10月9日、いよいよNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)最後のシーズンが幕を開ける。

 今シーズンのNBLは計12チーム(※)の5回戦総当たり戦で行なわれ、1チームあたり55試合のレギュラーシーズンを終えたあと、来年5月から上位チームによるプレーオフが始まる。NBLは今シーズンで終了し、来シーズンからは「Bリーグ」として新たに幕を開ける。NBLの歴史に「最後の王者」として名前を刻むのは、はたしてどのチームか? シーズンの展望とともに、要注目の選手を紹介しよう。

※12チーム=レバンガ北海道、サイバーダインつくばロボッツ、リンク栃木ブレックス、千葉ジェッツ、日立サンロッカーズ東京、トヨタ自動車アルバルク東京、東芝ブレイブサンダース神奈川、アイシンシーホース三河、三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋、西宮ストークス、広島ドラゴンフライズ、熊本ヴォルターズ。

 まず、まっさきに名を挙げるべきは、リンク栃木ブレックスに所属する「Mr.バスケット」こと田臥勇太(PG)だろう。現在2シーズン連続でリーグアシスト王とベスト5に輝くなど、34歳となった今でも、その輝きはあせない。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 もし、「まだ田臥なの?」と思った読者がいるのなら、ぜひ会場に足を運んで、そのプレーを生で見てほしい。日本代表でも活躍したシューター古川孝敏(SF)や、入り出したら止まらない渡邉裕規(SG)へ、田臥から得点に直結するパスが繰り出されることは相手チームの誰もが知っている。それでも止められないのは、ディフェンスの想像を超える圧倒的な閃(ひらめ)きを、田臥が持っているからに他ならない。きっとその目で見れば、田臥のノールックパスだけでチケット代の価値はあると思えるはずだ。

 また、千葉ジェッツに新加入した富樫勇樹(PG)も見逃せない選手だ。2014年10月、田臥勇太に続き日本人ふたり目となるNBA選手契約をダラス・マーベリックスと結び その後は傘下のテキサス・レジェンズの一員としてDリーグ(※)で25試合に出場。今年の夏はイタリアのセリエAに所属するディナモ・サッサリと契約していた。

※Dリーグ=NBAデベロップメント・リーグの略称。将来のNBA選手を育成する目的で発足。

 身長167センチの富樫は、同じPGの田臥(173センチ)よりも低い。しかし、圧倒的なスピードとスキルを有し、特に長身プレーヤーのブロックをかわすために高いアーチをかけるフローターシュートは必見だ。本人曰く、「相手がどれだけデカくても、ブロックされる気がしない」というショットは、相手チームにとって脅威となるだろう。

 今シーズンの千葉ジェッツは、かつて日本代表チームを率いたジェリコ・パブリセビッチをヘッドコーチ(HC)として招聘。さらに、ロサンゼルス・レイカーズなどNBAで9シーズンプレーしたブライアン・クック(PF)の補強にも成功した。積極的な動きから、王座を狙う本気度が伝わってくる。

 ただ、王座に最有力なのが昨シーズンのNBL覇者――アイシンシーホース三河であることは揺るがないだろう。PGに日本代表の橋本竜馬、控えに柏木真介。SGに日本最高のスラッシャー比江島慎、SFに日本No.1シューター金丸晃輔。そしてPFに38歳ながらローポストからの得点力はリーグ随一の桜木ジェイアール。さらに西宮ストークスから昨シーズンのリバウンド王、アイザック・バッツ(C)を獲得。すべてのポジションにリーグ屈指のプレーヤーが顔を並べており、ベストメンバーのアイシンが負ける姿は容易に想像できない。

 とはいうものの、各チームの特色が発揮されれば大混戦になることは間違いない。前出のリンク栃木や千葉ジェッツだけでなく、今シーズンのNBLはまさに群雄割拠である。

 昨シーズン準優勝のトヨタ自動車アルバルク東京は、将来の日本代表を背負う24歳の逸材・田中大貴(SF)や、正確無比なシューター松井啓十郎(SG)の3ポイントが大きな武器だ。さらに、アシスタントコーチだった33歳の伊藤拓摩がHCに就任し、新たな風をチームに送り込む。伊藤HCはアメリカのモントロス・クリスチャン高校でコーチングを学び始めたという異色の経歴を持ち、若いHCがどんなスタイルでシーズンに挑むのかも必見だ。

 昨季のレギュラーシーズンでリーグ最高勝率(.833)を記録した日立サンロッカーズ東京も、虎視眈々とNBLラストシーズンでの頂点を狙っている。プレーオフ・セミファイナルではアルバルクに敗れたものの、日本代表の大黒柱・竹内譲次(PF)を中心に、アイラ・ブラウン(PF)、ジョシュ・ハイトベルト(C)のインサイド陣はリーグ屈指。今シーズンは猛烈な勢いで巻き返してくるだろう。

そして一昨年のリーグ覇者だった東芝ブレイブサンダース神奈川も、昨シーズンの雪辱に燃えている。プレーオフ・クォーターファイナルで敗退したのは、主力の外国人選手が相次いで故障離脱したため。2年連続で得点王に輝き、「リーグNo.1外国人選手」と評されるニック・ファジーカス(C)が今シーズンもチームを牽引する。故障などで離脱者なくシーズンを過ごせれば、打倒アイシンの一角となるのは間違いない。

 三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋には、過去に4年連続で得点王になったこともある日本屈指のスコアラー川村卓也(SF)が新たに加わった。日本初の高卒プロ契約選手として注目を集めた「オフェンスマシーン」が、どれほど暴れまわるか注目だ。また、45歳となった今シーズンも現役続行が決定したレバンガ北海道の「レジェンド」折茂武彦(SG)の勇姿も、まぶたに焼きつけておきたい。

 そして「元祖Mr.バスケット」、佐古賢一HCが率いる広島ドラゴンフライズからも目が離せないだろう。戦力的には上位陣と差があるものの、佐古HCの勝負強さ・勝負勘は現役時代と変わらない。今シーズンも何かをやってくれる予感がただよう。

 ただし、広島ドラゴンフライズをはじめ、サイバーダインつくばロボッツ、西宮ストークス、熊本ヴォルターズの4チームは、来年の秋からいよいよ始まるbjリーグとの統一新リーグ「Bリーグ」で、初年度は2部に所属することが決定している。この4チームがモチベーションを高く保ち、リーグ上位に顔を出すようなことがあれば、さらにドラマチックな展開となる。

 ついに始まるNBLのラストシーズン――。最後の王者は、同時にBリーグの初代王者にもっとも近い存在となる。また、今シーズンを沸かせた各チームのエースたちは、日本代表チームの一員として来年7月に開催される世界最終予選に集結し、アンドリュー・ウィギンス(ミネソタ・ティンバーウルブズ/SF)を擁するカナダ代表や、トニー・パーカー(サンアントニオ・スパーズ/PG)が率いるフランス代表としのぎを削ることになる。今シーズンのNBLは、日本バスケットボールの今と未来をつなぐ大事な1年。選手にとっても、ファンにとっても、きっと忘れられないシーズンになるはずだ。

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro