別な専門家も、気候と人間の健康を考える上で「気象病」や「季節病」などが実際に多くあると証言している。一例を挙げると、冬場のインフルエンザ、夏の食中毒や熱中症、春秋の花粉症などである。他にも季節性うつ病という病気もある。東京社会医療研究センターの笹島雅彦主任は、こんな説明をする。
 「近年では特に、異常気象ともいわれる大雨や竜巻、そして大きな災害をもたらす台風などが、その時季の気圧を大きくかき乱しています。秋雨前線が停滞するのも10月前後で、温かい太平洋高気圧が大陸の冷たい高気圧と入れ替わるため、気温や気圧の変化で自律神経が過敏になりがち。気温差によるストレスで自律神経のバランスを崩し、体のあちこちに痛みや不調が起きやすい。また、低気圧が近づく際に体を緊張させる交感神経が興奮することも、体調不良に関与していると考えられています」

 2012年に米ハーバード大学の公衆衛生大学院グループが、「夏に高温化して温度変化が大きくなると、各都市で死亡率が上昇する傾向にある」と発表した。同グループは、全米135都市に在住する65歳以上の男女370万人について、慢性疾患に関する'85〜'06年の長期データを解析。その結果、夏の気候に異変が現れて温度が1℃上昇すると、高齢者の場合は疾患による死亡率が2.8〜4.0%%に跳ね上がったという。
 死亡の危険率は、糖尿病を患っている人では4.0%、心臓発作の既往歴のある人は3.8%、慢性肺疾患のある人は3.7%、それぞれ上昇したとされ、つまり米国で夏に異常な温度上昇が起きると、死亡数は年間1万人以上も増加する計算になる。

 気象学にも一家言を持つ医学博士・内浦尚之氏はこう言う。
 「備えあれば憂いなし、ではありませんが、早めに長袖のシャツを着たり、上着を着用したりして、急激な気温変化に対応できるようにすることです。寝る前に38〜40℃のぬるめのお風呂に入り、交感神経から副交感神経への移行をスムーズにすることで、自律神経の乱れを整えることも大切。さらに、適度な運動をすることで、交感神経を鍛えることも大事です。また、食欲の秋といって食べ過ぎないこと。先に白湯を飲んでから食事をすると、食欲を抑えることができます」

 意外なことに、気圧が下がれば“酔い止め薬”を使うのも有効だという。
 「天気痛などを起こす人は、耳の奥(内耳)にある気圧を感じる細胞が、他の人より敏感だといわれます。通常、リンパ液の流れを脳が察知することで、内耳は体のバランスをとります。しかし、気圧を感じる細胞が敏感すぎると、ちょっとした気圧変化に大きく反応してしまい、体が傾いていないのに脳は体が傾いたと錯覚してしまう。その結果、体全体の交感神経が興奮し、治ったはずの古傷の痛みなどを感じてしまうことがあるのです」(同)

 「三寒四温」という言葉がある。4日間、暖かい日が続くと3日間は寒い日が続く。7日の周期で寒暖が繰り返されるという意味だが、季節の変わり目の気温や気圧の変化は、身体的にも疲れがたまり、免疫力も弱まって風邪をひきやすくなる。この時季は気候の変化に十分注意したい。