今からでも遅くない!マイナンバー制度について知る(デメリット編)

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※ 前回の記事
今からでも遅くない!マイナンバー制度について知る(メリット編)
http://nge.jp/2015/10/08/post-119274

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前回、マイナンバー制度のメリットについて紹介したので、今回はデメリットについて紹介したい。

マイナンバーは段階的に適用範囲を広げていく制度なので、まだ予想の範囲でのデメリットとなるが、あり得ない話しではない、ということで確認しておきたい。

個人情報流出のリスクが高まる

マイナンバー制度の目的は、個人情報の一元管理だ。行政にとっては個人情報を効率的に確認できることになるが、このことは同時に、効率良く個人情報を盗み出せる可能性が高くなることだと危惧されている。

このリスクを避けるために、マイナンバー制度では、個人情報を従来通り分散管理するとしているが、マイナンバーで紐付けされることのリスクは高いままだろう。

例えば、外部からの不正アクセスが防げても、内部の管理者に悪意が生じれば、簡単に大量の質が高い個人情報を流出させることができるのではないかという不安だ。

2014年に起きたベネッセの個人情報流出では、2,070万件の顧客情報が流出したが、このときは顧客データを管理するグループ企業の派遣社員が逮捕されている。

また、ウィルスによる流出もあり得る。2015年の年金番号流出事件は125万件の個人情報として、基礎年金番号と紐付けされた氏名・住所・生年月日が流出している。

この流出の原因には、日本年金機構の職員が受信したメールに記載されていたURLを、職員がクリックしてダウンロードしたファイルから、ウイルスに感染した可能性が指摘されている。

なりすまし犯罪の増加

マイナンバーは、開始当初は税金関係や社会保障手続きといった限定的な使われ方がされるが、将来的には口座番号などへの紐付けをする案が出ている。

既に同様の制度を導入している米国や韓国では、なりすまし犯罪が増発しているのだ。これらを日本だけが防げると考えるには無理がある。

政府は、マイナンバーからの個人情報漏洩や、なりすまし犯罪などを防ぐために、行政機関や民間企業に対する調査権や、勧告・命令ができる第三者機関として『特定個人情報保護委員会』を設置したが、対策が後手に回る可能性はあるだろう。

莫大な導入費

当然だが、マイナンバー制度の導入は血税によって賄われる。

システム構築にかかる費用は推定で2,700億円程度が見込まれており、制度を維持するための費用には、毎年300億円程度が見込まれているという。

これに、自治体側システムの構築費やマイポータル、モバイル端末からサービスを受ける仕組みなどの拡張機能を含めると、1兆円を超えるとも言われている。

もちろん、これらの費用は(システム開発を受注した民間企業の)誰かの収入にもなるわけだから、巡り巡って経済効果が出る可能性はあるので、一概に無駄な出費とは言えないが……。

資産を把握されるようになる

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さて、ここからは正直に暮らしている人たちには一概にデメリットであるとは言えない内容になる。むしろ社会正義や公平性の実現に必要だと評価する人も多いだろう。

マイナンバー制度は2018年からは、任意だが預金口座との紐付けが始まる。しかしこれは、2021年の義務化への足がかりになるかもしれない。

義務化が実現すれば、政府は個人の金融資産を正確に把握できるようになる。公平な社会実現のためメリットとしての側面もある。

どのようなことか。例えば以下の様な3例が挙げられる。

■1:社会的弱者でないことがバレる
現在、行政は個人の資産を把握できないため、税金や社会保障の金額を所得ベースで算出している。
そのため、数億円の資産を持っていても、給与や事業での所得が無ければ低所得者と判断され、社会的弱者と判断される。

その結果、資産家でありながら、頑張って働いている資産の無い会社員より手厚い社会保証を受けられるのだ。

これは明らかに不公平感が出る。しかしマイナンバー制度が個人資産まで把握できる仕組みに展開されれば、この様ないびつな状況が緩和される可能性がある。

■2:贈与税のごまかしが難しくなる
例えば金融機関を通して贈与する場合、年間で110万円までは無税だ。これを利用して、例えば400万円を無税で贈与するために、4分割して別々の口座に振り込む手段がある。

しかし、マイナンバー制度が銀行口座と紐付けされていれば、税務当局に名寄せした金の動きが把握されてしまうため、課税対象になる可能性がある。

■3:総合課税への道
そして、富裕層が最も神経を尖らせている可能性があるのが、マイナンバー制度が総合課税への伏線ではないかということだ。

現在、銀行預金や債券等の利息、株式や投資信託・FX等の利益にかかる税率は、基本的には分離課税となっており一律だ。従って資産運用ができる富裕層ほど、累進課税から逃れることが可能になっている状況だ。

一方、給与所得がメインの一般的なサラリーマンは、働いて働いて稼げば稼ぐほど累進課税で持って行かれる仕組みだ。

この状況を、マイナンバー制度がひっくり返す可能性がある。富裕層の金融資産や金融所得を把握し、総合課税を行えば、莫大な税収増加に繋がるからだ。

以上は、筆者のような貧乏人には関係ないが、富裕層にとっては、今から資産を何処に逃がしてどう運用するか、といった悩みの種になるのだろう。羨ましい悩みだが……。

【参考・画像】

※ マイナンバー社会保障・税番号制度 - 内閣官房

※ PathDoc / Shutterstock

※ tooru sasaki / PIXTA

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