ジョブズは「とてもよく働き、情熱的で、エクセレントな青年」だが...ATARI創業者ブッシュネル氏インタビュー:「ATARI GAME OVER」への道

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編集部より:この連載は1990年代以降ゲーム業界を渡り歩いた黒川文雄さんが往年の名ゲームメーカー、ATARIのゲームビジネスを検証するドキュメンタリー「ATARI GAME OVER」の日本語化に奔走する物語です。懐かしのゲーム機やゲームソフトだけでなく、アタリの創業者(正確には共同創業者)であるノーラン・ブッシュネル氏に突撃取材を敢行するなど、この連載だけでしか読めない内容を10回に分けてお届けします。今回は第7回。連載のまとめページはこちら。

連載「ATARI GAME OVER への道」もそろそろその終着点が近づいてきたようです。今回は私がロサンゼルスで単独インタビューを行ったアタリ創業者(正確には共同創業者)のノーラン・ブッシュネル氏のインタビューから今日のエンタテインメントの世界を生きる皆様へのメッセージを送ります。

ブッシュネル氏の功績その1--ビデオゲームビジネスの"父"

ブッシュネル氏がビデオゲームに関心を持ったのはMITのスティーブ・ラッセル氏が開発した『スペースウォー!』を見てからだと言います。

それをビジネス化したらどれだけ多くの人の耳目を集め、お金が稼げるだろうか。ブッシュネル氏はそう考えたようです。ただし、その当時は開発投資コストと収益のバランスが合わなかったために見送りました。そのうえでブッシュネル氏は当時先端だった電子系メーカー「アンペックス」に就職。そこで虎視眈々とビデオゲームでの起業を考えていたそうです。

一般に言われるところの「ビデオゲームの父」ということに関して私も聞きました。

「私がやったことはラッセル氏が研究開発したものをビジネスに転換したこと。つまりゲームビジネスの商業化という点においては第一人者であり"父"であることは間違いありません」(ブッシュネル氏)

年齢を重ねると「なんでも自分がやった」ということを声高に叫ぶ人がいる昨今、すべてを得たものの余裕なのか、老成ゆえのものかわかりませんが謙虚な答えに意外性を感じました。ブッシュネル氏の功績の一番はゲームを家庭に持ち込んだこと、そしてその産業を立ち上げたことが一番だったと思います。彼がいなかったら、任天堂、セガ、ソニーなどが立ち上げるコンピュータゲームビジネスの在り方も変わっていたのかもしれません。

ブッシュネル氏の功績その2--ジョブズを起用

ブッシュネル氏のもうひとつの功績が、名もなき市井の青年だったスティーブ・ジョブズをATARIの正社員として起用したことです。

こちらの写真にあるように「僕がジョブズに教えたこと」(飛鳥新社)を持ってブッシュネル氏との写真を撮影しました。ちなみに原題は『Finding the Next Steve Jobs』。次にジョブズを探すには? という内容です。当時のジョブズは「とてもよく働き、情熱的で、エクセレントな青年で、常に努力を怠らないことに魅力があった」とのこと。とはいえ、ブッシュネル氏曰く「スティーブはATARIの技術的なコピーをアップルのために持ち出したこともある」と笑いながら話してくれました。おそらくは憎めない関係性だったのではないでしょうか。

ジョブズがブッシュネル氏の薫陶やATARIという会社から影響を受けたことことは否定できません。ゲーム機や、そのコンテンツ、コンピュータビジネスなどを生み出したジョブズらに与えた影響は計り知れないと言えそうです。

「いまやゲームビジネスは10歳の子供でも始められる」

これは個人的な見解かもしれませんが、常にチャレンジャーという視点をもったブッシュネル氏の働きぶりは後進に大きな影響を与えているのではないでしょうか。ATARIからピザ・レストラン、そして現在は教育ソフトビジネスまで彼の興味と熱意は衰えることを知らない様子です。

私は今回の「ATARI GAME OVER」の制作過程においてブッシュネル氏に巡り合えたことをとても感謝しています。ブッシュネル氏らが属するビデオゲーム第一世代の関係者は日本でも徐々に現役を退いています。本来であればそうした関係者の知見やノウハウは宝です。そうした内容を話してもらう機会がなければいけませんが、その機会を十分に得られないうちに鬼籍に入った人もいると思います。

最後にインタビューからブッシュネル氏の言葉を引用しましょう。

「ゲームでビジネスをしたいと思ったら、今は10歳の子供でもできる環境になりました。友達を探し一緒に創ることもできます。まずは、自分からUnityやアンリアルエンジンなどのゲームプログラムを勉強すればいいのです。とにかく野心をもって今すぐ始めることです。『Just Do It!』することなのです。」

(ブッシュネル氏近影:写真撮影・黒川文雄)

筆者より:9月16日、DVD「ATARI GAME OVER」日本語版は無事発売いたしました。ネット販売分は初日に在庫切れになってしまい、お待たせした客様には大変申し訳ありませんでした。おかげさまで「ATARI GAME OVER」の販売は好調です。ありがとうございます。なかでも特典映像もご評価いただけております。引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

DVD「ATARI GAME OVER」好評発売中

「ATARI GAME OVER」日本語版予告編



黒川文雄(くろかわ・ふみお):1960年、東京都生まれ。音楽ビジネスやギャガにて映画・映像ビジネスを経て、セガ、デジキューブ、コナミデジタルエンタテインメントにてゲームソフトビジネス、デックス、NHNJapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどに携わり、エンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。顧問多数。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。株式会社ジェミニエンタテインメント 代表取締役「ANA747 FOREVER」「ATARI GAMEOVER」(映像作品)、「アルテイル」「円環のパンデミカ」他コンテンツプロデュース作多数。