前半はほとんど効果的な縦パスが香川ら前線の選手に入らなかった。前からプレスに来た相手にどう戦うのかは大きな課題だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 試合開始1時間前になっても、観客がまばらにしか入っていないアザディ・スタジアムは、完全アウェーという雰囲気からはほど遠かった。10万人収容の広大なスタンドは空席がほとんどで、メインスタンドとバックスタンドの一角がようやく埋まる程度。ひと塊のファンたちの声援は迫力があったが、例えば埼玉スタジアムに来たシンガポールやカンボジアのほうが、よほどアウェーの威圧感を感じていただろう。
 
 それでも、日本の選手たちは、立ち上がりから前がかりにプレッシャーをかけてきたイランの勢いに呑みこまれた。最終ラインからのビルドアップは、ほぼ機能せず。トップ下の香川やCFの武藤がボールを受けるシーンは極端に限られ、右ウイングの本田もDFに激しく身体を寄せられてボールロストを繰り返す。
 
 左ウイングの宇佐美に至っては、いるのかいないのか分からないほど存在感が希薄で、迫力ある攻撃を仕掛けられなかった。まるで、5日前のシリア戦の前半をなぞるような出来に、失望感しか抱けなかった。
 
 もちろん、「50パーセントを変える」と宣言したハリルホジッチ監督が、左SBに米倉、ボランチに柴崎、CFに武藤とバックアップの選手をスタメン起用したため、コンビネーション面で「リスク」(同監督)があったのは確かだが、前線では本田や香川、ボランチより下では長谷部と吉田と、軸となる選手を残してもいたのだ。
 
 残念ながら「フィジカルの強い相手に対して、どうやって攻撃を組み立てていくのかはすごく課題が残った」と香川が振り返ったように、現在の日本代表の実力では、アジアレベルでさえ苦戦を強いられると認めざるを得ないだろう。
 最大の問題点は、やはりビルドアップの精度。相手の守備の狙いを外すような攻撃のバリエーションを持てなかったことだ。前半の日本は短調なロングボールを放り込むしか選択肢がなく、そのパスも前線の動き出しが噛み合わなかったためにまったくチャンスを作れなかった。ベンチで戦況を見守っていた岡崎も、そうしたアイデア不足を感じていたひとりだ。
 
「一番難しいのは前半だと思う。どんな試合でも前半は相手がモチベーションも高いだろうし、引いてブロックを作って守ってくる相手もいるなかで、自分たちのバリエーションがあんまりないのが一番の課題かなと。そういう部分では、もうちょっと多彩な攻撃が必要になってくると思うし、ハメられている時に抜け出す手段が必要なのかなと感じました」
 
 局面で激しくプレッシャーをかけられてボールホルダーが体勢を崩されれば、それだけ縦パスの精度は落ちる。また、繰り返し裏のスペースを狙うFWの動きに、相手DFが慣れてくるという側面もあるだろう。いずれにせよ、プレッシャーを受けた時の日本の攻撃は一本調子。言い換えれば、プレスから逃げるために縦パスを多用しているだけで、チーム全体としての狙いがハッキリ定まっていない。
 
 これは、シリア戦後に本田が繰り返した「距離感」とも密接に絡んでくる問題だ。イラン戦でも球足の長い縦パスを入れた際の周囲のフォローは遅く、セカンドボールを相手に拾われて攻撃の流れを切る場面は少なくなかった。
 
 ロングボールにも、定石がある。例えば、多少アバウトなボールでも、相手SBの裏のスペースに放り込んで、CFとウイングが連動してプレッシャーをかければ、相手はタッチラインに逃げざるを得なくなる。CBの裏に蹴るボールも同じで、CFがプレス役を務め、トップ下がこぼれ球を回収できるポジションを取れば、少なくともイラン戦のように簡単に縦パスを処理されるような状態にはならない。