前線3枚の左で先発した宇佐美だが、期待外れの出来に。守備面での貢献度も低く、“計算できる選手”ではない。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 岡崎に代わって先発した武藤は、それなりに評価を上げたと見ていいだろう。後半に関して言えば、本田のクロスに合わせた同点ゴールだけでなく、カウンター時には真っ先に裏のスペースを狙ってボールを引き出していた。58分にGKとの1対1を迎えたシーンが象徴するように、純粋なスピードと相手DFの背後を取るセンスは非凡で、カウンター時の迫力はすでに岡崎以上だ。
 
 もっとも、総合力という点では物足りなさも残る。アグレッシブなプレスを受けて劣勢に立った前半は、どこでボールをもらいたいのか迷いが見られ、曖昧な動きに終始していたからだ。スペースがない時の動きは課題で、ポストワークや遅攻時の飛び出しは、今後磨かなければならない部分だろう。
 
 複数の選手が試されたウイングは、宇佐美が株を下げたと言わざるを得ない。サイドでタメを作れずに、中央に入ってはボールを失うなど、明らかにブレーキになっていた。激しいプレッシャーを受けた時こそ、持ち前の個人技で攻撃を牽引すべきだったが、完全に期待外れ。前半の終盤には自らシュートに持ち込めそうな場面で横パスを選択するなど積極性も欠けていた。
 
 そもそも守備面での貢献度が低い宇佐美に “計算できる選手”というイメージはない。攻撃面でも結果を残せないのであれば、先発起用はリターンの少ないギャンブルになってしまう。少なくともイラン戦でのパフォーマンスから判断すれば、レギュラー獲りは遠のいた印象で、これまでの多くの試合と同じようにスーパーサブとしての起用が続くかもしれない。
 
 初招集の南野は、判断材料が少なく、なんとも言えないところだ。右ウイングとして88分から出場したものの、あまりにプレータイムが短く「ボールに触っていない」(南野)。プラス要素はA代表の雰囲気を肌で感じたことくらいで、プレー面の確認については次回以降に持ち越しだ。
 このエリアで最初に触れなければならないのは、香川の不出来だろう。トップ下で出場した背番号10は、シリア戦の前半以上に出来が悪く、後列からボールを引き出せないどころか、バイタルエリアで相手のマークを外すことすらできなかった。シリア戦では距離感が良くなった後半に持ち直したものの、イラク戦ではそうした修正もなく沈黙。ミスを繰り返してチャンスの芽を潰す場面しか取材ノートに記されていない。
 
 ハイプレッシャーやハイスピードのなかで力を発揮するのが、本来の香川の持ち味のはずだ。なぜそれが、代表チームではコンスタントに披露できないのか。結局は、周囲の力を借りなければ輝けない選手だと、指揮官に判断されても不思議ではない。
 
 途中出場の清武がまずまずのプレーを見せていただけに、なおさら香川の不振は際立つ。「芝があまり良くなかったから、ドリブルよりワンタッチをどんどん使おうと思っていた」と簡単にボールを叩いてカウンターにつなげた清武は、セットプレーでも何本か精度の高いクロスを供給しており、飛び道具の有効性も印象付けている。後半の出場で相手のプレッシャーが緩かった点は差し引くべきだが、香川以上に攻撃に貢献したのは動かしがたい事実だ。
 
 先のシリア戦の終盤には本田もトップ下でプレーする場面があり、ハリルホジッチ監督はバリエーションを増やそうとしているようにも映る。いずれにせよ、香川のトップ下が安泰ではないのは確かで、より一層の奮起が求められるところだ。
 
 5試合ぶりに先発した柴崎は、東アジアカップで務めたトップ下ではなく、ボランチで長谷部と組んだ。これは評価が分かれるところかもしれないが、ワンタッチの縦パスで変化をつけようとした点を、期待値も含めて評価している。