キスやセックスに思わぬ効果?

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2015年のノーベル医学・生理学賞に北里大学特別栄誉教授の大村智さんが選ばれ、日本中が祝賀ムードに包まれた。その半月ほど前、もう一人の日本人が「著名な」医学賞を受賞した。「人々を笑わせ、考えさせてくれる研究」に対して贈られる「イグノーベル賞」だ。

豊かな感情でアレルギーをなくしたい

ノーベル賞のパロディ版と言われる「イグノーベル賞」では、毎年、医学賞や平和賞、経済学賞、文学賞などの10分野について選考が行われる。2015年は「情熱的なキスが皮膚のアレルギー反応低減などの生物学的効果をもたらす」ことを実証した大阪府寝屋川市のクリニック院長、木俣肇さんが医学賞を受賞。同賞は、キスに関する別の研究を行ったスロバキアの研究チームにも授与され、ともに「激しいキス(その他の親密な人間相互間の行動)の、生物医学的な利益や結果を研究しようとした」ことが評価された。日本人の受賞は今回で9年連続となる。

論文は2003年に発表されたもので、自身のブログによると、木俣さんは以前から人間が本来持っている自然治癒力に関心があり、アレルギー反応も人の豊かな感情で減弱できないかと考えていたという。2001年にはチャップリンの映画『モダン・タイムス』を観て笑うと皮膚でのアレルギー反応が減弱することを発表している。「笑い」以外の感情でもアレルギー反応が減弱できないかと考えた木俣さんは「愛情」に注目し、キスで実験を試みた。

アトピー性皮膚炎の患者とアレルギー性鼻炎の患者に、それぞれパートナーと個室で30分間キスをしてもらい、その前後のアレルギー反応を調べた。その際、BGMとしてさまざまな映画の主題歌(ラブソング)を流した。また、対照として30分間キスなしで抱擁してもらい、同じようにアレルギー反応を調べてキスをした場合と比較した。その結果、キスをした後では、いずれの患者においてもダニやスギ花粉に対するアレルギー反応が減弱した。一方、抱擁だけでは変化は見られなかった。木俣さんは「症状が改善するところまでは検討していない」としているが、論文を読んだアレルギー性鼻炎の英国人カップルは、30分間キスをしたことで症状が改善したという。

キスとアレルギーの関係とは

木俣さんは別の研究で、セックスにも同様の効果があることを確かめている。ただ、なぜ笑いやキス、セックスがアレルギー反応を減弱させるのか、詳しい理由はわかっていない。

アンチエイジング医師団のメンバーで皮膚科専門の山田秀和医師は、「これらはストレスの問題に関係しているのではないかと思います。ストレスがかかると自律神経のバランスが崩れ、花粉症やドライアイが悪化することがあります。自律神経には交感神経と副交感神経があり、緊張すると交感神経が、リラックスすると副交感神経が働きます。笑ったり愛情を感じたりしてリラックスすることで副交感神経が優位になり、アレルギー反応が減弱するのではないかと考えられます。また、食欲や性欲など人間の欲求は副交感神経が司っています。キスやセックスの効果もそのためでは」と推測する。

花粉症が改善したという英国人カップルは「症状はよくなったが、唇と舌がしびれた」とネット上に感想を投稿している。その後、効果が持続しているかどうか定かではないが、試してみる価値はあるかもしれない。花粉症の人は、来春、スギ花粉が飛び始めたら、パートナーとしびれるほど熱烈なキスを交わしてみてはいかが。[監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]

参考論文
Kissing reduces allergic skin wheal responses and plasma neurotrophin levels.
DOI:doi:10.1016/j.physbeh.2003.09.004 PMID:14637240

(Aging Style)