新「ルパン三世」2話。絶賛の理由は、ルパンが悪いことをしないから?

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30年ぶりのTV新シリーズ『ルパン三世』。第2話「偽りのファンタジスタ」は、作品の舞台となっているイタリアの国民的スポーツ、サッカーをめぐる物語だ。


サンマリノのサッカークラブに所属するマウロ・ブロッツィは“サンマリノの至宝”と呼ばれるエース・ストライカー。しかし、ブロッツィには陰の部分があった。それがドーピングだ。

ブロッツィはドーピングの証拠をマフィアに握られ、「コパ・イタリア(イタリアのサッカークラブによるカップ戦)の決勝戦に出るな」と恐喝されてしまう。マフィアが秘密裏に買収した自分のチームを優勝させるためだ。

追い詰められたブロッツィは、ルパンに証拠を取り戻してほしいと仕事の依頼を行う。当初は相手にしなかったルパンだが、ふとしたことからブロッツィがドーピングに手を染めた理由を知り、条件つきで仕事を引き受ける。

ブロッツィがドーピングに手を染めた理由、それは持病によってほとんど見えなくなってしまった右目の視力低下を抑えるためだった。病の進行を遅らせるための薬に、ドーピング検査に引っかかる成分が入っていたのだ。

ルパンと次元はマフィアの邸宅に侵入し、首尾よくドーピングの証拠を盗み出すことに成功。ついでに追手のマフィアも壊滅させてしまう。盗み出した証拠をブロッツィに渡したルパン。しかし、片目がほとんど見えない状態のブロッツィは、練習でもゴールを決めることができなくなっていた。本当にそんな状態で試合をやるのか? と問いかけるルパンに、ブロッツィはこう返す。

「そこにゴールがある限り、俺は奪うまでさ」

ルパンがブロッツィに提示した条件とは――試合でハットトリックを決めることだった。それを見事に決めてみせるブロッツィ。ブロッツィのチームの勝利を見届けたルパンは、ニヤリ。抜け目なくトトカルチョで儲けていたという次第で一件落着。

今回の『ルパン』は人情話


今回はブロッツィの武骨ながらもまっすぐな気持ちを軸にした人情話のようなエピソードだ。「そこにゴールがある限り、俺は奪うまでさ」というブロッツィの言葉は、ルパンの盗みの動機とほとんど同じであり、二人の間にはかすかに友情も育まれている。

アクションシーンもほとんどなく、ルパンが盗み出すものも悪いマフィアから証拠の品を奪い取るぐらい。そのマフィアもあっという間に壊滅させられるほど弱く、ルパンの敵役というよりは脇役という表現がぴったり。「いつまで遊んでるつもりだ」と次元が繰り返しボヤいているが、ルパンにとってはヒマつぶしの一件だったようだ。

ポイントになるのは、マフィアに内偵していたイギリス諜報部MI:6のエージェント、ニクスの登場だろう。今回はルパンとの絡みはほとんどなかったが、今後はシリーズを通してルパンのライバルになると予想される。

細かい部分でいえば、ルパンたちがノートパソコンやインターネットを使っているのが新味。取引の単位も「ユーロ」を使っており、年齢的には若返ったルパンだが舞台は現代に設定されていることがわかる(ユーロがイタリアに導入されたのは2002年)

「安心して見れる」のはルパンが悪いことをしないから?


SNSなどで放送後の視聴者のリアクションを見ると「安定して面白い」「安心して見れる」という絶賛の声が相次いでいた。「安定」「安心」が意味するものの一つは、作画面のことだろう。絵が崩れたり、動きが急におかしくなったりしないから「安心して」見ることができる。

『ルパン三世』の作画はすでに2クール24話分が完成しているため、現在の高いクオリティの作画が崩れていくことは考えにくい。「安定して面白い」「安心して見れる」というファンの言葉は、裏返せば昨今のアニメファンがいかに“作画崩壊”におびえながらアニメを視聴しているかを表している。

「安定」「安心」のもう一つの意味は、“ルパンが悪いことをしない” ということにあるのではないだろうか? 今シリーズのルパンは、現金輸送車や宝石店を襲うこともないし、人を殺めることもない。1話ではロッセリーニ家の王冠を狙っていたが、それほど執着することもなく、あっさりと持ち主に返却している。

長きにわたってルパン三世役を務めた故・山田康雄さんは「ルパンの魅力は義賊ではないところ」と語っていたが、2話での振る舞いは義賊そのものだ。個人的にはルパンのギラギラした面、非情な面がもっと押し出されていてもいいと感じている。

シリーズ構成と脚本を務める高橋悠也はインタビューで、次のように答えている。
「ルパン以下、次元、五エ門、不二子も、ヒーローだけど悪いことをしますよね。でも、犯罪者だけで悪人ではないというか……、人を傷つけることが目的ではなく、己の美学を貫き通すための行動なんです」(『ルパン三世ぴあ』より)

1話、2話と、ルパンの美学の前に立ちふさがるような敵役、ライバル役がまだ登場していない。だから、ルパンが美学を貫き通すためにシャカリキになることもなかった。今後、鍵を握るのは、MI:6からやってきた男、ニクスだ。

今夜放送の第3話「生存率0.2%」では、最強のエージェント、ニクスがルパン一家に牙を剥く。ニクスが次元を襲撃し、囚われた次元は過酷な拷問に遭う……って、御年82歳の小林清志になんてことするんだ! と思うのだが、それは現実の話。はたしてルパンは次元を助け出すことができるのか? チャンネルは決まったぜ。
(大山くまお)