盛りあげよう!東京パラリンピック2020(36)

 次なる主役は、車椅子バスケットボールだ。9月のアジア選手権で3大会ぶりの五輪切符を獲得したハヤブサジャパン(バスケットボール日本代表)女子、18年ぶりの4強入りで最終予選に望みをつないだハヤブサジャパン男子。その躍進ぶりに、もっとも刺激を受けているのが、車椅子バスケットボール日本代表に違いない。

 10日から、リオパラリンピック出場をかけた「三菱電機2015 IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」が、千葉ポートアリーナで始まる。

 今大会、男子は3枚のリオ切符を争奪する。出場する12ヵ国が2つに分かれて予選リーグを行ない、それぞれのプール上位4チームが決勝トーナメントに進出。準々決勝、準決勝、決勝、3位決定戦を戦う。

 アジアオセアニア地区の勢力図は、オーストラリアが頭ひとつ抜けており、残る2枠をイラン、韓国、日本が争う三つ巴の展開が予想されている。

 日本のキャプテンであり、エースでもある藤本怜央(れお)は、「昨年10月のアジアパラ競技大会で日本は2位となり、韓国にアジア王座を譲ってしまった。まずは韓国を倒し、アジアチャンピオンに返り咲くことが目標。その先にはリオの出場権が必ずある。決して楽観視はできないけれど、期待していてください」と力強く語り、瞳の奥に自信をのぞかせた。

 日本は、総当たりの予選リーグでその韓国と激突。最大のライバルから勝利をもぎ取り、一気にリズムを掴むつもりだ。また、苦手としていた体格のいいイランとは別プールで、順当にいけば決勝トーナメントで対戦する。昨年のアジアパラでは、準決勝でイランにオーバータイムの末、10点差で勝利しており、これがチームの明るい材料になっている。

 車椅子バスケットボールは夏季パラリンピックの花形競技。アジアオセアニア地区で3位以内に入り、リオへの出場権を獲得すれば、11大会連続の出場となる。今大会はライバルたちのレベルアップにより、厳しい展開が予想されるが、2020年東京大会での活躍につなげるためにも、是が非でもリオの舞台を踏んでほしい。

 そんな日本のキーマンは、ドイツのブンデスリーガでプロ選手として活躍する香西宏昭(こうざい ひろあき)だ。日本国内では、ロンドン以降指揮を執る及川晋平ヘッドコーチのNO EXCUSEに所属しており、戦術理解にも長(た)けている。パスもドリブルもシュートもできる、チーム髄一のオールラウンドプレーヤーで、エース藤本とともに得点の取れる存在だ。

「地元の千葉での開催なので、多くの人に自分たちの緻密な車椅子バスケットを見てもらいたい」

 そう語る香西の爆発力に期待がかかる。

 そして、やはり大黒柱の藤本の出来もカギになる。

「僕にはシュート力で代表に呼ばれている責任がある。軸となるオフェンスで安定したパフォーマンスを見せ、チームに必ず貢献したい。シュート確率70パーセントを目標に意識高く取り組んでいきたい」と語った藤本。2014年9月から、香西とともに海外にも挑戦し、当たり負けしない身体づくりにも取り組んできた。

「ロンドン以降、自分が中核になり、自分の出来次第で勝敗が決まるようなポジションになった。ロンドンは9位に終わり、このままリオに行ったら同じことを繰り返すのではないかと危機感を抱き、海外にも行った。自分がうまくなって勝てるというのが日本の勝因になるなら、自分ががんばるしかない」と話し、すべてはリオを見据えての決断だったと振り返る。

 さらに、及川ヘッドコーチが「大会中に成長する若手を入れることで、周りも刺激され、チームの成長につながる」という狙いで選出した最年少の鳥海連志(ちょうかい れんし)も「物怖じせず自分がチームを引っぱっていくような気持ちで臨みたい」と頼もしい。

 4年前のロンドンパラ予選で日本は、2枠だった出場権を韓国と準決勝で争った。試合終了まで残り30秒で1点差に迫られながらも、日本が勝利。ロンドン切符を掴んだものの、まさに薄氷の勝利だった。あの緊張感あふれる試合は、会場にいた筆者も忘れられない。

 昨年7月の世界選手権の順位は、6位韓国、8位がイラン、9位が日本だった。現在のアジアの勢力図は4年前以上に拮抗している。今大会は、残り1秒まで勝敗のわからない緊迫した試合が続くはずだ。

 女子もリオ切符は日本、オーストラリア、中国の3ヵ国中1枚のみ。車椅子バスケットボール日本代表には井上雄彦の人気コミック『リアル』よりもリアルで熾烈な戦いが、千葉ポートアリーナで待っている。

瀬長あすか●文 text by Senaga Asuka