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法人向けのクラウドベースのファイル共有・同期サービスとしてスタートした米Boxが、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)とコラボレーションを提供するエンタープライズベンダーに向けて領域を拡大している。

Boxが9月29日から3日間、米サンフランシスコで開催した「BoxWorks 2015」。CEOのAaron Levie氏は6000人以上の参加者を前に、「クラウドとモバイルが実現する新しい働き方を支援する」として、ワークスタイルの変革を呼びかけた。

○顧客企業は5万社を突破

創業10年目、節目の年にIPOを実現したBoxにとって、エンタープライズ顧客の獲得と新機能の拡充は重要なメッセージとなる。

Levie氏は初めに、Boxのユーザーが4000万人に達したことを報告。顧客企業はUberやAirbnbなどのスタートアップ企業から、トヨタ自動車やGE(General Electric)といった長年の大企業まで5万社を数え、Fortune 500企業の52%がBoxをコラボレーションやコンテンツ管理に利用しているという。

「Boxは最もよく使われているエンタープライズ・クラウド・プラットフォーム」とLevie氏。最新の顧客事例としては、Coca-Cola Companyが2万2000人の従業員向けにコラボレーション・プラットフォームとしてBoxを採用したことを発表したばかりだ。日本では楽天、早稲田大学などがBoxを導入している。

Boxが目指す先は「次世代のエンタープライズ・コンテンツ管理とコラボレーション・プラットフォーム」と、Levie氏は話す。

これを実現するものとして、BoxWorksでは情報ガバナンスと規制遵守、セキュリティに関する最新の取り組みが紹介された。

情報ガバナンス面ではヘルスケアのHIPPAやクレジットカードのPCIなどの業界の規制遵守をサポートしている。これに加えて新たに、法務向けに訴訟プロセスで重要な「Legal Hold」と呼ばれる機能や、デジタルウォーターマーキングをサポートした。

セキュリティについては、2月に「Enterprise Key Management(EKM)」を発表。これは、Amazon Web Services(AWS)のHardware Security Modules(HSMs)を利用して、企業が暗号鍵を自社で管理できるサービスで、企業がクラウドに対して抱くセキュリティへの懸念を解消する重要な要素となる。ほかにも、AWSの「AWS Key Management Service(KMS)」をサポートし、クラウドで自社の暗号鍵を管理できるようになった。

さらには、昨年ローンチしたセキュリティパートナーエコシステム「Box Trust」の進展にも触れた。このエコシステムにはMaaS360、Palo Alto Networks、Symantecなど約20社が参加しており、シングルサインオンや侵入検知などの技術を提供しているという。

○Apple、IBM、Microsoftと提携

Boxがエンタープライズ領域でビジネスを拡大するにあたって積極的に進めるのが「提携戦略」だ。Levie氏はApple、Microsoft、IBMの3社との協業を説明した。

Appleとは正式なプレス発表は行っていないものの、会期中にCEOを務めるTim Cook氏が対談を行うなど、関係の深さを公に示した。

「Appleはモビリティを通じてエコシステム・パートナーとエンタープライズを変革することにフォーカスしている。Boxは共にこの戦略を推し進める協業関係にある」(Levie氏)

Appleとの取り組みの1つが、コア製品でのiOSとMac体験の提供だ。会期中にはBox初のモバイルオンリーアプリ「Box Capture」をiOS向けに公開している。これは、端末のカメラ機能とBoxを連携させ、現場の担当者がiPhoneやiPadで撮影した写真や動画をBoxに保存し、関係するチーム内で共有できるというもの。

特に小売や建築、ヘルスケアといった現場とのやり取りが多い業界でメリットが多いとしており、デモでは小売のショップ担当者がディスプレイを写真にとって本社に見せるという使い方を見せていた。

このようなBoxのモバイルアプリ開発に加えて、「APIを公開することで、自社およびパートナーがAppleとエンタープライズ変革戦略を支援することを可能にするような新しいアプリを開発できるようにする」ともLevie氏は語っている。

また、Microsoftとの関係は1年来にわたるもので、2015年に入り「Office 365」との統合を発表した。統合により、Office 365で作成したドキュメントをシームレスにBoxで保存や同期したり、コラボレーションしたりすることが可能になった。Levie氏はこのような協業はSteve Ballmer氏がCEOを務めていた5年前は考えられなかったとし、「Satya(新CEOのSatya Nadella氏)の下でMicrosoftはまったく新しい会社になった」と賞賛した。

そして、協業のレベルが深く多岐にわたるのがIBMだ。IBMとの協業が始まったのは今年に入ってからだが、会期中に協業第2弾として、IBMの「Content Navigator」「StoredIQ」「Case Manager」など4製品との統合を発表した。

例えば、エンタープライズコンテンツ管理のUIおよびプラットフォームであるContent Navigatorとの統合により、オンプレミスだけでなくBox上に保存されているドキュメントの検索、アクセス、共有が可能になるという。「次世代のECMとのコラボレーションを提供する」とLevie氏はIBMとの提携の狙いを説明する。エンタープライズ分野の王者で顧客を多数持つIBMとの提携は、Boxにとって戦略的に重要となりそうだ。

これらに加えて、BoxWorksでは米Adobe Systems、米Autodesk、米DocuSignなどとも統合を進めていくことを明らかにした。

Levie氏はForrester Researchにより次世代ECMのリーダーとして選ばれたこと、Gartnerからはエンタープライズ向けファイル同期・共有市場のリーダーと位置づけられたことなどを挙げ、自社の戦略が評価された結果と胸を張る。「われわれのミッションは、人と組織の双方で仕事をする方法を変革すること」と述べ、「まだ始まったばかりだ」とした。

BoxWorksでは会期中、上記に加えてBoxが技術スタックを解放し、パートナーや顧客向けのサービスやアプリにBoxを組み込むことができる「Box Platform」も発表した。50GBのストレージが利用できて25ユーザーまで無料のDeveloper版、月額500ドルで100ユーザーまで利用できるEnterprise版(ストレージの容量は250GB)の2種類をそろえる。

(末岡洋子)