​可視化されづらい日本のLGBT選手。子どもがLGBTだったら、あなたはどうしますか? 谷村勇輔

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 ようやく、有名選手を中心に少しずつのカミングアウトが進んでいる一方で、日本においてその数は明らかに少ないと考えます。そもそも問題の存在自体がまだ不確か、定義されていない、従って可視化されるはずもないというのが現状ではないでしょうか。

​ 本文にもありますが、日本におけるLGBT当事者の割合はおよそ13人に1人と推定されます。代表チーム23名なら、1人〜2人は存在してもおかしくありません。現に、サッカーW杯女王であるアメリカ女子サッカー代表にはアビー・ワンバック選手、ミーガン・ラピノー選手がカミングアウトしています。しかし、世界的に見ると男子スポーツ界ではまだまだ差別的な風潮が残り、また日本のスポーツ界ではカミングアウトそのものが一般的ではありません。
 
 しかしながら、割合を考えるに、日本には確実に「言いたくても言えないスポーツ選手」がいると考えます。今回は、自らもLGBT当事者である谷村勇輔氏に執筆を依頼しました。
 
 
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アスリートナレッジをご覧の皆様、はじめまして。谷村勇輔と申します。最初に自己紹介をさせていただきます。1987年7月に横浜市で生まれ、以後、2015年まで横浜市で生活してきました。今は、東京都渋谷区に住んでいます。
 
ここで、最初にお断りをさせていただきますが、私はアスリートではありませんし、スポーツとは全く違う分野で働いています。フットサルやスケートボートは趣味としてやっていますが、全くもって下手くそです。皆様から教わりたいぐらいであって、根っからの文系です。昼間はITエンジニアの派遣社員として企業に勤務しながら、小説の執筆も行なっています。ですが、今回ここにこうして記事を書かせていただいたのには、理由があります。
 
突然ですが「LGBT」という言葉を、聞いたことはありますか? ここ最近、テレビや新聞、雑誌でよく耳にすることが増えたと思う方もいるかもしれません。LはレズビアンのL、GはゲイのG、BはバイセクシャルのB、TはトランスジェンダーのTの頭文字です。要するに、性的少数者=セクシャルマイノリティを指す単語です。実は、私はゲイです。いきなりすぎて申し訳ありません。
 
「吐き気がする、消えろ」と思った方、ちょっと待ってください。今年、電通ダイバーシティ・ラボが約7万人に行った調査によれば、LGBTに該当する比率は7.6%と出ました。今年9月に総務省統計局が出した、日本の人口速報値は1億2,685万人ですから、この人数とその調査結果をそのまま当てはめると、13人に1人はLGBT当事者であることになります。ただ、この人口には0歳児なども含まれていますが、おおよそこれで考えるとするならば、皆様も現実味が出ると思います。
 
ここから見えてくることは、「(LGBTは)特別でも異常でもない、普通なのだ」ということです。私は、ゲイであると自覚した16歳当時、友人らにカミングアウトした結果、何人も目の前から消えて行きました。これはいけないし間違っている、そう思って今日に至ります。
 
話が少々反れましたが、「13人に1人」という数字を聞いて、改めて皆様はどう思われましたか?そうです、例えば、今この記事を読んでいる選手や皆様の隣にも、もう自然に居ておかしくないのです。であれば、あなたのいるチームにも、応援している選手がそうであってもおかしくない、ということが言えます。「カミングアウトすればいいのに」と、思った方もいらっしゃるかとは思いますが、実際はそう簡単ではありません。私が今回、記事を書かせていただいたのはここなのです。
 
自身がLGBT当事者であるとカミングアウトしている選手は、諸外国に行けば少なからずいらっしゃいます。アメリカの女子陸上選手や、オーストラリアの男子飛び込み選手が、その例です。ただ、この日本においてはまだ、そういう方が現れていません。それはなぜか? 私もカミングアウトしていく中で思ったことですが、おおよそ次の3つが原因だと考えています。
 
