photo by Kenny Louie(CC BY 2.0)
 いま、中国のモバイル決済市場が拡大している。その起爆剤となったのが2014年に登場した中国の「電子版お年玉(紅包=ホンバオ)」ともいえるサービス。現在、アリババとテンセントがユーザー数確保にシノギを削っている。

 この紅包、もともと中国のFACEBOOKともいえる「QQ」や、中国のLINEともいえる「微信」を擁するインターネット大手「騰訊(テンセント)」が始めたサービスで、大ヒットし、2014年の大晦日では10.1億回紅包のやり取りが行われたのがニュースになったが、その後はさらに伸び、8月の七夕(中国では8月)には14億回、さらに9月の中秋節には22億回ものやり取りが行われたという。

 テンセントの成功に続いてアリババも本腰を入れ、それぞれ大規模な「バラ撒き」キャンペーンを行いユーザー獲得に勤しんだのだが、そもそも微信の紅包がこれほど伸びたのには秘密がある。それは、「ソーシャル」という側面を大いに活かした仕組みである。

◆仲間内でスクラッチくじ感覚でお年玉をやり取り

 まずアカウントと銀行口座を連携させる。そして、200元(日本円で約3万8000円)を上限に1つの紅包に入金することができる。その後がキモとなる。2つの方法で「お年玉」をやり取りできるのだ。

 一つは、自分のアドレス帳にある特定の個人にメッセージを添えて渡せる、通常の「電子送金」に近いもの。そしてもう一つが、複数人がいるグループで獲得人数を決めて紅包を投稿できる「争奪戦」のような遊びで、これがいま中国のユーザー間でブームになっているのだ。

 中学時代の同級生らと微信でグループを作っている李さん(40歳)はこう語る。

「入れる額自体は本当に少ない金額です。だいたい5人くらいが獲得できるようにしてアップされた瞬間に皆がそれを争奪するんです。獲得できる人数を変えられるほか、金額の配分方法をランダムにして、くじ引き的な楽しさもあります。仲間内でローカルルールが決まっていて、一般的には一番多く獲得した人が次の紅包を投稿すること、なんて決まりがあります。まあ仲間内の暗黙の了解なんですが、ずっと一番多く獲得しているのに自分は紅包を出さないなんて人は呆れられちゃいますね(笑)」

 先述したように、春節や七夕、中秋節のように節目となるときにやり取りが多くなるのが一般的だが、この「争奪戦」は一般のユーザーは日常的に仲間内の遊びのように楽しんでいるようだ。

◆企業サイドはモバイル決済のユーザーを確保

 アリババの紅包は平均金額50元以上で最高額19万元(約360万円)とやり取りされる金額こそ大きいが、微信の紅包はこの手軽さとゲーム性が大いに受けてユーザー数やアカウントと銀行口座を紐付けるユーザーが急増しているのである。

 もちろん、ユーザー数の獲得だけではない。テンセントやアリババの狙いは、モバイル決済市場におけるシェアを確保するために各社とも高い金利などを謳ってユーザーの囲い込みに必死な状況だ。そんな中、微信はユーザーの「コミュニケーション」と「遊び感覚」を武器に電子マネー口座を激増させたのである。

<取材・文/HBO取材班 photo by Kenny Louieon flickr(CC BY 2.0)>