いよいよ「キングオブコント」2015決勝の日。
エキレビ!は、TBSで決勝の瞬間を見届けてきます(詳細は明日、井上マサキがっつりレポートする予定→優勝会見レポ →採点データ解析)。

「キングオブコント」の醍醐味は、本戦だけじゃないのだ。
優勝者が決まった後は、芸人さんたちのラジオをめぐり、感想を聞きまくる、これが楽しい。たとえば「おぎやはぎのメガネびいき」。2014年については、ファイナリストたちの質の高さを称えながら、存続するためには番組の姿勢がストイックすぎるのではないかと心配、ネタ番組そのものが減りつつあることを憂う真情が聞けた。「有吉弘行のサンデーナイトドリーマー」は「トップリード」「アルコ&ピース」などの番組レギュラーが続々ファイナリストになっては決勝で涙を飲む。その結果を受け、有吉の焼け火箸のような(愛ある)罵倒、「全体に小劇場っぽくなってきたね」などの分析が刺さった。今年はファイナリストにサンドリファミリーがいないのがざんねん。「バナナマンのバナナムーンGOLD」も気になる。ふたりが審査員になった今回はどんな語りになるんだろう。

キングオブコントのすべてがある


あげているときりががない。
で、ぜったいに逃せないのがネット番組「ニコニコキングオブコメディ」。2010年キングオブコントを制したキングオブコメディのトーク番組である。
キングオブコメディふたり(高橋健一・今野浩喜)の語りの魅力はもちろん、毎年夏の終わり頃から、彼らの後輩であるプロダクション人力舎の若手芸人たちが番組にやって来ては、ドラマを見せてくれる。
賞レースの厳しさ、芸人同士の友情、ライバル、友情ゆえの葛藤、嫉妬、苦悩、バイト、借金……、


「ニコニコキングオブコメディ」には、キングオブコントのすべてがあるといっても過言ではない。

最初にあげた3番組とちがって基本収録配信なので即時性こそないが、トークの自由度が格段に高く、生々しいのだ(生々しくなる理由についてはこちらキングオブコメディのフリートーク力が凄い件。チケット瞬殺公開収録番組戦慄のレポを参考に)。

お笑い大好き小西りえこさんがステキなイラストを描いてくれた。それを見ながら「ニコニコキングオブコメディ」で繰り広げられてきた「キングオブコント」のバックストーリーを追ってみたい。2010年配信開始分からアーカイブがすべて無料で視聴できます。(ニコニコ動画版 youtube公式ミラー

1.ライバル編


親友がファイナリストになってしまったら 巨匠岡野とザンゼンジ武田の場合(2014年 ニコニコキングオブコメディ 112回


2014年のキングオブコントで、テレビ出演もほとんどない無名の存在からファイナリストとなった巨匠。「新聞紙にパチンコ玉をくるんでおじさんをつくる」コントのひとたちです。
巨匠の岡野が、キングオブコントの翌日にニコニコキングオブコメディにゲストとして登場し、ザンゼンジ武田と対面。
2013年は準決勝まで行ったんだが、2014年は2回戦落ちしたザンゼンジ。
2014年、ファイナリストに残り、決勝1回戦でシソンヌに僅差で敗れた巨匠(シソンヌはこの年の優勝者である)。

芸歴としては武田が先輩、年齢は岡野が上、ふたりは親友であるらしい。
仲がいいゆえの率直なやりとりが見もの。何度もつかみあいのケンカに発展し、それを「のこったのこった」と紙相撲のジェスチャーであおる高橋、この日ならではの(ぜひ配信を見てください)ブラックジョークで諌める今野のコンビネーションは出色の即興コントである。

こんなに笑いにしているのに、どうしても滲んでくる武田の思いが切ない。

たとえばこんなところ。

(今野に、ネタ選びの相談は武田にしなかったのかと問われて)
岡野「いやあ、僕ら決勝行ってから(武田の)目が変わったんですよ」
高橋「逆のことを言ってきそうみたいな? スベるネタのほうを」
武田「ちゃんと言いますよ」
岡野「ほんとに変わっちゃったんですよ、このひと」
武田「それよく言うんですけど、なーんも変わってない、こっち(岡野を指して)が変わったんですよ」
岡野「いやいや、人間ってバカじゃないからわかるじゃないですか。(笑)。このひとはほんとよかったよって言うんですけど、絶対思ってない人間の目をして言うんですよ」
今野「(武田に)じゃあ、おめでとうとは思わなかったってことなの?」
武田「ほんとに仲いいんですよ、マジで。正直言うと、半分半分です。おめでとうっていう気持ちと、さみしさです」
高橋・今野「さみしさ!?」
武田「遠いところにいっちゃうんじゃないかっていうさみしさがありましたよ。いっしょに遊んできたのに、一個上のステージに行っちゃうんんじゃないかっていう」

今年もザンゼンジは惜しくも準決勝敗退。2年連続でファイナリストとなった巨匠の一回戦ネタ順はラスト。
毎年、芸人たちのあいだで、武田と岡野のようなドラマが数えきれないくらい生まれてているのだろう。その複雑な感情を背負ってファイナリストたちは戦うのである。

2.バイト編


辞めてやる! と叫んで怒られた 鬼ヶ島アイアム野田の場合(2011年 ニコニコキングオブコメディ33回* 生配信)


