DeNA・中畑清前監督【写真:荒川祐史】

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h2>優勝争いから脱落していたDeNAが犯したミス、“サヨナラ捕逸”はなぜ起こったのか

 セ・リーグは大混戦の末、ヤクルト、巨人、阪神がクライマックス・シリーズの出場権を獲得しました。オールスター前には首位に立つなど奮闘したDeNAは脱落していってしまいました。

 シーズン終盤、ベイスターズはミスが目立った印象を受けました。その中でも、ジュニア期、高校生の野球少年たちにも知っておいてもらいたい、状況判断の大切さについて、少し解説したいと思います。

  9月29日に行われましたタイガース−ベイスターズの試合の結末は象徴的なものでした。CS争いをしていた阪神と既に望みが消えていたチームの差を大きく感じました。

 3−3で迎えた9回裏の阪神の攻撃は、捕逸という呆気ない幕切れで終わりました。三上ー嶺井のバッテリーのパスボール。こういうケースで負けるのは良くあることですが、捕手の準備不足と投手の状況判断の甘さを感じました。

 投手、捕手とも、このケースで一番やってはいけないミスを2人が同様に犯してしまったという感じです。

 変化球が引っかかったような投球を後ろに逸らしてしまったのですが、おそらく捕手の想定は、低めのワンバウンドへの対応だけを意識していたようで、横への変化への対応が全く出来ていなかった。捕手側からすると、あの投球を前に止めるのは、確かに難しいとは思いますが、横へ逸れる投球への意識が希薄であったことは事実で、反応が悪かった。

いくら凄い選手でも、自分では想定外のエアポケットに陥ることがある

 一方、投手も、このように追い込まれた場面では、捕逸もリスクとして考えるべきで、低めにボールを投げる場合は、細心の注意を払うべきでした。ワンバウンドを投げるにしても「ホームプレートを外れるような球だけは絶対に投げてはいけない」と強く意識を持つ必要がありました。おそらく捕逸という結果を全く想定していなかったと思います。

 プロの試合など、何度も試合を重ねていると、慣れからか注意が薄れるのは仕方がないことかもしれません。ただ、勝つチームと負けるチームの差はこのようなところに出てくるものです。ここで、私が大事になってくると思うのは、スコアボードを振り返ること。当たり前ですが、イニング、アウトカウント、打順、得点差など今の状況が把握できます。

 緊迫する場面、緊張する状況においては、いくら凄い選手でも、自分では想定外のエアポケットに陥るということがあります。だからこそ、しっかりと状況を頭に入念に確認し、しなければいけないプレーを決断し、それに終始することが必要です。

 例えば、伝令です。甲子園でピンチの時、マウンドに選手が集まり、監督からの指示を共有している場面があります。できれば、この指示を共有した後にもう一度、スコアボードを見て状況を確認する行動を加えることで監督からの指示が深まります。

 以前、甲子園大会をテレビ観戦していた時、1死一、三塁というサヨナラ負けのピンチを迎えた場面がありました。守備側は、タイムを取って布陣を確認し、当然、内野手、外野手もバックホーム体制の前進守備を引きました。その後、前進守備をしている二塁手のやや横に打球が飛びましたが、上手く捕球しました。三塁走者はスタートを切っていたため、誰もがバックホームをすると思いましたが、一塁へ送球してしまい、サヨナラ負けを喫するという幕切れとなりました。

日頃の練習試合からスコアボードを振り返ることが大切

 そのセカンドの選手は守備がうまく、ミスなどは少ない選手だったそうです。試合後、「頭が真っ白になってしまった」という談話がありましたが、その心境は良く理解でき、改めて勝負の残酷さを痛感しました。通常ではそのようなエアポケットに入るというようなことをないでしょうし、気が利かないと務まらない二塁手というポジションを守る選手ですから、本当に何が起きたのか、何をしてしまったのか本人もその瞬間は分からなかったのではないかと思います。

 プロでも、高校生の名手と言われる選手でも、誰だって冷静さを欠くことはあります。それをいかに少なくするか、なくしていくかが、成長につながります。そのためには、日頃の練習試合からスコアボードを振り返り、状況を確認し、選択したプレーが正しかったのか否かを試合後に振り返り、確認していく作業が非常に大切になってきます。

 データベースを増やす、プレーの選択の精度を上げるという作業でしょうか。一瞬のプレーにおいては、監督やコーチは無力です。結局、プレーヤーの決断でしかありません。

 プロ野球は、これからクライマックスシリーズが始まります。プロ選手と言えども、緊張する試合が続きます。勝ち負けを楽しみながら、試合を見ることも一つですが、高校球児をはじめとしたアマチュア選手は、難しい試合において、プロ選手がどのような判断を自ら選択し、プレーを行っているのかを読み取りながら、更に「自分だったら」と自問自答しながら試合を観ることも、一つの楽しみ方かもしれません。

小島啓民●文 text by Hirotami Kojima

1964年3月3日生まれ。長崎県出身。長崎県立諫早高で三塁手として甲子園に出場。早大に進学し、社会人野球の名門・三菱重工長崎でプレー。1991年、都市対抗野球では4番打者として準優勝に貢献し、久慈賞受賞、社会人野球ベストナインに。1992年バルセロナ五輪に出場し、銅メダルを獲得。1995年〜2000年まで三菱重工長崎で監督。1999年の都市対抗野球では準優勝。日本代表チームのコーチも歴任。2000年から1年間、JOC在外研修員としてサンディエゴパドレス1Aコーチとして、コーチングを学ぶ。2010年広州アジア大会では監督で銅メダル、2013年東アジア大会では金メダル。侍ジャパンの台湾遠征時もバルセロナ五輪でチームメートだった小久保監督をヘッドコーチとして支えた。2014年韓国で開催されたアジア大会でも2大会連続で銅メダル。プロ・アマ混成の第1回21Uワールドカップでも侍ジャパンのヘッドコーチで準優勝。公式ブログ「BASEBALL PLUS(http://baseballplus.blogspot.jp/)」も野球関係者の間では人気となっている。