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●ICT機器と神のノートの併用
教育の現場では、数年前から知識を伝えるだけではなく、思考力や問題解決力、コミュニケーション力など、従来の学習方法では身に付かない能力を育てる“21世紀型スキル児”教育が注目されている。その“21世紀型スキル”に“情報通信技術に関するリテラシー”、いわゆるICT活用も含まれており、タブレットPCや2 in 1パソコンなどが、学習ツールとして使われるようになっている。

ちなみに、低学年の教育にはタブレット、高等教育になるにつれパソコンが教育現場に多く導入される傾向があるという(教育事業関係者)。小学校などではICTから得られる情報量よりも、イラスト作成や手書きなど表現力を育む機器が、高等学校以上では長文作成に対応しやすい機器が求められるのがその理由ということだ。

とはいえ、ICTの活用はまだまだ始まったばかり。ICTを学習のサポートとして活用している学校もあれば、ICTを学習の中心に据えて先進的な授業スタイルを実現している学校もある。ここでは、日本マイクロソフトが展開している教育機関向けのプログラム『Microsoft Showcase Schools』へ参加して、ICTの活用を積極的に進めている小学校の公開授業の様子を元に、教育現場でICTがどのように活用されているか紹介していこう。

まずは、熊本県人吉市立人吉東小学校(以下、人吉東小学校)でで実施された“公開授業研究会”を見てみよう。人吉東小学校では、電子黒板に加えて、2 in 1パソコンを導入しているが、授業では普通のノートを利用しており、ICTを学習のサポートに使うタイプだ。 各グループで1台のパソコンを使う方式で、端末にはOneNoteがインストールされている。教諭の端末と生徒の端末は、ネットワークでつながっており、生徒の端末で入力した内容を教諭が確認したり、入力した内容を電子黒板に表示したりしながら、授業を進められる仕組みになっている。公開授業のうち、4年生の理科では“実感を伴った理解を図る”や“考察を深める協働的な学び”がテーマとなっており、生徒自身が入力したデータや撮影した写真を画面で確認しながら、観察の記録を振り返る。

なお、黒板に板書された内容は普通のノートに書き、学習した内容のチェックなどは、そのノートを通じて行われる。人吉東小学校では、従来の授業スタイルにICTを無理なく採り入れ、思考力・表現力をより高めるためにICTを活用する。

●タブレットを使って宿題に取り組む
一方、学校だけではなく、産学官が共同で取り組むことにより、強力にICTの活用を推し進めているのが、東京都の日野市立平山小学校(以下、平山小学校)だ。実施された公開授業の中でも、もっとも印象的だったのが「タブレットPCで宿題に取り組もう」をテーマとして掲げた6年2組の授業。校内にある図書館とメディアセンターを自宅に見立てて、教室から家庭へ戻った生徒がタブレットを使って宿題に取り組み、また教室へ登校してくるといった内容で、生徒がタブレットPCを持ち帰り、自宅で学習するための練習というわけだ。

授業では、生徒ひとりに1台のタブレットPCが渡される。それぞれの端末にはOffice 365 Education版のOneNoteがインストールされており、クラウドを利用して相互に通信ができる仕組みだ。タブレットPCを自宅に持ち帰って利用する際のポイントを確認したのち、生徒たちが図書館・メディアセンターへ移動する。移動を終えた生徒は、ランドセルからタブレットPCを取り出し、端末を起動。配信された問題に対して、解答を書き込んでいく。タブレットPCの操作には慣れているようで、着々と宿題を進めていくが……ここからが従来の学習とは少々異なる。書き込んだ解答が、すぐに採点され、間違えた箇所などにはアドバイスが表示されるのだ。教諭がクラウド越しに、生徒の解答を確認して、すぐに対応しているのである。

さて、公開授業を通して、教育現場でのICT活用をみてきた。授業をサポートするツールとして使う人吉東小学校、ICTをフルに活用して新しい手法にチャレンジする平山小学校。2つの小学校で、ICTへの取り組み方の違いはあるものの、今後の授業でICTの活用を前提としていることに変わりはない。

そこで、気になるのは、システムの構築や運用、デバイスの導入など、学校だけでは解決できない事柄だ。今回紹介した2つの小学校も、冒頭で紹介した通り、マイクロソフトの教育機関向けのプログラム『Microsoft Showcase Schools』に参加するなど、IT企業の支援を受けながら仕組みをつくりあげている。つまり、IT企業の動向を探れば、ICT活用の将来が垣間見えるのだ。

さっそく、日本マイクロソフトの文教本部で教育現場のICT活用に取り組む原田英典さんに、今後の同社の狙いを伺ってみた。

「現在、授業でのICT活用には、2つの段階があると思います。1段階目は教諭が電子黒板を使って教材を映して生徒が見るというケースです。2段階目は人吉東小学校や平山小学校などのように、生徒が端末を持ち、ICTを活用しているというケースです。この第2段階に入ってきたタイミングだと感じています。今後は、そういった環境を広げていくのが目標になりますね」

原田さんによれば『Microsoft Showcase Schools』に参加している教育機関は、ICT化が進んでいる学校だという。そういった環境を定着させるのが、目の前の目標ということだろう。それでは、その先には、どんな世界が待っているのだろうか。

「第2段階の学校が増えて、ICTが身近な存在になり、論理的思考などのいわゆる21世紀型スキルが身についてきたら、次はさまざまな課題を解決するための道具として、パソコンを活用してほしいですね。総務省のドリームスクールという実践授業がありまして、プログラムの授業を弊社で受託しているんですね。内容としてはプログラミングの教育なんですが……。プログラミングの技術を覚えるだけはなく、論理的思考やコミュニケーション力など、第2段階で身につけたスキルを組み合わせて、チームで課題に取り組んでみたり、アプリの使い方を工夫してみたり、プログラムというお題のもとに、より論理的な学びを促す教育を実践していこうとしています。それで、将来的にWindowsパソコンを利用していただけるとうれしいですね(笑)」

教育現場でのICT活用は、まだまだはじまったばかりで、いまだ模索している段階だ。とはいえ、今回紹介したマイクロソフトのほか、富士通や東芝といったIT企業が積極的に教育分野に取り組んでいる。今後、教育機関がICTとどう向かい合っていくのか興味深いところだ。

(川中島善次郎)