著作は180冊以上! その著者が本を書く上で大事にしていることとは?

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 何かを始めたいとき、進めたいとき、心の状態がどのようになっているかはとても大事なこと。心のバランスを崩していると、どうしても自分に無理を強いてしまうことになります。

 『アドラー流 心のダイエット』(佐藤綾子/著、集英社/刊)は、心理学者アルフレッド・アドラーの心理学メソッドを応用した30日間で新しい自信と勇気を手に入れるレッスンが書かれた一冊。著者の佐藤綾子さんは日本におけるパフォーマンス学の第一人者として活躍しており、日本大学芸術学部の教授でもあります。
 佐藤さんは著作が180作以上を数える多作の作家ですが、本書はどのような位置づけで書かれたのでしょうか。注目のインタビュー前編を配信します。
(新刊JP編集部)

■著作は180冊以上! その著者が大事にしていることとは?

――著作が180冊以上と非常に多作の佐藤さんですが、本を執筆する上で決めていること、大切にしていることはなんですか?

佐藤:絶対忘れないようにと決めていることが、二点あります。
その第一は、読者の役に立つかどうかです。どんなにすばらしい本でも、それを手に取った読者が、読んですぐに元気にならなければ意味はありません。この本を読者のパワースポットにしたいのです。
二番目に大事にしていることは、ある出版社の社長から言われたことです。
「佐藤さん、大衆にわかる言葉で書くんだよ」
彼はあいにく小さな子どものころに両親を亡くし、苦学して出版社をつくりました。彼が「大衆」と言ったのは、日本の一番たくさんの人口を占めている層、という意味です。大学を卒業したり、海外に留学したりしている人は、そこには決して多くありません。だから私は、そうした人たちがわかりにくいだろうと思う言葉、例えば、「CS」という略語を使うときは、「カスタマーズサティスファクション」とカタカナで書いて、さらに「顧客満足」と言葉を補足するようにしています。

――本書は佐藤さんにとってどのような位置づけとして執筆されたのでしょうか。

佐藤:今回の「30日間で生まれ変わる!アドラー流 心のダイエット」は、私の中で明確な位置づけをもっています。それは、若い世代で、今の現状よりもちょっと前に進みたいと思っている人、あるいは、現状を何かしら変えたいと思っている人に対して、わかりやすくて役に立つ、ショートストーリーの形にまとめるというものでした。
すでに読んだみなさんが「自信がつきました!」と言ってくださっているのも、きっとこんな私の思いが伝わったのだと思うと、うれしくなります。

――本書ではアルフレッド・アドラーの心理学を下敷きに、心を整える60のレッスンを紹介していますが、どのような人にこのレッスンを受けてほしいと考えていますか?

佐藤:この本を読んでほしいと思う人は、本当は、自分は素晴らしい人なのに、そのことをふと忘れてしまい、「私ってダメなのかも」とときどき思ってしまう人。
あるいは、言いたいことがあるのに、相手に遠慮してしまい、なかなか言い出せない人。
逆に、自分は思うことを全部主張しているのに、いつの間にかまわりが引いてしまっている、という人です。
言い換えれば、今の人づきあいの中で、ちょっとした問題に気付いている人ということになります。わずかな努力でぐんと変わる可能性のあるみなさんに、ぜひ手にとってほしいです。

――佐藤さんとアドラーの出会いは?

佐藤:今から35年前、1979年のことでした。私はその当時、上智大学大学院でアメリカ演劇の評論研究をしていました。
ある日ふと思ったのです。
「演劇の舞台は、台本でストーリーが全部決まってしまう。それより台本から演技まですべて自分ひとりでやることになる、実際の人生での演技性の研究のほうが面白そうだ」と。
そこであれこれしらべて、ついに発見! 翌年の1980年、ニューヨーク大学大学院(NYU)で日常の自己表現を研究対象にした「パフォーマンス学」の講座が新たに開講されるというニュースでした。
それっとばかりに、大反対の夫に平謝りして、長野県の実家に小学生の一人娘を転向させてNYUへ留学。なにしろ、娘を日本に置いてきているので、早く帰国しないと気が気でなりません。11か月で修士号をとって帰国。幸いにそれが当時の朝日新聞に大きく紹介されたのがきっかけで、アドラー心理学をやっている研究者とも知り合いました。
すぐにアドラー心理学の研究を開始。そして驚きました。
前向きで、過去を問わないで前へ前へと進んでいく、まるでヒマワリの花のようなアドラー心理学は、その具体的表現の形であるパフォーマンス学と一つのセットだと気づいたのでした。心の中と外、とでも言えるでしょうか。
パフォーマンス学のモットーは常に「ATT」。「明るく(A)」、「楽しく(T)」、自他の「ためになる(T)、という意味です。「自他のためになる」を、アドラーは彼の世界観として「貢献」ということばで表しています。
アドラー先生の言うように、みんなのためになりたいという気持ちを心の中に持ち、その気持ちを具体的に形に表すのがパフォーマンス学です。ちょうど二つの学問はコインの表裏のように一体としてセットになっています。そんなわけで、私とアドラー心理学のおつきあいは、ついに35年になりました。昔とちがってたくさんの人が興味を持ってくださっているのがとてもうれしいです。

――最初の「心の健康診断」テストでYESが16個以上だと「激やせ」、YES15〜8個だと「ヤセ」、YESが7個以下だと「デブ」と認定していますが、ちょうどいい数というのはないのでしょうか。

佐藤:日本の社会で人とうまく仕事や生活をして、自分も楽しくやれる人の平均的スコアは、おそらく8〜15個くらいです。
個人主義の強いアメリカで同じテストをやれば、多分このスコアは変わってくるでしょう。自分の主張がほかの人と違っても、まったく平気で自説をおしつけて、関係が悪くなったらその関係は終わりにして、次の関係をつくっていきます。いわゆる狩猟型の人脈作りです。
日本人の場合は農耕民族でしたから、次々と人脈を変えるよりも、今ある人脈を大切にしたい、と思います。そこで人に気を遣うのです。でも、人にばかり気を遣っていると、自分が疲れてしまいます。
上記の平均値は、気を遣いすぎでもなく、遣わなさすぎでもない。程よく人に気を遣いながら自分を大切にして生きている人々といえるでしょう。

(後編に続く)