試合後に痛烈な発言でクラブやファンを批判した本田圭佑【写真:Getty Images】

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本田の真意は伝わっているのか?

 先月27日に行われたナポリ戦後、この試合で出番がなかった本田圭佑は日本のメディアの前でクラブやメディア、そしてファンを痛烈に批判した。クラブに改革を求めた本田だったが、果たしてその真意は彼らに伝わっているのだろうか?

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 ロシアW杯アジア2次予選シリア戦と親善試合イラン戦を終えた本田圭佑は14日、ミラネッロに戻って練習に合流した。クラブの発表によれば、全てのメニューをこなしはしなかったものの、戦術練習には参加させられていたという。

 気になるのは、4日のナポリ戦後の処遇だ。「ミランが処分を検討している」という報道が各地元メディアから出されており、シニシャ・ミハイロビッチ監督も「戻ってきたら本人から事情を聞く」と語っていた。14日夜(日本時間15日早朝)の時点でクラブは公式に発表をしていないものの、罰金かそれ以上かの処分がなされるかはいずれ明らかになるだろう。

 いち選手がメディアを煽って所属クラブを批判することは、イタリア並びに欧州のクラブではどんなに筋が通っていてもマナーに反する行為だとされている。ただ「逆算している」とオマーンで言ったようだからそこは覚悟の上だろう。元日本代表監督のザッケローニ氏は「本田のしたことには賛同できない。新聞を使って他者を批判してはいけない」と語っていたが「彼を知るものとして建設的に(批判発言を)したことは分かっている」と理解を示してはいた。

 ただ問題は、その真意がちゃんと伝わっているかどうかだ。現地で反応を見る限りにおいては、一石を投じられたクラブやメディア、そしてファンが本田の期待通りに批判を受け止めている印象はない。

 まずは、本田の発言を伝えたイタリアの国内メディア。「トップ下として結果を出していないのにチームを批判するのか」というバッシングがあるのではないかと思っていたが、発言が報じた6日は意外にも同調。むしろ本田の発言を囲み記事で紹介しつつ、「ミランよ、8600万ユーロ(の価値)はどこにあるのか」(ガゼッタ・デッロ・スポルト)と補強戦略や監督の采配を含めた批判を展開。本田が批判発言をしたことを1面の見出しにしていた新聞もあった。

本田の発言に批判的なミラニスタ。一方では擁護の一派も?

 ただ批判のレベルはそこまで。翌日以降は、「次の試合で監督が勝たなければ危ない、トリノ戦ではフォーメーションが変更される」などといういつもの調子に戻った。「(マンチェスター)シティかパリ・サンジェルマンくらいお金を使うか、そうじゃなければやはりストラクチャー(構造)の部分から見直していくか」と本田は語っていたが、クラブの構造改革への議論は見事にスルーされていた。

 選手間の距離感が悪い。ファンやメディアは結果だけしか気にしないのですぐブーイングをし、つなぐプレーができない。そんなミランの戦術的な“病理”について「クラブやメディアが構造的な評価基準を変えれば再建へつながる。ヒントは今日のナポリ」という表現で本田は語っていたのだが、そこを丁寧に伝えたメディアは筆者の知るところで一社だけだ。むしろ本田がメガクラブの補強に言及したところだけが一人歩きし、「彼こそがクラブの現実をわきまえていない」と批判するところもあった。

 次にファン。「クラブに雇われている立場であの発言はダメだ」「自分が活躍していないのに何様のつもりだ」「給料を奪って10番の品位をおとしめやがって。さっさと出て行け」という反応が、掲示板でも街のミラニスタに聞いたところでも多かった。

 中には「前から感じていたというならシーズン前に言えばよかった。そうしたらあのカタツムリは夏に放出できたのに」と語っていたファンもいた。当然彼らは、「内容など見ず勝てば拍手する」という本田の批判に耳を貸してはいない。

 ただファンフォーラムを幾つか回ってみると、「本田は英雄だ」とする一派も実はある。「ベルルスコーニやガッリアーニのスパイとなって動き、記者会見でもクラブにおべっかしか使わない連中よりはるかに誠意がある」「得することは何もないのにあえて言った。このことだけでオレは本田のユニを着てスタジアムに行ってもいい」「あいつは日本でメディアインパクトの一番強い選手らしいから、これでオレらの抱える問題は全世界にさらされた」と、暴露を褒めていた。

本田の意に反して“変革”を進めようとするミラン首脳陣

 もっともその彼らも「本田を中心に立て直せ」という議論に行き着くはずはなく、「これで彼は戦力外扱いとなり、胸を張ってこんなクソクラブを出て行くだろう」「我々の罪のために十字架の上で死せり。本田よさらば」などと、彼がクラブに処分を受けた末に放出されるという将来を思い描いていた。

 そして肝心のクラブのトップだが、ここまでは本田が望むような構造改革に臨む姿勢を見せてはいない。むしろ逆だ。シルビオ・ベルルスコーニ名誉会長は「フォーメーションも変えてもらう。変革は次の試合から、直ちにご覧いただけることだろう」と政治遊説先で発言をした。本田の発言を引用し反論していたわけではないものの、構造改革的な見直しなど全く考えていないことは明白である。

 結局のところ本田発言は、残念ながら本人の立場をただ悪くしたようにしか感じられない。それどころか、チームは次のトリノ戦からトップ下そのものを放棄するという報道も出ている。全方位に批判をぶっ放した後で、果たしてどう挽回していくのか。外からは見えないロッカールームの中で、本田がどう立ち回るかが今後の運命を決める。

text by 神尾光臣