シリア戦はポジションに微修正を加え、勝利を引き寄せた本田。前半途中から変えられればレベルアップできると語った。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選の山場であるシリアとのアウェーゲーム(政情不安のため中立地のオマーンで開催)を制した日本代表は、グループEの首位に立って2次予選の半分を折り返した。ひとまずノルマの1位通過へ道が開けたが、チームが解消すべき課題は少なくない。攻撃のキーマンである本田、香川、岡崎の3人も、それぞれに思うところがあったようだ。

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「僕みたいなタイプは、外に張っていても特になにも見せられないで終わってしまうことがだいたいなんで。中に入っていったほうが、チームとしてもよりコレクティブに機能すると思います」
 
 そう語るのは、右ウイングの本田だ。タイトなプレスを受けた前半はボールの供給を得られずに持ち味を発揮できなかったが、中央寄りにポジションを移した後半に1ゴール・1アシスト。本人が言うように「中に入っていったほうが」機能性が高く、チームとしてゴールに迫る回数も増加した。
 
 シリア戦は相手が前からプレスに来たために、中盤やバイタルエリアにスペースが空き、そこを本田が使えたという側面はある。引いてスペースを埋めてくる相手に対して同じことをすれば、「シンガポールみたいに引かれると、今度は幅を取ったほうがよかった、みたいなことも言える」と述べたように、バイタルエリアが渋滞して攻撃が滞ってしまうだろう。前に出てくるシリアが相手だったからこそ、中央寄りのポジショニングが効いたのだ。
 
 では、引いた相手に対しては、どんな対応をすべきなのか。その解答について、本田は以下のように語った。
 
「原口みたいにドリブルが得意な選手がいるサイドは、逆に張ったままとか、使い分けがあるとさらにいい。チームとして攻撃パターンが両極端になるのではなくて、相手によって前半の中でスタイルを変えられるようになれば、もっと強いチームになるかなと」
 
 原口なら突破力を前面に押し出し、本田ならコンビネーションを軸にする。宇佐美や清武といったジョーカーについても同じで、それぞれのセールスポイントを引き出せるポジショニングやスタイルを確立し、それを柔軟に「使い分け」るのが本田が見据える理想像だ。
 柔軟な「使い分け」については、岡崎の意見も近いものがある。
 
「足下が多かったから、もうちょっとバリエーションの話をしてもいいのかなと。例えば、サイドハーフを突っ込ませて、そこにロングボールを入れるようなバイエルンがよくやる攻撃もありだと思う。ガンガン対角線に入れて走らせて、そこで相手のラインを押し下げる。相手を疲れさせてっていうのができれば、そういうのもまたひとつだと思う」
 
 日本代表の攻撃は、どうしてもショートパスに頼りがちだ。全体のポジショニングを中央寄りにしたシリア戦の後半はそれが機能したが、選手の距離感が遠かった前半に足下へのパスを多用したのは明らかなミスだ。アグレッシブにプレスに来たシリアの守備に引っかかっていたのもある意味当然で、相手DFの目先をかえる大きな展開が必要だった。
 
「もうちょっと多彩な裏への抜け出しっていうか、自分だけじゃなくて、いろんな選手たちが自分を飛び越えてガンガン狙っていってもいい。体力的にしんどいですけどね。ただ、いろんな強豪チームを見ると、足下だけではやってこない。やっぱり多彩に突いてきて、バテさせて、自分たちの良さを出していく。そこは、今の自分たちに欠けているところだと思うので、トライしていかないといけないのかなと思いました」
 
 大胆な飛び出しで相手のラインを下げさせれば、自ずと中盤のスペースが空く。となれば、日本の持ち味であるショートパスでの崩しも、より効いてくる。常に裏を狙っている岡崎だけでなく、両ウイングやトップ下もスペースメイキングを意識した動きを取り入れていくべきだろう。
 本田と岡崎はチーム戦術の課題を述べたが、個々のプレー精度や判断力の重要性を強調したのは香川だ。
 
「どこが空いているとか、そういう話はしていました。特に前半はバタついていたので、もっと簡単にボールを回せていたらチャンスもあったんですけど、そこはミスもあったりしたので、そういうところを話し合いながらやるようにしました」
 
 攻撃が停滞した前半、香川はチームメイトに声をかけ、身振り手振りをまじえて落ち着きを促した。「相手のプレスやグラウンド状況のやりにくさがあったので、みんなタッチのズレがあった」というミスが続いたことに加え、3列目以降の選手たちが中央にくさびを打ち込めずに、背後へのロングボールやウイングにつけるパスに終始したからだ。
 
 なにも、ロングボールやサイドへの展開が悪いと言っているわけではない。下手にくさびを打ち込んでボールを奪われ、カウンターを受けるリスクを回避する選択も時には重要だ。とはいえ、バイタルエリアにスペースがあったシリア戦の状況を踏まえれば、CFやトップ下を有効に使った攻撃にシフトしても良かった。実際に、後半のパフォーマンスが、その有効性を裏付けている。
 
 ハーフタイムに修正できたのならば、選手たちがもっと早い段階で判断していれば、前半から日本ペースに持ち込めたかもしれない。香川が重視する判断力は、選手個々の戦術眼とも言い換えられるもので、日本代表がさらに進歩するためのひとつのキーワードになっていくかもしれない。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェストWeb)