森川葵連続ドラマ初主演、哀川翔がクマ「テディ・ゴー!」見どころを原作から読み解く

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「もしかしてお前、俺の声が聞こえるのか」(クマの編みぐるみ/哀川翔)

今夜スタートするドラマ「テディ・ゴー!」(フジテレビ・土曜夜11:40-0:05)。森川葵演じるヒロイン・山瀬和子と、クマの編みぐるみが協力しあって事件解決に挑む。そこだけ聞くと、ほっこりファンタジーのようだが、このクマの“中の人”は熱血おじさん刑事(天野康雄)。事件を追ううちに殉職し、気付いたらクマになっていたという。演じるのは“Vシネマの帝王”・哀川翔である。アニキ!


原作は加藤実秋の小説「テディ・シリーズ」(PHP文芸文庫)。2010年10月に刊行された『アーユー・テディ?』で出会った和子×康雄のコンビは、その後も『テディー・ゴー!』『マイ・フェア・レディ』『クマ刑事』と活躍を重ねている。原作小説のカバーイラストは『ソラニン』『おやすみプンプン』などで知られるマンガ家の浅野いにおが担当。


原作小説では、和子は康雄と出会ったせいで、総菜工場の経営者夫妻の心中事件に巻き込まれる。一方、ドラマ版では、学習塾での“人探し”を頼まれる。ドラマオリジナルの設定もふんだんに登場しそうな今回の作品。原作と見比べながら、見どころを探ってみたい。


クマになってもダンディにならざるを得ない哀川翔アニキ


原作の康雄は昭和24年生まれの丑年、59歳。遺影に直面したときの、和子の描写がひどい。《M字型に禿げ上がった頭に、歪んで日焼けした楕円形の頭。焦げた空豆のようだ》。まだ続く。《目は小さいのに、鼻は大きく横に広がっているという絶望的なパーツ形状》。まだまだ続く。《そのくせ、コントの泥棒メイクのような青白い髭の剃り跡に囲まれた口には満面の笑みを浮かべ、太く短い指でピースサインまで掲げている》といった具合だ。


そんな康雄像を思い浮かべた上で、ドラマ版のクマ/康雄を見ると、戸惑う。絶望どころか希望に満ちている。50代で、この身のこなしはさすが帝王。首に巻いた赤のペイズリー柄のバンダナもキュートだし、髪もふさふさだ。かっこいい。かっこよすぎますよ。アニキ! まあ、クマだけど。


あの風変わりな山瀬一家はどこまで登場するのか


原作の和子は”ほっこり生活”を夢見るフリーター女子。根気がなくて、すぐに仕事をやめては「ほっこりだの、おしゃれだの浮ついた言葉で乗り切れるほど、世の中甘くないわよ」と母親に叱られてばかりいる。


でも、母親は母親でヘンテコな「エコ」「リサイクル」にハマり、ヒマさえあれば牛乳パックやらペットボトルやらを使った生活雑貨の創作にいそしんでいる。兄はヘビメタオタクの29歳。父親は無口で、家ではほとんど口をきかない。家族の問いかけに対しては《喉の奥で意味不明の声で呟くだけ》《げっぴや放屁などの生理現象で答えることも珍しくない》という変わった人だ。


さらに父親は《薄くなった頭頂部の毛髪を無理矢理七三分けにして撫でつけて》おり、しょっちゅう娘の和子に「お父さん、落ちた髪はちゃんと拾ってって、いつも言ってるでしょう。(中略)ホラー映画じゃあるまいし、きしょいったらないんだから」なんて言われたりもする。お父さん! 


ただ、現時点で人物相関図にいるのはお母さんの厚子(峯村リエ)だけ。お兄ちゃんとお父さんは割愛されてしまうのか。原作を読んでると、もう、お父さんが出てくるたびに、あの人しか浮かばないのだが。出てこないのかなー。温水洋一さん、カモン!(大変申し訳ありません)

イケメン担当・冬野はどこまで残念なのか


康雄の後輩刑事であり、物語に華を添えるイケメン担当・冬野を演じるのは、平岡祐太。『花咲舞が黙ってない』では、親の権力をカサに来て偉そうに振る舞うイヤ〜なバカぼっちゃん・伊丹を演じていた。あのボンボンも残念なイケメンだったが、原作の冬野も予想の斜め上をいく残念王なのである。


《カッコいい。でも、ちょっとキザかも》と、見とれたはずの和子を、《だからなに? あなたの週末の予定なんか聞いても仕方がないだけど》と冷ややかにさせる。あのマシンガンのように繰り出される残念エピソードが、一体いくつ盛り込まれるのか。活かされるとしたらどれなのか。ヒロイン×クマ(康雄)×冬野の掛け合いも楽しみだ。
(島影真奈美)