「素直にうれしいです......でも選ばれた上で何かをつかんで帰ってきたいと思います」

 日本代表に初選出された南野拓実は、発表の翌日、ザルツブルクの練習場で率直な気持ちをそう語った。

 10月1日、アウェーで行なわれる日本代表のシリア戦、イラン戦に向けたメンバーが発表され、ザルツブルクに所属する南野が初めて選出された。南野はザッケローニ監督時代の昨年4月に行なわれた日本代表候補合宿に招集され、6月のブラジルW杯では7人の予備登録メンバーにも選出されたが、本登録メンバーに入るのは初めてのことだ。

 今季、南野は公式戦12試合に出場し、9ゴール、4アシストの活躍を見せている。オーストリア・リーグに限っていえば、得点とアシストを合わせたスコアポイント(6ゴール、2アシスト)はリーグ2位タイ、得点ランクも2位タイとなっている。PKによる得点を除けば、リーグで最もゴールを決めているのは南野だ。

 南野の今シーズンの出だしは決して順調と言えるものではなかった。昨季終盤にポジションを掴んだが、今季から新監督が就任したためレギュラー争いは白紙に。シーズン最初の公式戦となったオーストリア杯初戦では後半途中からの出場となり、1得点を記録したものの、その後は先発どころか途中出場の機会さえなかなか回ってこなかった。

 その間、チームは危機的な状況に陥った。クラブにとって悲願であるチャンピオンズリーグ出場をかけた予選で8年連続で敗退しただけではなく、リーグ戦でも10チーム中9位の大不振。国内2連覇を達成している強豪クラブの見る影もなかった。

 そんなチームを救ったのが南野だ。今季初の先発出場となったリエド戦で2ゴールを決め、リーグ戦初勝利に貢献すると、その後も結果を残し続けてチームを復調に導いた。なかなか出場機会が巡ってこない時でも「やれる自信があった」という南野が、結果でそれを証明した形だ。

 今季の南野は誰が見ても文句のない結果を残し、そしてそれが今回の代表入りに繋がった。南野はザルツブルク加入当初から結果を出すことの重要性を常々口にしていたし、実際にそれを意識したプレーを見せてきた。そういう意味では南野は昨季から変わっていないようにも思える。ではなぜ今季、これだけの結果を残せているのだろうか。

 1つ目の要因として、南野は、言葉を使ってチームに溶け込めるようになったことを挙げた。南野がザルツブルクに加入してから9ヵ月が経ち、細かなニュアンスを除けばサッカーに関してはひと通りドイツ語でコミュニケーションが取れるようになった。実際、練習では通訳なしで監督の指示を理解し、後方の右SBの選手と守備の仕方について話し合う姿が見られた。

「プレー中に相手の意見を理解できる、自分の意見を少し言える」――それを南野は欧州でプレーする上で「すごく重要なこと」だと考えている。ただ相手の言っていることを理解できるだけではなく、自らの意見も伝えなければ十分とは言えない。欧州でプレーする選手は自己主張が強く、自らの意見を遠慮なくぶつける。外国人だから言葉ができないというエクスキューズは通用しない。むしろ、何も言い返せない選手は考えが無いとみなされ、ミスの責任を押し付けられてしまいさえする。

 通訳を介して後で話し合うこともできるが、それはあくまでも間接的なもの。サッカーでは試合中、プレー直後に修正できるかが大切になってくる。その場で解決できなければ意味がない。

 もちろんまだ言葉が完璧ではないため対等に言い合うことは難しいが、「言えることがすごく重要」と南野は言う。こちらにも考えがあるということを示すのが、チームに溶け込むうえでは重要なのだ。そうすることで初めてチームメイトを深く理解し、彼らからも自分を理解してもらうことができる。

 2つ目の要因にはミドルシュートを挙げた。ミドルシュートは大きな得点パターンであるだけでなく、決められるという余裕があればプレーには幅が出てくる。相手DFとしてもミドルシュートがあるとなると距離を詰めなければならないし、そうなればまた相手の背後も狙いやすくなる。

 南野のミドルシュートによるゴールはまだ1点のみ。しかし、初先発したリエド戦の2ゴール目となったこのミドルシュートは、力の抜けたフォームから鋭い弾道をネットに突き刺すファインゴールで、現地放送局の実況を驚かせた。「いいゴールだったよね」と話を振ると、その顔からは思わず笑みがこぼれた。南野は「あれで自信になった」と振り返る。その後、結果に絡み続けていることを考えてもその言葉に偽りはないようだ。

 ただ、このゴールにも伏線があったように思う。それは10分に挙げた先制ゴールで、CKのこぼれ球を1トラップから左足で流し込んだ。出場機会がなかなかないながらも南野は「やれる自信」を感じていた。そんな時に巡ってきた今季初めての先発。「何が何でも点を獲ったろうと思ってたし、ここでチャンス掴まな、出場機会はなかなかない」と感じていた。南野の気持ちを落ち着かせる上で重要なゴールだったに違いない。

 今、南野はいい循環の中にある。言葉のハードルが低くなってチームに溶け込めたことでチームメイトとの相互理解は深まる。そこで結果を出したことでチームメイトからの信頼を勝ち取り、どんどんパスも出てくる。そして自分の中にあった手応えは結果を出したことで確信に変わり、その自信はゴール前の落ち着きとなってさらなる結果に繋がっていく。「1つ取ったことで良くなってきた」――そう南野は振り返った。

 ハリルホジッチ監督は記者会見で南野について「常に得点を取る、もしくは取らせるポジションにいる」と述べた。縦に速いサッカーを志向するザルツブルクでは、左右のサイドハーフがまるでFWのようにゴール前にポジションを取ることが許される。しかし、ハリルホジッチがそういうサッカーを好むとはいえ、日本代表でのプレーは自ずと変わってくるはずだ。それについてはどう考えているのだろうか。

「どうですかね。そこは自分も楽しみなところです。どんなことを言われるんやろうって。でも、まずは自分のいいところを出していきたいと思っています」

 南野の目指すものは代表でも変わらない。監督やチームから求められることをやりつつも、自分の良さ――ゴール前で結果に絡むこと――を発揮していく。念のため、最後に今回の遠征での目標を聞いてみた。

「やっぱり試合に出て、チャンスをもらったらゴールを決めることだと思います」

 20歳の若者は代表で何を掴み、そして代表に何をもたらすのだろうか?

山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei