ヨアヒム・レーヴ監督【写真:Getty Images】

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残り1戦、本大会出場まであと“勝ち点1”

 欧州選手権(ユーロ)予選もグループリーグ最終節を迎える。14年ブラジルW杯制覇後、長くチームを支えたベテランが代表引退。特にフィリップ・ラームの穴は大きく、今もSBに絶対的な存在は見つかっていない。しかし、ヨアヒム・レーヴ監督は人材不足を競争の好機と捉えている。

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 実験はしない。代表監督ヨアヒム・レーヴはそう考えている。ドイツ代表は、2015年10月8日と11日の欧州選手権予選で、対アイルランドと対ジョージアの2連戦に臨んでいる。

 昨年9月から1年以上に渡って続いた欧州選手権の予選も、終わりを迎えようとしている。13日でグループリーグの全日程は終了し、残すは11月に行われるプレーオフのみだ。

 各グループの1、2位と、1、2、4、5位に対して最も成績の良い3位が、まず予選を通過する。そしてプレーオフを勝ち抜いた4チームと、開催国フランスを併せた計24チームが来年の本大会に出場となる。

 2連戦に臨むにあたって、ドイツ代表は、グループDの首位に付けていた。昨年10月の対ポーランド、対アイルランドの2連戦を1分1敗とするなど、序盤こそ不安定な戦いを見せていたが、終盤にかけて世界王者らしさを取り戻して来ていた。9月4日にポーランドを3-1で下すと、7日はスコットランドを3-2で退ける。

 そして本大会の出場まで、あと“勝ち点1”というところまで来た。よほどのことがない限り、フランス行きは確定、と見て差し支えないだろう。少なくともジョージアは勝ち点を計算できる相手だ。レーヴも現状に手応えを感じている。2連戦に臨む前、公式会見で次のように述べた。

「私は確信しているよ。我々が良い成果を示すということをね。代表チームは9月の試合で再びオートマティズムを身につけた。ポーランドとスコットランドに対して、とても良くプレーした」

絶対的な選手がいないからこそ、生まれる競争もある

 予選の最後の2連戦で、まず本大会出場の切符を掴むことを最優先とする。つまり、取り戻したオートマティズムを崩すような実験は行わない。

「多くの変化を与えることは計算に入れていない。だが私はいくつかのポジションについてはあれこれ考えている」

 新しい布陣など、全体のバランスを変えてしまうようなことには取り組まない。それでいて「いくつかのポジション」、とりわけサイドバックについてレーヴは考えを巡らせている。

 ブラジルW杯が終わり、フィリップ・ラームが代表を引退して、1年以上が過ぎた。しかし未だに後継者は見つかっていない。ドルトムントのエリック・ドゥルムや、ホッフェンハイムのセバスチャン・ルディが試されてきたが、右SBにピタリとハマったとは言い難い。

 9月のポーランド戦とスコットランド戦でプレーしたエムレ・ジャンは、SBというよりはボランチの選手が右SBでプレーしたという印象を残した。もちろん、ラームクラスのSBが欧州、引いては世界中を見渡してもそうそう見当たらないのも事実だ。レーヴも、そのことは十分に承知の上である。

「フィリップ・ラームのような傑出した選手をすぐに埋め合わせることができるということを、期待することはできない。若い選手は時間を必要とするし、学ばなければならない。私はこのことを問題ではなく、チャンスと見なしている。多くの選手、そして我々にとって、様々なことをテストするための」

 レーヴは、人材不足を好機と捉えている。絶対的な選手がいないからこそ、生まれる競争もある。また様々な選手を試すことで、チームとしてテストできることも多くなる。

ドルトムントで目覚ましい活躍を見せるギンター

 そこで少し注目を集めているのが、マティアス・ギンターだ。今季、トゥヘルによって右SBに起用されたギンターは、ドルトムントで目覚ましい活躍を見せている。

 8日付の『キッカー』誌は「また、レーヴがギンターを同様に4バックの右で起用するようなことがあれば、これは全くもって理解できることだ」と記した。

 こうしたラーム後の問題について、レーヴはまた次のように語っている。

「ヨナス・ヘクトルはまだとても若いが、この間はとてもよくプレーした。マティアス・ギンターとアントニオ・ルディガーはさらなる具体例だ」

 また、今回は招集されてはいないが、ドルトムントで左SBを務めるシュメルツァーを来月のテストマッチで呼ぶ予定である。

 そして実際に、レーヴはアイルランド戦で、右SBにギンターを起用した。77分間の出場となった。ドイツ代表が0-0で迎えた70分にアイルランドに先制を許したため、追いつくために77分にベララビと交代となっている。

 ドイツ代表は、アイルランドに0-1で敗北を喫したが、グループDの首位に付けていることに変わりはない。いずれにせよ予選の突破は、ほぼ間違いないだろう。本大会の出場まで、あと“勝ち点1”という状況に変わりはない。

 マリオ・ゲッツェは負傷で離脱となったが、戦力は補って余りある。最終戦はホームで、グループ5位のジョージアと戦う。

 アイルランドに敗れた後で、ボアテングは言う。

「日曜日に僕たちは花火を打ち上げなければならない」

 右往左往しながらも、欧州選手権予選は最終局面を迎えた。フランス行きのチケットは、手の届くところまで来ている。

 そしてライプツィヒで迎えなければならない大団円は、ラーム後の問題の解決を含む新たな実験=挑戦の始まりでもある。

 世界王者であっても、進化への意欲に限りはないのだ。

text by 本田千尋