植えているだけで虫除け効果がある蚊取り線香の原料「除虫菊(シロバナムシヨケギク)」北の魔女/PIXTA(ピクスタ)

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 地球温暖化のためなのか、住宅やさまざまな建造物の気密性が上がっているためか......。近年、小バエや蚊など、人にとって不快な虫の発生シーズンがどんどん長くなり、ほぼ1年中生息している印象さえある。

 そんなときに頼りになるのが、室内用の防虫剤や殺虫剤。定番のエアゾールや電池式蚊取りなどに加え、最近は手軽でニオイも煙もないワンプッシュ剤も人気だ。

 だが、便利とはいえ、赤ちゃんや子どもがいる家庭では使うのをためらう人も多いだろう。一定の基準のもとに安全性が保証されてはいるものの、こうした懸念に答えは出ないのかもしれない。

 それに関して先日、気になる研究結果が明らかにされた。それによると、室内で殺虫剤に曝露した子どもは、白血病やリンパ腫を発症するリスクがやや高いという。

 また、屋外で除草剤を曝露することと白血病リスクの間にも、わずかだが関連性が認められたというのだ。アメリカの小児科学会誌『Pediatrics』(10月号)に掲載された。

16の論文の分析でリスクが明らかに

 米・ハーバード大学公衆衛生学部准教授のChensheng (Alex) Lu氏が中心となって行われた今回の研究は、1993〜2013年に実施された16件の国際的な研究の結果を統合したもの。いずれも、がんの子どもと健康な子どもの親への問診を行い、過去の殺虫剤曝露との関連性について評価した研究論文だ。

 その結果、室内用殺虫剤の曝露があった子どもは、白血病もしくはリンパ腫になるリスクが43~47%高いことが分かった。一方、屋外用の殺虫剤とがんとの関連は認められなかったという。また、除草剤に曝露した子どもの白血病のリスクは26%高くなり、わずかながら関連性が認められた。

 小児がんはまれな疾患であり、米国がん協会(ACS)の推定によると、米国で今年何らかのがんと診断された15歳未満の小児は1万400人未満。血液のがんである白血病およびリンパ腫は、小児がんのなかでもよくみられるものだ。

 米・ニクラウス小児病院の小児腫瘍医Ziad Khatib 氏によれば、この結果は本来1万人に1人の白血病発症リスクが、1万人あたり1.5人に増加するということを示しているという。そうした意味では「わずかなリスク増加かもしれない。しかし避けられる危険因子だ」と付け加えている。

 この知見は、殺虫剤が直接がんの原因となることを意味するものではない。仮にそうだとしても、「どの程度曝露すれば発症するのかなどは明らかになっていない」と研究を行ったLu氏は言う。

しかし「それでもすぐに対策をすることが賢明。このことを親たちに知ってもらい、各自で最善の判断をしてもらうことが重要だ」と強調している。

正しい知識で子どもを守りたい

 では、殺虫剤をなるべく使わないようにするにはどうしたらいいか。まず基本は、虫のエサになる食べ物を室内に置かないこと、生ゴミはしっかり密封すること。ボウフラの温床となる水たまりをベランダや庭に作らない。さらに害虫用の捕獲器を使うなどの選択肢もある。たとえば、最近ネットで話題の「酒と洗剤を使ったハエトラップ」など、身近な物を利用した知恵は少なくない。

 ハーブ類に含まれるL-メントールや柑橘類に含まれるD-リモネンは、多くの昆虫が嫌う天然の虫除け成分だ。ペパーミントやオレンジ、クローブなどを精製したエッセンシャルオイルにエタノールを添加して、香炉で焚いたりスプレーにして撒いたりすることも効果がある。

 今回の研究グループは「子どもは学校、公園、遊び場など自宅以外で殺虫剤に曝露することもあるため、そうした場所で殺虫剤の使用を制限することにも意味がある」指摘している。

 日本でも、たとえば東京都環境局が「化学物質の子どもガイドライン」を策定。施設管理者に対して、殺虫剤散布の情報提供や、散布時の子どもへの接触を防ぐ方法、さらに薬剤を利用しない防除方法の推進も行っている。
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/chemical/chemical/kids/index.html

 子どもたちが屋外でどんな化学物質に触れる可能性があるかを、こうした行政資料で知っておくことは無駄ではない。今や、防虫剤や殺虫剤を始めとする化学物質は私たちの生活になくてはならないものだ。むやみに怖がるのではなく、正しい知識を持ってリスクを回避することが大切ではないだろうか。
(文=編集部)