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北欧やアラスカなどでよく見られる「オーロラ」。夜空を包み込むように、青や緑、赤色に光りたなびくこの美しい現象は、これを見るためだけのツアー旅行が組まれるほど、人気が高い。

ところで、明け方近くの時間になると、オーロラが数十秒ごとに光ったり消えたり、脈動する様子を見ることができる。「脈動オーロラ」と呼ばれるこの現象がなぜ起こるのかは、長い間謎とされ、さまざまな説が提唱されてきたが、いずれも明確に説明することはできないままだった。

2015年9月28日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所は、小型高機能科学衛星「れいめい」による観測と、コンピューターによるシミュレーションにより、その仕組みを解明したと発表した。そこには「コーラス」という、「宇宙のさえずり」とも呼ばれる不思議な現象が絡んでいた。

今回は2015年9月28日にJAXA東京事務所で開催された記者会見から、脈動オーロラの正体と、解明に貢献した「れいめい」、そしてさらなる謎の解明に向けて開発が進む「ジオスペース探査衛星(ERG)」について見ていきたい。

○脈動するオーロラ

オーロラは、太陽から飛んできた電子が、地球の磁力線に沿って地球に降り注ぎ、高度100から300kmあたりで大気とぶつかることで光っている。したがって太陽の活動が活発になれば、北欧などと比べると低緯度にある日本の北海道などでも見ることができ、実際に今年の3月と6月に観測されている。

オーロラと聞くと、私たちはまずカーテンのように揺れ動く姿を思い浮かべるが、明け方の2時や4時ごろになると、オーロラが数十秒ごとに光ったり消えたりする様子が見えるという。これを「脈動オーロラ」という。これは特殊な現象ではなく、明け方までオーロラ観測をしていると、誰でも見られるものだという。

さらに、この脈動オーロラを詳しく観測すると、数百ミリ秒という短い周期で、その光が強くなったり弱くなったりもしている。脈動オーロラのうち、数十秒ごとに光ったり消えたりする様子を「主脈動」、そしてその主脈動のうち光っている最中に、数百ミリ秒ごとにその明るさが変動する様子のことを「内部変調」という。

だが、なぜこの脈動オーロラが起こるのか、何が主脈動と内部変調を起こしているのかは、長い間謎に包まれていた。

その謎の一端を明らかにするため、2005年に小型高機能科学衛星「れいめい」が打ち上げられた。

○小型高機能科学衛星「れいめい」

「れいめい」は2005年8月23日、カザフスタン共和国のバイカヌール宇宙基地から、「ドニェープル」というロケットで打ち上げられた。

衛星の寸法は62×62×72cm、質量70kgほどの、小型に分類される衛星ではあるが、オーロラを精密に観測するため「多波長オーロラカメラ」と「プラズマ粒子観測器」、そして「電流モニター」という、高性能な観測機器を搭載している。

これらの機器は、高い性能をもっているだけではなく、衛星の中での配置も適切に設計されている。さらに「れいめい」は、「高機能」の名の通り、先進的な衛星技術の実証も目的とされており、その中には衛星の姿勢を精密に制御することができる技術も含まれている。

これらの機能により、「れいめい」は電子が地球に振りこんで来る動きを観測しつつ、その電子がオーロラを光らせる様子もいっしょに観測することができるという、世界初の特長をもっている。

これまでの観測では、電子が地球に降ってきていること、そして電子がオーロラを光らせていることはわかっていた。だが、たとえば地球に降ってきたある電子が、そのあとオーロラを光らせるまでの流れを、直接追うことまではできなかった。しかし「れいめい」は、高度620kmほどの軌道を飛びつつ、頭上から降ってきた電子が、足元でオーロラを光らせるまでの一連の流れを、直接観測することができるのである。

そして2007年に「れいめい」が観測した結果から、宇宙から降ってくる電子が、数秒ごとに増えたり減ったりしており、それに対応して主脈動が起きていること、つまりオーロラが明るくなったり消えたりする様子が明らかになった。

さらに、その降ってきている電子の中で、1秒間に数回の頻度で電子の数の増減が起きており、それに対応して内部変調が起きていること、つまり主脈動のうち光っている最中に、その明るさが数百ミリ秒ごとに変動する様子も明らかになった。

地球に降ってくる電子が、数秒ごとに降る、降らないを繰り返し、また数百ミリ秒という単位で、降ってくる電子の量が多くなったり少なくなったりしていることで、脈動オーロラが起きているのではないかということは古くから予想されていたが、この「れいめい」の観測によって、世界で初めて直接確認することができたのである。

○残った謎

「れいめい」の観測により、地球に降ってくる電子の増減が、オーロラの脈動や瞬きを起こしていることはわかった。では、なぜ電子の数は増減を繰り返しているのだろうか。

(次回は10月14日に掲載予定です)

(鳥嶋真也)