2015年9月15日に発表された住信SBIネット銀行(以下、SBI銀行)の「スマートプログラム」は、利用状況によってATM利用手数料や振込手数料の無料回数が決まる新しいサービスである。2016年2月から適用される。セブン銀行やイオン銀行のATMであれば何回使っても手数料無料だったが、スマートプログラムによって無料回数が制限されるようになる。サービス改悪だという人もいるが、実際はどうなのだろうか。

■スマートプログラムの概要を確認

 SBI銀行のホームページのプレスリリースに概要が紹介されている。利用状況に応じてランク1〜ランク4の4段階にランク分けされるのがポイントで、ランクごとにATM利用手数料と振込手数料の無料回数が決められる。判定条件とランクごとの手数料無料回数を以下に整理した。

ランク判定条件。
ランク判定条件。

 SBI銀行のホームページより引用。ランク判定の条件が複雑でわかりにくいので説明しよう。大きく分けて(1)月末預金残高と(2)サービスの利用状況の2つで判定できる。

(1)預金残高で判定すると100万円以上〜300万円未満ならランク2、300万円以上ならランク3となる。預金残高だけではランク4にはなれない。

(2)サービスの利用状況の場合は、月末預金残高が1000円以上あるのが前提で、表の中の外貨預金やカードローンなどのサービスを2つ利用していたらランク2、3つならランク3となる。住宅ローンの利用があれば他サービスの利用がなくてもランク3、ランク4になるには、外貨預金と仕組預金の残高が500万以上か、住宅ローン利用でかつ外貨預金と仕組預金残高が300万以上の条件が必要なので庶民には手が届きにくい。また、30歳未満だと無条件でランク2となれるのが面白い。

ATM引出手数料の無料回数比較。
ATM引出手数料の無料回数比較。

 引出手数料は、イオン銀行、セブン銀行、ビューアルッテでの「いつでも無料」が無くなり、回数制限ができる。利用回数は全てのATMの利用回数で合算される。ランク2が現行のサービス相当だ。入金手数料は今まで通り、いつでも無料となる(ビューアルッテでの入金の取扱はない)。

振込手数料の無料回数比較。
振込手数料の無料回数比較。

 振込手数料は、ランク3かランク4であれば現行よりも無料回数が増える。ランク1でも1回無料で振り込める。ATM手数料は、いつでも無料がなくなるのでサービス改悪、振込手数料はランク3以上であれば現行より回数が増えるのでサービス改良と言えそうだ。

■ランク2を維持するのはそんなに難しくない

 ATM手数料がいつでも無料ではなくなってしまうが、最低限「ランク2」を維持できれば、現行と同じように振込手数料が月3回まで無料になる。ランク2を維持するには、月末預金残高を100万円以上にするか、サービスを2つ利用しなければならない。対象となるサービスと利用条件を満たす条件を以下の表に整理したが、難易度易の条件を2つさえ満たせばよい。

ランク判定に使われるサービス一覧。
ランク判定に使われるサービス一覧。

 判定OKとなるための難易度ごとにまとめた。給与や年金は振込手続きをしておけばよく、SBIハイブリッド預金は、SBI証券の口座を開設してハイブリッド預金に切り替えればよい。外貨預金は預金下限の記載がないので、理論上1ドルでも残高があれば判定OKとなる。したがって以上3つはコストがほとんどかからないので、難易度易とした。

 カードローンや不動産担保ローンは申し込み手続きしてかつ、実際に借入なければならない。少額でも利息が発生する。また、仕組預金はリスクの大きい預金なので場合によっては元本割れする。したがって、コストやリスクが大きくなるので難易度難とした。

 上にあげた表の条件のうち難易度易を3つとも満たして1000円以上預金しておけば、「ランク3」になる。ランク3であれば振込回数が月7回まで無料になるので、銀行振込による決済が多い人は得するはずだ。条件を満たすための敷居は決して高くない。ランク3を維持するのはそこまで難しくないのだ。

■なぜ30歳未満が優遇されるのか

 ここで少し話の視点を変えてみよう。預金残高が1000円以上ある30歳未満はなぜ無条件でランク2になれるのだろうか。イメージだけで考えると、ネット銀行=若い人が利用し、高齢者は店頭窓口のある都市銀行や地方銀行などを利用しているはず。高齢者向けの優遇のほうがよいのではないだろうか。ここで、以下の図を見てほしい。これは全国銀行協会が公開しているレポートだ。年代別の銀行利用状況がわかる。男性、女性とも18〜29歳の年代の人が「インターネット専業銀行」の利用率が低いことがわかる。

預貯金口座を持つ金融機関。
預貯金口座を持つ金融機関。全国銀行協会のホームページより引用。「よりよい銀行づくりのためのアンケート結果」。2012年末公表の少し古い資料となるが、2015年と比べて数値に大きなブレはないはずだ。

 また、SBI銀行が開示している年代別の顧客属性資料を見てみると20代は30代の半分の割合しか口座を持っていないことがわかる。

SBI銀行の口座保有者の年齢層分布。
SBI銀行の口座保有者の年齢層分布。SBI銀行の財務情報より引用。データは2015年3月決算の時のもの。

 したがって、そもそもネット銀行の利用者数が少ない30歳未満を優遇しようと考えたための施策だといえる。一方、スマートプログラムの優遇だけで30歳未満の顧客割合を増やせるのかは疑問である。携帯キャリアのような若者応援プログラムが必要ではないだろうか。カードローンの金利を優遇したり、ATMの無料回数を上乗せするなどの施策などをやって欲しい。

■関連情報
https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/mg_notice_150915_info

文/久我吉史