安倍晋三首相は9月11日、「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、携帯電話各社に値下げを求めた。だが、携帯料金が高い原因が電話会社だけではなく、電波をタダ同然で占有しているテレビ局にあることをまず指摘すべきだ。

 国民の公共財である電波は国(総務省)が各事業者に割り当て、テレビや携帯各社はその対価として電波利用料を毎年払っている。が、その額には大きな開きがある。

 最新の電波利用料(2013年度)の歳入額は約806億円。そのうち、NTTドコモやau(KDDI)、ソフトバンクモバイル、ウィルコムなどの携帯・PHS等の通信事業者8社が700億円超と、全体の87%を負担している。

 負担割合の不公平感は一目瞭然だ。さらに解せないのは、徴収された電波利用料がほとんどテレビ局のために使われている点である。

 例えば2013年度の歳出約679億円のうち、最大の支出先は「地上デジタル放送への円滑な移行のための環境整備・支援」事業への約330億円である。

 内訳は、地デジコールセンターの運営に7.6億円、受信相談・対策事業に210億円。他にもテレビのデジタル中継局(129局)の整備に8.5億円などが投じられている。

 要するに、テレビが視聴できなくなる「地デジ難民」を生み出すなど、大きな混乱をもたらした地デジ化(2011年7月)以降の“後始末”に使われたのだ。その原資の大半が携帯会社であり、料金の高止まりの原因になっている。なぜ、我々携帯ユーザーがテレビの後始末をしなければいけないのか。

 総務省に問うと、「地デジ対策費などは周波数の逼迫の解消に繋がるものであり(携帯ユーザーも含めた)全ての電波利用者に恩恵がある」(電波利用料企画室)と回答した。

 確かに恩恵はあるのかもしれないが、テレビ局からもっと電波利用料を徴収すれば、携帯会社、つまりは我々の負担が減るのは明らかだ。電波行政に詳しい鬼木甫・大阪大学名誉教授(経済学)が指摘する。

「もうひとつ、携帯電話の料金が安くならない理由として、日本には主な携帯会社が3社しかない点が挙げられます。業界が寡占化し、暗黙の協調もあるので値下げなどの競争が起こらない。

 テレビ局が使っていないのに占有している放送電波を全て電波オークションにかければ、新規参入が可能になり、長期的には携帯料金の値下げも見込める。オークションによる国庫収入は最大で約2兆円と試算されていますが、先進国で電波オークションを実施していないのは日本だけです」

 民主党政権時、電波の周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」導入に向けた電波法改正案が国会に提出されたが、安倍政権に交代した途端、なぜか撤回された。

 公共の電波を独占しながら利用料はタダ同然。おまけに電波にタダ乗りして深夜の通販番組で関連会社が販売する商品を宣伝し放題。さらには自社中継局の整備費用の一部まで携帯ユーザーに付け回す──。

※週刊ポスト2015年10月16・23日号