CBの定位置奪回へ静かに闘志を燃やす森重「ミスを恐れずにやっていきたい」

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 翌日にイラン戦を控えた日本代表は12日、試合会場となるテヘラン市内のアザディ・スタジアムで前日練習を実施。トレーニング終了後に取材に応えた森重真人(FC東京)は、イラン戦での活躍とセンターバックの定位置奪回へ静かに闘志を燃やした。

 森重にとっては覚悟の一戦となる。9月に同会場で行われたワールドカップ アジア2次予選のアフガニスタン代表戦では、吉田麻也(サウサンプトン)とのセンターバックコンビで6−0の勝利に貢献。最終ラインから積極的に鋭い縦パスを供給しただけでなく、ミドルシュートも放ち、35分にはショートコーナーから決定的なヘディングを放ち、さらに本田圭佑(ミラン)の折り返しに左足で詰めてゴールも決めていた。本職の守備でも最後まで大声を張り上げて集中力を切らすことなく完封。槙野智章(浦和レッズ)が負傷離脱する中、攻守に抜群の存在感を披露した。

 だが、8日のシリア戦では復帰した槙野が吉田とのコンビでスタメンに名を連ね、森重はベンチを温めることに。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は就任からこの二人を重用してきたが、アフガニスタン戦で大活躍を見せたにも関わらず、森重は再びポジションを明け渡す形となってしまった。

 もちろんチームの勝利が最優先であることに変わりはない。しかし、この試合に期すものがあることは想像できる。センターバックの定位置をもう一度自らのものとするためには、今回のイラン戦で結果を出すことが必要不可欠となる。

 記者団からイラン戦に向けての準備について聞かれた森重は、「チームの勝利が第一」と前置きしながらも、「チャンスをもらえると思う」とスタメン出場を示唆。さらに「個人的にはしっかりアピールすることもやっていきたい」と続け、個人のパフォーマンスに強いこだわりを持ってイラン戦に臨むことを明らかにした。

 センターバックというポジションを考えると、まずは無失点に抑えることが自らの存在価値を高めることにつながる。「チームが勝てば必然的に自分のアピールになる。こういう相手に対してやられないで90分間を終えることが今の自分にとっては重要。それを何試合も積み重ねていくことが大事だと思う」と今後を見据えた。

 対戦相手のイランは高さを生かした攻撃を得意とする。スカウティングビデオを見た森重は「特にクロスからの攻撃やサイドからの崩しが特徴。中でしっかり相手選手について、そこの勝負で勝たなければ失点してしまう」とフィジカルを前面に押し出してくるスタイルを警戒。これまで取り組んできた高い位置でボールを奪うことに関しては「そこはDFも常に心掛けているので、タイミングを見計らってインターセプトを狙いたい。ただ、相手が前を向けるタイミングであれば最終ラインの裏をケアしなければいけないし、相手に背負われた時はファウルせずに振り向かせない守備をしたい。その使い分けが大事」と臨機応変さを持って臨む。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が求めるのは、積極的にプレスを仕掛けて高い位置でボールを奪い、一気にゴールへ襲い掛かるサッカーだ。だが、当然ながらこのスタイルを90分間ぶっ通しでやり続けることはできない。指揮官が求めるものを理解して表現しようとする一方で、実際にピッチ上で戦う選手たちの判断=臨機応変さが重要になる。

「守備陣として積極性はどんどん出していきたいけれど、前へイケイケになるイメージは持っていない。監督の言葉に踊らされるんじゃなく、普段どおり自分のタイミングを大事にしていきたいし、(縦パスを)しっかり前を狙っていきたい」

 約1カ月前のアフガニスタン戦。最終ラインからのパスやロングキックで攻撃の起点となったのが、他ならぬ森重だった。もちろんそれは自分自身でも理解しており、「(ビルドアップは)持ち味の一つ。自分が入ることで攻撃の形を見いだせればチームにとってプラスだし、自分のアピールにもなる。(周りとのコンビネーションは)まだ新しいチームになって探り探りのところはあるけど、タイミングをすり合わせながら、確認しながら、ミスを恐れずにやっていきたい」とアグレッシブさを出していくつもりだ。

 FIFAランキングでアジア最上位のイラン相手にどんなサッカーをできるのか、そして個人としてどんなパフォーマンスを見せられるのか。

「ずっとやってきたことがこういう相手に対してどうなのか。それを試してみたい」

 ゆっくりと冷静に言葉を紡いだミックスゾーンでのやり取りは、いつもと変わらないものだった。だが、そこには彼の熱い気持ちが凝縮されていたように思う。チームにとっても自身にとっても、格好の試金石となるイラン戦。果たして森重は最終ラインでいかなる輝きを放つのだろうか。

文=青山知雄