シリア戦で真価を証明した香川真司【写真:Getty Images】

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鮮やかアシストの香川、研ぎ澄まされた観察眼

 日本代表は8日、ロシアW杯アジア二次予選でシリア代表と中立地オマーンで対戦し、3-0で勝利した。この試合で輝きを放ったのは香川真司だ。2点目のシーンでは相手を見事に抜き去り、鮮やかなアシストを決めた。以前はゴールへの呪縛に苦しむ時期もあったが、現在はチャンスの起点になるという重要な役割を担っている。

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 右のリスタートから中央で受けた宇佐美貴史が右足で展開すると、相手DFの出した足にあたりながらも、左のファーサイドに流れていた香川真司に通った。そこに右SBのアル・シャブリが素早く寄せてきたが、香川は左足でボールを落ち着かせると、縦にボールを出したところから鋭くインを突き、相手のスライディングをかわしてエリア内に侵入した。

 ゴール前には香川の他に岡崎慎司、本田圭佑、酒井高徳、吉田麻也の4人が入っており、シリアのフィールド選手も5人が構えていたが、香川とニアの吉田が相手ディフェンスとGKを引き付けたことでエアポケットの様に空いた中央スペースに岡崎が入り込む。香川はタイミングを逃さず右足でパスを出し、チームにとって2点目となる鮮やかなゴールを演出した。

「相手をうまくかわした時点で、岡ちゃん(岡崎)がうまく入ってくれた。あそこは空いていましたし、そこに入ってくれて良かったと思います」

 そう振り返る香川だが、敵陣中央のディフェンスが固くなる状況でサイドを崩して決定的なチャンスに結び付けるプレーはかなり強く意識していた様だ。このシーンはリスタートの流れだったが、特に後半はワイドにポジションを取りながら周りの選手とパスをつなぎ、相手のディフェンスに揺さぶりをかけるプレーが際立っていた。

 この試合を決定付けたアシストは香川の技術とセンスが見事に発揮されたものだが、もう1つ忘れてはいけないのが研ぎ澄まされた観察眼だ。「右SBの選手はすごく一発で来ていたので、しっかりと見極めてプレーできました」と振り返る香川は強引にではなく、相手の対応を予測した上で縦から中に突破する形をイメージしていたのだ。

苦しんだゴールの呪縛…現在はチャンスの起点に

 まさしくシリア戦のハイライトとなるプレーだったが、厳しい環境の中でも試合を通じて攻撃のリズムを作り、守備でもプレスから引いた位置でのセカンドボールまで、幅広くプレーに絡んでいた。相手GKが痛んだところで給水のタイミングができると、ベンチから出てきた丹羽大輝らと話をして何かを確認していた。試合後に聞くとこんな回答が返ってきた。

「どこが空いているとか、そういう話はしていましたし、前半ちょっとバタついていたので。ボールを回していたらチャンスもあったんですけど、そこはちょっとミスがあったりしたので、うまく話し合いながらやるようにはしました」

 1点目は長谷部誠の縦パスに岡崎が走り込みPKを獲得したが、後半には「プレスが弱まったり、中盤が空いてきたりしたので、ボールを出せるなっていうのが立ち上がりからあった」という攻撃イメージの共有ができており、この場面でも岡崎の背後を走って折り返しを受ける準備ができていた。

 一時期は周りのプレッシャーもあってか、ある意味でゴールの呪縛に苦しんでいた様にも見えた。しかし、現在は攻撃のリズムを作り、チャンスの起点になるという重要な役割があり、その先にゴールがあるというイメージの整理ができていることが発言からも分かる。

「ゴール前で引き出して呼び込む動きであったり、そういうのを増やしていかないといけないですし、パス出せるところではありますけどシュートで終わったりとか。そこは判断ですけど、そこは次の試合に向けて意識を持っていきたい」

 こう語る様に、もちろんゴールの意識は常にあり、彼の中でも課題であることは間違いないが、日本代表における彼のより本質的な価値を再認識させるシリア戦のパフォーマンスだった。

text by 河治良幸