8日のシリア戦へ向け、チームメイトの意識を高めると宣言した本田。その豊富なキャリアは間違いなくチームの財産だろう。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 所属クラブのACミランへの痛烈な提言で巷を騒がせているが、本人は至って平常心のようだ。チームメイトよりも1日遅れて10月6日のトレーニングから参加した本田圭佑は、いつものように言葉を選びながら、自身の発言について次のように答えた。
 
「サッカーをやってきてね。本気でトップを目指している身として、ただ行動に移したことはないですから。というのは、目指すところから逆算して行動をとってきているので。それにふさわしくない行動は、逆に言えば取りたくないのが自分のフィロソフィーですし。自分の正義を貫くことが、今後も自分自身であり続けるためにも必要なことなのかなって思っていますけどね」
 
 ミランは新シーズンのセリエAで3勝4敗の11位。10月4日のナポリ戦も0-4で大敗した。本田自身もここまで4試合・0得点と結果を残せず、9月27日のジェノア戦からスタメンを外れるなど苦境が続いている。
 
 それだけに、今回の代表での活動に対して思うところがあるようで、「チームがあまり良い状態ではないので、それを個人的に切り替えるためにも、代表では“結果”を求めてやりたいなと思います」と胸の内を語った。グループE・1位相手の直接対決という意味合いだけでなく、彼自身にとっても節目となる重要な一戦と位置付けているのだろう。
 
 そんな背番号4が、8日のシリア戦に対して、まず警戒したのが気候の問題だ。
 
「ヨーロッパとここ(オマーン)、日本とここの気温差がかなりあるので、そこに数日で馴れないといけない。相手のほうが、この気温には馴れているなかで、そういった差を埋めていくのは、考えている以上に簡単ではないと思っています」
 
 シリア戦がキックオフされる17時(日本時間22時)はちょうど夕暮れ時で、照りつける西陽が体感温度を上げる。また、陽が落ちても湿度が下がらず、肌に粘りつくような重い空気が体力を奪う。日本の選手たちは、こうした不慣れな気候に短時間で順応しなければならないのだから、本田が言うとおり「簡単な」ミッションではないだろう。
 
 また、「着いたのが昨日の話なので、そこまで詳しくは分からないですけど、何度か対戦してきた相手。印象としては身体が非常に強い」とフィジカル能力の高さも警戒すべきポイントに挙げた。日本とシリアの技術力の差は歴然だが、こと球際の競り合いに関しては完全に優位に立っているとは言い切れない。
 
 背番号4は、「そこは選手全員が当然認識していることなので、あえて意識して発言して、チームでまた気を引き締めてゲームに向かいたいなと思います」と率先してチームメイトの尻を叩くつもりだという。
 
 チームの勝利を第一に考えて行動する本田らしい発言だろう。とはいえ、明日のシリア戦は、そうした周囲へのアプローチだけでは十分ではないかもしれない。なぜなら、本田自身の代表での立ち位置も、問われる試合になる可能性があるからだ。
 今回の代表メンバーには、クラブで好調を維持する原口や清武、南野といった2列目の選手が多い。「クラブで結果を残している選手を使う」というハリルホジッチ監督の言葉が真実味のあるものなら、ミランでベンチを温める本田は代表でもいつレギュラー落ちしておかしくない立場にある。本人もそのあたりの危機感は感じているだろう。
 
 クラブでチャンスを得られていない以上、代表でのポジションを確立するために求められるのは、代表戦での“結果”だけだ。仮にこのシリア戦で不安を覗かせるようなパフォーマンスに終始すれば、それはこれまでに築き上げてきた信頼が揺らぐことにもつながりかねない。
 
 ハリルホジッチ監督が就任して、「縦に速いサッカー」を志向する日本代表は、どこか選手がポテンシャル通りの能力を発揮できずに、チームとしての停滞感が漂っているようにも見える。その責任の一旦は、主軸を務める本田自身にもあるはずだ。
 
 いずれにせよ、山場のシリア戦で期待されるのは、周囲を納得させるような働きだろう。願わくば、どこか停滞感が漂う日本を、そして自身を覆う重い空気を振り払うような爽快な活躍を見せてほしい。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェストWeb編集部)