来年1月から本格運用が始まるマイナンバー(社会保障と税の共通番号)制度。各行政機関や民間企業で膨大なシステム構築が必要となり、システム業界は大きな特需に沸いている。こうしたシステム変更によって日本社会の仕組みはどう変わっていくのか、「家計の生活相談センター」の藤川太氏が解説する。

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 これまで日本の税制は得られた収入から経費などを差し引いた所得(利益)に対して課税する仕組みでした。いわば資金のフローに焦点が当たっていた。それが将来的には、マイナンバーによって資産というストックに対しても税金をかけることが可能になります。これは大きな転換です。

 そのような資産課税の強化が進めば、どうなるか。たとえば銀行の預金残高に対して課税する「預金税」などが現実のものになるかもしれません。そうなれば税金によって元本が目減りする可能性まで出てきます。

 仮にそうなると、資産を寝かせておくくらいなら、少しでもお金を使っておこう、リスクがあっても投資する方が得といった考えになっていくでしょう。国が進めてきた「貯蓄から投資へ」の流れが加速するわけです。

 すでに社会保障の分野では、収入ではなく、資産を対象にした給付制限をする動きが始まっています。特別養護老人ホームなど介護保険施設での食費や居住費は、年金などの収入が低い人は負担軽減されてきましたが、いまや各自治体は利用者に預貯金通帳のコピー提出を求め、資産の多寡によって給付を絞っていこうとしています。

 実際、海外、たとえば豪州では、高齢者の所得と資産のチェックが毎年入り、一定基準を超えると年金がもらえないようになっています。

 マクロの視点で見ると、その狙いはより鮮明になってきます。これまで日本では国家から国民個人に所得移転が行なわれてきました。しかし、国家財政がいよいよ立ち行かなくなってきて、その構図を逆転させようとしています。マイナンバーという“とりっぱぐれをなくす”政策によって、国家は収入増、支出減に向かう一方、個人には収入減、支出増に向かわせることで、これまでとは逆に個人から国家に所得移転をしようとしているのです。

 国家財政の立て直しが急務である以上、その流れが今後ますます加速するのは間違いないでしょう。

 もはやあらゆる資産がガラス張りになるような時代が近づいています。どこかに逃がそうとしたり、隠したりしようとしてもムダな労力を使うだけです。小遣い稼ぎ程度だったサラリーマンの副業や投資も間違いなく捕捉されます。

 社会の仕組みが大きな転換点を迎えている以上、資産を減らさないようにするためには小手先だけの運用や節税は、もう通用しません。何か問題が生じてペナルティを科せられるような損をしないためにも、正しい知識を身につけて、公明正大な資産防衛を心がける必要があります。

 たとえば少しでも節税したいなら「ふるさと納税」をするとか、利用できるものはとことん利用する。正々堂々とやればいい。そんな心構えをいままで以上に持つことが求められています。

※マネーポスト2015年秋号