケートな牝馬ですから、課題克服へ何か特別なことをすることはないでしょう。第一、鞍上の浜中俊騎手が、『前走(ローズS)は、(休み明けで)心身ともに緩く、それが出遅れにもつながったようでした。でも、1回使われてしっかりしてきた』と、秋華賞ではスタート難を解消できる手応えを感じていました。ミッキークイーンは、馬込みも問題にしないタイプですし、京都の軽い芝も合うはず。大きな期待にも、十分応えてくれるのではないでしょうか」

 振り返れば、過去の秋華賞でも、直線一気で勝利を手にする馬はたくさんいた。直線が短いわりには末脚がはまる舞台で、鋭い決め手を武器とするミッキークイーンにとっては好相性だ。

 秋華賞で相性が悪いとされるオークス馬も、過去10年に限って見れば、4勝、2着1回と連対率は5割。そのうち、前哨戦のローズSを叩いて、そこで掲示板(5着以内)を外していなければ、3勝、2着1回と、連対率は100%となる。そして、その4頭のうち、3頭が1番人気だった。

 2013年、国内最大級のセリ市『セレクトセール』で、1億円という高額で落札された良血ミッキークイーン。オークスに続いて秋華賞でも、その評価に見合うだけの走りを披露してくれるのではないだろうか。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu