気を落とすべ・サンムンの肩を抱き、やさしく声をかけたキャプテンのプライス

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 プレジデンツカップは1ポイント差で米国チームが勝利し、幕を閉じた。
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 個人マッチが行われた最終日は、序盤こそ米国チームが圧勝しそうな展開だったが、執拗に粘った世界選抜が徐々に追い上げ、終盤は両チームの接戦になった。
 選手たちの必死さが彼らの表情から伝わってきた。バッバ・ワトソン、ダニー・リー、アニルバン・ラヒリ、、、、一流選手たちが次々に短いパットを外し、顔を覆う場面から、プレッシャーの重さが伝わってきた。
 とりわけ、18番でべ・サンムンが感じたプレッシャーの重さは計り知れない。世界選抜チームのため、母国韓国の名誉のため、これから22か月間の兵役に就く自身のためにも、グリーン手前からのあの第3打をどれほど寄せたかったことか。自らの勝利をどれほど切望し、そしてチームを勝利へ導きたかったことか。その大事な一打を打ち損じ、それがチーム敗北の決定打となってしまったことは、とても残念だった。
 だが、視点を変えて対戦相手だった米国チームのビル・ハースの立場に立ってみると、彼は彼で多大なるプレッシャーの下にあった。米国チームのキャプテンは父親のジェイ・ハース。その父親によるキャプテン推薦でチーム入りした息子ハースは、チームのため、自身のため、そして父親のキャプテンとしての名誉や評価も背負いながら戦っていた。
 どちらも必死だった。結果は「べ」のミスによってハースの勝利が決まり、米国チームの勝利が決した。
 終盤の接戦には固唾を飲んで見守る緊張感がもちろんあった。だが、米欧対抗戦のライダーカップでしばしば漂う一触即発の敵味方のような緊迫感は感じられず、むしろ温かい人間味が伝わってきたのは、韓国のギャラリーの観戦姿勢のおかげだったのかもしれない。
 韓国のギャラリーは唯一の母国選手の「べ」に最大の拍手と声援を送っていたが、同時に彼らは、世界選抜チームの他選手にも米国チームの選手たちにも笑顔で温かい拍手と声援を送り続けていた。
 「遠くで歓声や落胆の声が上がっても、それがどっちのチームに対するものなのか、わからなかった」とは、ダスティン・ジョンソンの言。ライダーカップや過去のプレジデンツカップでは、たとえば米国での開催ならギャラリーの喜ぶ声も落胆の声もすべて米国チームのためのもの。英国開催なら欧州チーム、南ア開催なら世界選抜チームのためのもの。
 だが、韓国の人々はどちらのチームに対しても、好プレーなら拍手、残念な結果には「あー、惜しい」と落胆。ジョンソンはそんな韓国人ギャラリーの反応に「驚いた。素晴らしい」と感銘を受けていた。 
 ゴルフが盛んな韓国は男女とも優れたプロゴルファーを多数、世界へ輩出している。だが、世界規模のビッグ大会を自国で開いた経験は無いに等しく、プレジデンツカップ開催は韓国は初、いやいやアジアでの開催自体が初だった。
 勝敗をかけた選手たちは、もちろん必死。だが、韓国の人々にしてみれば、今回のプレジデンツカップは世界の一流選手たちのゴルフを間近に眺めることができる初めての希少なチャンス。どの選手にも興味深い視線を向け、拍手と声援を送っていた背景には、そんな事情があったのだろう。
 「地元の人々にとっては地元で開催される大会がメジャー大会」とは、ジョーダン・スピースの言。韓国で開催されたプレジデンツカップは、韓国の人々にとっては胸躍るメジャー大会みたいなもの。そして、勝敗の行方に関わらず、出場した24名の選手全員が韓国の人々に笑顔をもたらし、人々の笑顔が大会会場に温かい空気をもたらした。
大詰めの最終マッチの最終ホールを見守りながら、世界選抜のダニー・リーと米国のリッキー・ファウラーが言葉を交わし合う姿が印象的だった。大事な場面でショートパットを外したラヒリ、チーム敗北を決定づけてしまったべ・サンムンの肩を抱き、しきりに声をかけていたキャプテンのニック・プライスの姿が印象的だった。
 人間味溢れた今回のプレジデンツカップは、とてもいい大会だったと、つくづく思う。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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