香川の本領は“攻撃のスイッチ”にあり…シリア戦のカギを握るアクションとは

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 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「今年、最も大事な試合」と位置づけるシリア戦が、日本時間10月8日22時よりオマーンのマスカットで行われる。この試合で最大のキーマンになると考えるのが、ドルトムントで活躍する香川真司だ。もともと攻撃の中心選手ではあるが、これまでアジア2次予選で対戦した3カ国より実力の接近した戦いが予想されるゲームにおいて、高い位置でチャンスを作り、ゴールに結び付けられるかは彼の活躍にかかっていると言っていい。

 現在トーマス・トゥヘル新監督が率いるドルトムントで攻撃の中心として活躍する香川は、ここ数試合の日本代表でチームが波に乗り切れない中でも確かな存在感を示し、勝利に貢献している。9月3日のカンボジア戦は1得点を決めながらゴール前の簡単なシュートを外して正直に反省の言葉を発したが、同8日にイランで行われたアフガニスタン戦では鮮やかな2ゴールを決めて6−0の大勝に貢献し、世間の雑音を封印した。

 2008年に初めてA代表に選出された香川について、当時の岡田武史監督は「攻撃のスイッチになれる選手」と評価していた。2010年の南アフリカワールドカップは惜しくも選外となり、トレーニングパートナーとして代表チームに帯同したが、ドイツのドルトムントに移籍して迎えた2011年1月には、中村俊輔の代表引退から空き番号となっていた10番を引き継いだ。

 そこから日本代表の中心的な存在として期待が高まっていったが、本人にとっても大きな目標であったブラジルW杯でも輝きを放つことができず、チームはグループリーグ敗退。そこから2014−15シーズンは当時所属していたマンチェスター・Uで不遇の時を過ごし、冬に古巣ドルトムントへ復帰してからも本来の姿を取り戻せずにいたが、今シーズンは開幕戦から安定したハイパフォーマンスを披露している。

 では、その理由はどこにあるのだろうか。

 現在の香川が最も優れている点は、持ち前のテクニックとセンスを周囲の動きにシンクロできていることだ。ボールタッチのフィーリングが良いこともあり、速い流れの中でもボールを正確に扱いながら敵と味方の状況を把握して効果的なプレーを選択できているように見える。事実、昨シーズンにはあまり見られなかった狭いエリアで受けるシーンも増えており、難しいシーンでのミスもほとんど見られない。

 良さが見られない時の香川は高い位置で相手ディフェンスに吸収されてしまうか、逆に下がりすぎてボランチのようにボールをさばく役割がメインになり、むしろ攻撃リズムを停滞させてしまいがちだ。トップ下の選手が広いスペースを探して移動しすぎると、周りのスペースが消えてしまう。しかし、現在はまず起点となるプレーを意識しながら、周囲に広めのスペースがあっても味方がそこを狙っていれば中央の狭いエリアに止まり、ボールを引き出してシンプルにつなぎ、味方にスペースを使わせる働きを心掛けている様子だ。

 今シーズンのドルトムントは香川、マルコ・ロイス、ヘンリク・ムヒタリアン、ピエール・エメリク・オーバメヤンのカルテットを擁している。彼らは地元メディアから“ファンタスティック4”とも称されるほどで、攻撃陣のタレント力が組織として連動し、相手の対応を困難なものにしている。そのリンクマンとして重要な役割を担うのが香川で、ゴール前で決定的なプレーに絡むシーンも増えているように、起点のところで周りの動きをうまく生かす流れから発生している、言わば周囲との相乗効果がドルトムント攻撃陣を支えている。

 また守備では高い位置から“ゲーゲンプレス”を行い、味方がボールを奪った瞬間に攻撃に切り替える部分をチームの一員としてハイレベルにこなせていることで、速攻でチャンスに絡むシーンの増加に直結している。監督がトゥヘルに代わったことで、ユルゲン・クロップ時代よりもカウンターとポゼッションの使い分けが明確になっているため、心肺に掛かる負担が減っているのは確かだが、良いコンディションを持続できていることが多くの時間で消えない状況につながっているのだろう。