不振だった原口と比べると、トップ下の香川や右ウイングの本田は、一定の成果を挙げたと言えるかもしれない。パスの供給を得られなかった前半はともかく、距離感が改善された後半はふたりを起点に厚みのある攻撃ができた。
 
 キレのあるプレーで岡崎の2点目をアシストした香川の働きもさることながら、中央へ寄った際の本田のプレーも効果的だった。香川と“使い使われ”の良い関係を築き、ゴールに迫った回数は、アフガニスタン戦に比べても多かったのではないだろうか。
 
 本田自身が「後半は、僕が中央に入らないとできないプレーを何度か見せられました」と言うように、精度の高いポストワークやスルーパスで、いくつかの決定的なチャンスを作れている。こうした中央に寄った攻撃と、ピッチを広く使ったサイド攻撃を臨機応変に併用できるようになれば、攻撃のグレードは一段上がるだろう。
 
 途中出場で清武が入った後は、本田がトップ下に入り、清武が右ウイングを務める時間帯もあった。その際の連係も比較的スムーズで、清武を上手くチームに組み込めた印象だ。2列目ならどこでもこなすユーティリティプレーヤーの存在は貴重で、今後も切り札のひとつとして重宝されるかもしれない。
 
 最前線の岡崎について言えば、まだまだ満足できるレベルとは言えない。これまでの試合と同じように、シリア戦でも最終ラインからロングボールを放り込まれる回数が多かったが、それを収められなかったからだ。
 
 とはいえ、そもそも彼はターゲット役として勝負するタイプではない。先制PKを獲得したシーンのような裏を取る動きや香川のクロスに合わせたニアへの飛び込みのように、DFとの駆け引きを制してゴールに絡むのが、このストライカーの真骨頂だ。
 
 本来であれば、CFの特長から逆算した攻撃も視野に入れるべきだが、ハリルホジッチ監督が志向するのは、今後も縦に早い攻撃が中心になるはず。試練の時を迎えている岡崎が、どうやってアジャストしていくか見ものだ。
 
取材・文●五十嵐創(サッカーダイジェストweb編集部)