イマドキの部下とどう接するか? 30代、初めての管理職就任の心得
【石原壮一郎の名言に訊け】〜野村克也の巻

Q:まだ30歳だが、平均年齢が若い会社なので、このあいだ課長になった。5人の部下ができたが、自分としては何でも話せる兄貴的な存在でいたいと思っている。キャラ的に鬼上司にはなれそうにないし、自分が口うるさい上司で苦労したから、嫌われるような上司にはなりたくない。ヒラ同士のときは仲良くしてきたから大丈夫だとは思うが、コミュニケーションをとる上でどこに気をつければいいのか。(東京都・30歳・IT関係)

A:ご昇進、おめでとうございます。いわば上司としては新米ですから、夢をふくらませつつも、それなりに緊張なさっていることでしょう。今日の喫茶「いしはら」には、町内の草野球チームの監督を長くなさっている野々村さんがいらっしゃいます。奥さんのほうが存在感が大きくて「ノミの夫婦」っぽいので、陰では「ノミさん」と呼ばれています。ノミさん……じゃなくて野々村さん、この青年はどこに気をつければいいんでしょう。

 こら、ええかげんにせえよ。お前らが陰でワシのことを「ノミさん」って呼んどることぐらい、とっくに承知の助じゃ。だいたい、このごろの若い読者に「ノミの夫婦」のたとえが、どこまで通じるんや。マスターも、自分が年を取ったことを自覚したほうがええで。

 この兄ちゃんは、困ったやっちゃな。このままの了見やと、課長になったはええが、部下はついてこんし結果も上げられんやろう。なにが「兄貴的な存在」や。なにが「嫌われるような上司にはなりたくない」や。自分が部下にええ顔をしたいだけで、仕事や組織っちゅうもんをなめとるんと違うか。

 プロ野球の世界で選手としても監督としても超一流の野村克也さんは、リーダーの心得について、こんなことを言うとる。名前が似とるせいか、ワシと考え方も近いな。

「好かれなくても良いから、信頼はされなければならない。嫌われることを恐れている人に、真のリーダーシップは取れない」

 上司なんてもんは、嫌われてナンボや。部下をいじめたり利用したりしようとする上司は問題外やが、立場が変われば考え方も役割も変わる。部下の反発を気にして、言うべきことややるべきことを引っ込めてしまうようでは、上司なんか務まらん。信頼される自信がないヤツに限って、表面的に好かれようとしくさる。もっと腹をくくらんかい。

 それにしても、この兄ちゃんは、ほんとに上司というもんがわかっとるんかいの。いろいろ言ってくれてた上司を単に「口うるさい」としか思えんようでは、あまりに幼稚で視野が狭いで。この兄ちゃん、けっこう心配やから、もうひとつ野村さんの言葉を教えたるわ。

「リーダーは、部下を好き嫌いで使うことは許されない」

 部下に好かれようとしているってことは、部下に対しても好き嫌いの感情を持ち込む気まんまんってことちゃうか。それも、自分に露骨になついてくれるかどうかで、好き嫌いを決めそうや。そのくせ、自分では慕われている兄貴気取りでな。ホンマ、最悪の上司やで。まだ間に合うから、上司にとって何が大事かをもういっぺん考えてみいや。

◆【今回の大人メソッド】上司が「好かれること」を目指すのはお門違い

 結果的に「部下に慕われている上司」は存在します。しかし、結果的にそうなるのは大いにけっこうですが、最初から本人が「部下に好かれること」を目指すのは、お門違いであり役割の放棄でしかありません。嫌われることを恐れないのが、上司としてもっとも大切な心得と言えるでしょう。まあ、ただ単に嫌われているだけの上司もたくさんいますけど。

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いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)