(1)「集団意識」
(2)「それぞれの個を認めようとしない」
(3)「そういう教育を受けてきた」
 
では、最初の(1)「集団意識」と(2)「それぞれの個を認めようとしない」から考えていきます。
 
「村八分」という言葉を耳にしたことは、みなさんどなたでもあると思いますが、実はこれなのです。「こいつは俺らと違うからダメだ」とか、そういう考えを持ってしまいがちです。極端な考えなら「生き物ではない」と考えてしまう人もいます(現に、私が絶交を宣告された際にそう言われてしまいました)。私は、スポーツの世界に身を置いてはいませんので、深いところまでは知りません。ただ、チーム競技ならこう考えてしまう人も出てきてしまうかもしれません。実際の選手の方、いかがでしょうか?
 
私たちLGBT当事者は、「アブノーマル」と言われてしまうことが今でも数多くあります。私も、親から何度そう言われたか、数え切れないぐらいです。
 
次に、(3)「そういう教育を受けてきた」という部分です。ここは、日本の保健体育教育の歴史が多少入り組んでくるのですが、実は、非常に残念なことに同性愛は異常、と教育を受けてしまった年齢層の方がいます。もうひとつ、つい一昔前までの広辞苑にも、その旨の記述が存在したのです。この部分が、非常に密接にかかわってきます。
 
例えば、ある一つの種目に幼少期からずっと取り組んできた選手の中には、比較的高齢な指導者から指導を受けてきている人も少なくはありません。その指導者がもし、先に挙げたような教育を受けてきたなら、もし何らかの形で指導を受けている方が相談を受けたり周囲との雑談でそれを話題にしたとしたら、指導員の中には「気色悪い」「そんな奴と関わるな。異常者だから」と、言ってしまう人も出てきてしまうかもしれません。いえ、もう既にそういうケースがあるかもしれません。
 
このケースの裏付けとして、私は高校時代にこんな経験をしています。高校1年生の夏、カミングアウトをして付き合いを変えることのなかった友人らと弁当を広げようとした時でした。その友人は「そう言えば、さっき保健の授業で先生がHIVやAIDSを広げたのはゲイの連中だから、気色悪いし汚らしいって言ってたよ?」と、聞きました。
 
私は一瞬で沸騰してしまい、弁当もろくに食べずに職員室で猛烈な抗議を行いました。結果、その教員は翌年度には通っていた高校を去りました。教育者として断じて許される言動でもありませんし、そもそも誤った見識です。問題の教員は高校を去りましたが、今でも胸に残っている事件です。
 
ですから、教育や指導・育成に関わっていく方から、考え方や方向性を少しずつ変えていく必要性もあると、私は感じています。
 
最初に挙げた項目には書きませんでしたが、LGBT当事者の選手の中には、「サポーターやチームの視線が怖い」と、考えている人もいるかもしれません。
ここも、大きな理由でもあると思います。
  
日本は、このLGBTへの理解促進に対して、「臭いものに蓋をする」ではありませんが、さきにも述べた「村八分」にも近い状態で遠ざけてきました。色んな部分では先進国と言われるのに、LGBTについては後進国と言っても、過言ではありません。こうした状況になるのを恐れている、例えば、サポーターが離れていくとかチームをクビになる、果てはその世界から追い出されて「無かった存在」にされてしまうのを恐れているのでは? 私は、そう考えています。
 
私は、ゲイとして12年間生活してきて、カミングアウトは必ずしも必要ではないと考えています。ただ、それでもする理由は何か?それは、その友人を大切に思っている(恋愛感情ではない)し、今後もその関係を続けていきたいから、カミングアウトをしてきました。12年前、離れていった友人も今ではほぼ全員、SNSを通してではありますが戻ってきてくれています。本当にうれしい。
 
もしも、この記事を読んでいただけた皆さんの中でカミングアウトを受けたなら、まずは本人の話を聞いてください。ああこう考え、言うのはそれからです。でも、本人はきっと、大きな決意を持ってカミングアウトをしているかもしれません。そこだけは、理解してください。
 
以上、拙い文章ではありましたが、この記事がお役立ていただければ、私は幸いです。
 
<了>

Julie Missbutterflies