いよいよ大一番、W杯アジア2次予選のシリア戦(10月8日、中立地のオマーン開催)が行なわれる。これまでの予選の結果(シリアが3戦3勝、日本が2勝1分け)を見てもわかるように、このグループは“2強3弱”。日本にとっては、1位通過に向けて確実にモノにしたい一戦だ。

ただ、いくらシリアが全勝しているとはいえ、冷静に見れば、力は日本が一枚上。アウェーではなく、中立地開催というのも有利に働く。おそらく引き分け狙いで守備を固めてくるシリアに対し、日本は焦らずじっくり攻めればいい。もちろん、今までの相手のように簡単にやらせてくれないだろうし、「絶対に勝たなければいけない」という気負いがミスを招く怖さはあるけど、普通に戦えれば負ける相手じゃない。

日本は2次予選の初戦で格下シンガポールにまさかの引き分け(0-0)。続くカンボジア戦(3-0)も勝ったものの内容的には消化不良。ただ、その悪い流れも、戦目のアフガニスタン戦(6-0)での大勝で断ち切れているはず。香川、岡崎、本田と決めるべき人がしっかり決めたのは大きいよ。

チームの中心となる欧州組は決して調子がいいとはいえない。本田や長友は所属クラブで十分な出場機会を得られていないし、岡崎も開幕当初の勢いがなくなっている。好調といえるのは香川くらいだ。でも、彼らはこれまでそんな状態でもシリアレベルの相手には結果を出してきた。大丈夫だろう。

むしろW杯出場に向け、本当に重要なのはその5日後に行なわれる親善試合のイラン戦(テヘラン)だ。

強豪とのアウェー戦はハリルホジッチ体制になってから初めて。FIFAランキング(9月3日時点)でアジア勢トップのイラン(40位)に対し、日本(58位)がどんな試合をできるか。最終予選のシミュレーションになる。久しぶりに、いいマッチメイクだね。

イランとのA代表同士の対戦は2005年8月、ドイツW杯アジア最終予選以来、実に10年ぶり。相変わらず欧州でプレーする選手が多く、期待の若手も育っている。

またサッカー人気も高く、約9万人収容のアザディ・スタジアムは男性ファンで埋まり、異様な雰囲気に包まれるはず。10年前のアウェー戦でもジーコ監督率いる日本は1-2で敗れている。本当の意味でのアウェーだ。

個人的には、イラン人といえばものすごく負けず嫌いというイメージが強い。思い出すのは、1993年のアメリカW杯アジア最終予選(カタール開催)の際、各国メディアが親交を深めようということで、現地でイランチームと対戦したことだ。日本には岡ちゃん(岡田武史)や、現役を引退して間もないメンバーがいて、なかなか豪華なメンバー。

簡単に勝てると思っていたんだけど、試合が始まるとどうもおかしい。なんと、相手は14人も出ているんだ。さらに、負けるのは絶対にイヤだと、いつまでたっても試合を終わらせてくれない。最後は根負けして同点に追いつかせ、その瞬間に試合が終わったんだ。あれには驚かされた。

話が少しそれたけど、イランというのは、アジアでは手応えのある貴重な相手。だからこそ、日本は若手を試したりするのではなく、今のベストメンバーで臨んでほしい。ノルマはもちろん勝利。シリア戦、イラン戦と連勝で飾って、いい流れをつくりたいね。

(構成/渡辺達也)