キングオブコントにチャレンジする芸人たちの大半は、芸だけでは食えず、アルバイトを掛け持ちしているものらしい。程度の差はあれ「いまに売れてやる、稼いでやる」という夢がある。キングオブコントの優勝賞金1000万円はその象徴でもあり、事前番組を見ると、ファイナリストたちは必ず「賞金の使いみち」をインタビューされている。

「関係あるかーい! 辞めてやるわ、バイト!!」

鬼ヶ島アイアム野田の絶叫である。
2011年、はじめてファイナリスト進出した回、優勝はロバートだったが、鬼ヶ島もかなりの高得点を出して健闘(「おまえおまえおまえ……」というフレーズの繰り返しが悪夢のような傑作コント)。「優勝するつもりだった」という気分を引きずったまま、ニコニコキングオブコメディ生放送スペシャルに酔っ払って乱入する野田。

酔っ払ってる野田に代わり、高橋が状況を説明する。
芸人ゆえ、不定期で休みが入ることを理由にバイド先をクビになりかけた。お願いしてなんとか継続してもらった矢先、ファイナリストになる。その記者会見の席上で

「やったー、これでバイト辞めれる!」

とガッツポーズを決めた。だが、その映像をバイト先の先輩(5歳下)が見ていた。みんなで飲んでいるとき電話がかかってきて

「野田くんあれはどういうことかな」
「は……はい。はい……すみません。あの、あの……おもしろいと思って……これからもよろしくおねがいいたします」

って平謝りしてたんだよ……と高橋が口調をなぞって語るのを聞いてるうちに感情が高ぶった野田、
「なんで怒られなきゃいけねえんだよ」「関係あるかーい!」と、先の絶叫となったのだ。

興奮する野田に
「じゃあ、(その気持ちをバイト先に)今電話してよ」と冷静に言い放つ今野。
「……それはちょっと怖い」
野田は一瞬酔いの醒めた顔をしていた。

このあとも野田の呪詛は続き、いいオチがつきます。

決勝の音響事情も出てくる。
番組スタッフではなく、芸人側で操作するならわしのようだ。たいていが後輩芸人の役であり、この時の鬼ヶ島の音響はザンゼンジ武田が担当したという。
「タイミングばっちし」だったと話す武田だが、優勝したら報酬9000円という約束だったせいで、本当に一銭ももらえなかったそうだ。

今年の準決勝、コロコロチキチキペッパーズのコントの最初のほうでちょっとした音響トラブルがあり、このエピソードを思い出した。担当した後輩がきっと怒られるんだろうなあーと想像してドキドキしたので、コロコロチキチキペッパーズがファイナリストになってほんとうによかった。

3.優勝編


練習って合法でしょ? キングオブコメディの場合(2010年 ニコニコキングオブコメディ8回 *生配信)


最後はやっぱりキングオブコメディの優勝エピソードを。
たぶん今日、キングオブコントの事前番組で2010年の優勝コント「教習所」が放映されるはずなので(頼みますよ、TBSさん)この傑作コントの裏にそんな事情が! と知るとさらに面白いです。
キングオブコント翌日の生配信。前夜の優勝の喜びでいっぱいの内容になると思いきや、今野の高橋への苦情がすごい。

「(高橋をしばらくにらんで)……ボロボロ!」
「審査員はなにしてたんだろう、ひどかったろう」
「ほんとに今野がよかったんだろうね!」

これは、ファイナリストに決定した前回配信(7回)から続いてる流れで「とにかく高橋は練習のしすぎ」だというのだ。しすぎて疲れ果ててロクなことにならないじゃん!という苦情。

高橋「練習しないとおちつかない」
今野「それだけの理由じゃん」
高橋「練習しすぎなんですよ」
今野「わかってんじゃないかよ」
高橋「でもからだが練習を欲しちゃうんだよね、練習してるとすーっとしてくる……。練習って合法でしょ?」

今野「やめようよ〜」
高橋「練習してるときってやなこととか忘れちゃうじゃん。全部忘れられるから」
今野「何があったの!? なんなのおまえにとって練習って……」

「キングオブコント2010」に収録されたドキュメンタリー映像でも、練習バカ一代・高橋の姿を確認できる。
ここまで練習するのは極端なケースなのかもしれないが、キングオブコントがどんなに大きな意味をもっているのか、芸人たちがあそこでネタを披露する緊張がまざまざと伝わってくる。


以上、紹介したのはほんの一部で、。他にも聞きどころがたくさんあります。思い出したところであげてみると、
2012年、バイきんぐ優勝の年(ニコニコキングオブコメディ 60回)では「バイきんぐのネタで(芸人たちがウケて足を踏み鳴らして)地響きが起きた」らしいという噂から優勝の時の涙について考察してたり、2013年、かもめんたる優勝の年(ニコニコキングオブコメディ 86回)では、ふたたびファイナリストとなった鬼ヶ島について「3人が3人とも金のことしかいわない」とまたも金がらみのトークをアイアム野田多めに繰り広げる……などなど。

今年のキングオブコントには、ニコニコキングオブコメディお馴染みの芸人から「巨匠」と「ザ・ギース」がファイナリストとして出場する。キングオブコメディの感想が聞けるのは半月くらい先の配信になりそうだけど、本戦とあわせて今から楽しみだ。
(アライユキコ イラスト・小西りえこ