ユーロの予選をテレビで観ていると、ハイテンションなゲームがうらやましくなる。ここぞという場面で敵陣へ飛び出していくスピードと勢いは、あるいは守備に帰陣するスピードと迫力は、W杯アジア予選とは別次元だ。

 10月13日のイラン戦は、テレビで観戦した。8日のオマーン戦の取材を終えて、テヘランへ行かずに帰国した。現地で観戦しないのは、取材規制で入国できなかった11年11月の北朝鮮戦以来だった。

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、シリア戦からスタメンを5人入れ替えた。彼にしてみれば、ギリギリの変更だったのだろう。

 メンバーを極端に入れ替えてチームの機能性が損なわれると、個人のテストが成立しない。守ってばかりのゲーム展開では、アタッカー陣の適性を見極めることが難しくなってしまう。西川周作、吉田麻也、長谷部誠、香川真司、本田圭佑の主力5人を先発させたのは、アウェイのイラン戦という舞台でテストを有効にするためだったのだろう。大敗は避けたいとの思惑も、もちろん働いていたはずだが。

 米倉恒貴を左サイドバックで使ったことが、疑問を呼んでいる。

 僕の見立ては違う。8月の東アジアカップで、ハリルホジッチ監督は米倉を左サイドバックで起用した。ガンバ大阪で右サイドを定位置とする27歳は、不慣れなポジションで奮闘した。少なくとももう1試合はテストを受けられる資格を得た。その機会がイラン戦だったという理解だ。

 左サイドバックには長友佑都がいて、太田宏介もいる。だが、長友はインテル・ミラノで出場機会を得られていない。彼が今後もクラブでの立場を改善できず、太田まで招集できない緊急事態の対応策は、いまのうちに考えておいてもいい。

 シリア戦とイラン戦で右サイドバックを務めた酒井高徳を、左サイドで使うこともできる。ただ、こちらは内田篤人が離脱しており、今回は酒井宏樹もケガでメンバーから外れた。東アジアカップで右サイドバックとボランチでテストされた遠藤航も、ケガからの回復途上で今回は招集できていない。

 酒井高をできるだけ長く右サイドでプレーさせ、さらに丹羽大輝もテストしておく二段構えは、酒井に右サイドの感覚を呼び覚ましてもらうとともに、バックアッパーの充実へ向けたテストだと理解できる。所属クラブでセンターバックを務める丹羽も、8月の東アジアカップでは右サイドバックで起用された。彼もまた、米倉と同じように2度目のテストを受けたわけだ。

 センターバック的な資質を持った選手をサイドに配するのは、ブンデスリーガやプレミアリーグでも見られる選手起用のひとつだ。ゲームを終わらせための交代カードとしては有効で、遠藤や丹羽、あるいは今回は起用されなかった塩谷司も、ハリルホジッチ監督は右サイドバックとして想定しているようだ。

 指揮官に思い切りが欲しかったのは、南野拓実の投入だろう。後半43分からの起用は、遅きに失した感が強い。国際Aマッチの雰囲気を感じ取ることもできないまま、20歳のアタッカーは終了のホイッスルを聞いている。

 いずれにしても、イラン戦はテストマッチだ。

 相手の熱量は〈それなりのレベル〉である。ハリルホジッチ監督が経験の少ない選手を試したように、イランのケイロス監督もテスト的要素を含みながらゲームを進めた。そういう意味で1対1のスコアは妥当な着地点で、9月、10月とアザディ・スタジアムでゲームができたことを収穫とするべきだ。最終予選で対戦するかもしれないライバルのホームに、足を踏み入れておくのは悪くない。

 ところで、テレビで観た感想はどうだったのか。

 真剣勝負のユーロ予選と比較するのは気の毒だとしても、本質的な部分の違いを感じざるを得なかった。プレーの迫力が別次元なだけでなく、攻撃のベクトルが明らかに違う気がする。前へ向いていない場面が多いのだ。イラン対日本戦を観ていた僕は、テレビの前を一時的に離れることにためらいがなかった。