中高生に化粧など言語道断(shutterstock.com)

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 「最近、患者さんを見てつくづく思うのは、15〜16歳の女性の顔の肌の変化です。皮膚の張りがなくなり、中高年のようにカサカサの肌になっています。老化がすでに始まっているのでしょうね」

 都内のある大学病院皮膚科の医師が、このような話を聞きました。皮膚科医によると、そうした患者の多くは小学生低学年の頃から化粧をしていた子が多いといいます。

 最近、化粧の低年齢化が非常に目立っています。小学校低学年で化粧をする子も珍しくありません。街中では茶髪、ピアス、マニキュア、メイクと、テレビアイドルと同じような化粧をした子をたくさん見かけます。100円ショップに行けば、海外製の「プチプラ」化粧品が氾濫しています。ファンデーション、口紅、アイシャドー、チークなどの化粧品が小遣いでも気楽に買えるとあって、いつも多くの子どもたちで賑わっています。

 皮膚科に来ている15〜16歳の患者も、こうした化粧品を小中学生の頃によく使っていたということです。新陳代謝がもっとも活発な小中学生の頃は、皮膚細胞も常に若々しい。皮脂の分泌も盛んで、そのためニキビもできるのです。そんな時期に何種類もの化学物質を混ぜ固めた化粧品を塗っているのですから、ミドルティーンの若さで肌の老化が始まってしまうのです。

 大学病院の皮膚科医が肌の老化を指摘した今の15〜16歳の子たちが、化粧を始めた小学校低学年の頃、東京都が子ども向け化粧品・染毛剤の安全性に関する調査を行っています(2008年東京都生活文化局)。調査の結果、12歳以下で化粧経験がある女の子のうち2.2%に皮膚障害危害があったことが判明しています。今、大学病院皮膚科に治療のため来院している15〜16歳の女の子もこの2.2%の中に含まれていたのでしょう。

 調査結果を踏まえ東京都は、子ども用化粧品は大人用化粧品と成分は同じであるから取り扱いに注意すること、子どもの染毛剤の使用は止めることなどを保護者に注意喚起しました。あわせて、一度アレルギーが出ると次に同じ症状が出る危険性が高くなることも発表しました。

化粧品被害が社会問題となった「顔面黒皮症事件」

 化粧品による健康被害では、かつて全国で健康被害者が続出した「顔面黒皮症事件」がありました。1970年代に入って、全国で顔面が黒く変色してしまった女性が相次いだのです。原因は化粧品に添加されていた合成界面活性剤、合成着色料、防腐剤、保湿剤などの化学物質です。被害者たちは集団で、資生堂、ポーラ、メナードなどの大手化粧品会社を訴えました。1977年に提訴された「大阪顔面黒皮症裁判」と言われる裁判は、1980年に和解となりました。和解といっても、実質的に原告である化粧品被害者側の勝利でした。

 化粧品被害者(原告団)のひとりの主婦(当時41歳)に取材したことがありますが、その時のことを今でも鮮明に覚えています。その主婦は、待ち合わせの喫茶店に顔半分が隠れる深い帽子を被って来ました。帽子をとると顔は黒いシミが一杯に広がっていました。顔面黒皮症を初めて見て、唖然とするしかありませんでした。主婦は言いました。

 「もう地獄のような毎日です。まさか化粧品でこんな目に遭うなんて思ってもいませんでした。皮膚科に行って治療してもまったくよくなりません。ただ、ノーメークでいると少しは良くなっていきます。でも、シャンプーやリンスを使ってもまた元の状態に戻ってしまうのです」

 顔面黒皮症の被害者は、小学生低学年から化粧をしていたわけではありません。それでも取り返しのつかない被害にあったのです。化粧品被害は、その後も後を絶ちません。つい最近もカネボウの美白化粧品で重大な健康被害が出たばかりです。

ますます進む化粧の低年齢化

 今いちばん危惧されるのが、男女を問わずますます進む化粧の低年齢化です。

 大人の化粧品も子ども用の化粧品も、成分は同じと、2008年に東京都は発表しています。しかし、100円ショップで売られている子ども用化粧品には、大人用より危険な成分が使用されているものがかなりあります。100円ショップの製品は、大半が中国製か北朝鮮製(中国経由で輸入)です。発がん性が指摘されている合成着色料を使用した化粧品もあります。また、明らかに防腐剤や殺菌剤を使用していると思われるのに(何日も放置してもまったく腐敗しない)、何の成分表示をしていない製品も見受けられます。

 今、健康被害が出ていなくても、何年か後には肌がぼろぼろになって泣いている少女たちの姿が目に浮かびます。お父さん、お母さん、愛するお子さんに100円ショップの子ども用化粧品の使用だけはすぐにやめさせてください。


郡司和夫(ぐんじ・かずお)
フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。