錦織圭(ATPランキング6位、10月5日付け)が、国内唯一のATPワールドテニスツアー公式戦・楽天ジャパンオープンのディフェンディングチャンピオンとして、東京・有明に帰ってきた。

「昔みたいにプレッシャーは感じない。昔は、コート上で硬くなったりしていたが、今は自信を持って戦えるようになってきている。ホームのサポートがあるし、楽しんで一戦一戦やりたい」

 錦織は2連覇、3回目の優勝を狙う。昨年優勝したATPクアラルンプール大会をスキップして、ジャパンオープンの前週に味の素ナショナルトレーニングセンターに宿泊し、インドアテニスコートでみっちり練習を積んだ。特に、サーブの練習には毎日時間を割いた。

「ファーストサーブの確率を上げること、(アンディ・)マリーなど、リターンのうまい選手には(自分の)セカンドサーブを攻められるので、苦手なところを少しずつ克服できるように練習した。スピードを上げたり、回転を交ぜたり、コースをばらつかせたり、一定のサーブにならないように気をつけた」

 いい準備ができた錦織は、第2シードがつき、1回戦でボルナ・チョリッチ(クロアチア、同38位)と初めて対戦した。2013年にプロへ転向したチョリッチは、17歳、124位だった2014年ATPバーゼル大会準々決勝で、初対戦したラファエル・ナダル(当時3位)を破ってブレークし、その年のATP新人賞に輝いた。今年2月、18歳になり、84位とさらにランキングを上げたチョリッチは、ATPドバイ大会準々決勝で、アンディ・マリー(当時3位)からも勝ち星を挙げ、未来のグランドスラムチャンピオン候補とも言われている。

 第1セットは、自分の想定以上にいいテニスができ、ディフェンスも堅かったチョリッチが、「攻め急いでミスが早かった。焦りも出てしまった」という錦織をプレーで上回った。だが、第2セットに入って集中力を落としたチョリッチに対して、錦織が落ち着きを取り戻し、ミスを減らしてレベルを上げた。「ボールを深く、ラリーも長くして、自分のミスでポイントが終わらないように」と意識した錦織が試合の主導権を奪った。

 錦織は、ファーストサーブの確率が、第1セット46%、第2セット37%と低く、自分の展開に持ち込めない要因となったが、得意のリターンは好調で、第2セットも第3セットも、ともに2回のサービスブレークに成功し、結局、2−6、6−1、6−2の逆転勝ちで2回戦に駒を進めた。25歳のトップ10プレーヤーである錦織と18歳のチョリッチ、経験値の差が如実に出た勝負となった。

 錦織は2回戦で、ビッグサーバーでフォアハンドストロークが強力なサム・クエリー(アメリカ、同50位)と対戦する。さらに、シード選手が順当に勝ち上がった場合、準々決勝で第6シードのマリン・チリッチ(クロアチア、同14位)、準決勝で第4シードのリシャール・ガスケ(フランス、同11位)と対戦する予定だが、優勝への道のりは決して簡単ではない。特にバックハンドストロークを得意とするガスケとは5回戦って、錦織はまだ1度も勝てていない。

 2015年シーズン終盤に入り、錦織が見据えているのは、ツアー最終戦であるワールドツアーファイナルズ(11月15日〜22日、ロンドン)だ。現在錦織は、その出場権を争うRace to Londonにおいて、3770ポイントで6番目につけている。ノバク・ジョコビッチ、アンディ・マリー、ロジャー・フェデラー、スタン・バブリンカの4人がすでに出場を確定させているため、残り4枠を争っている。

 そのため錦織は、今回のジャパンオープンと翌週のマスターズ1000・上海大会(10月11日~18日)を重要視し、少しでも多くのポイント獲得を狙う。

「ロンドンに出るためには、この2大会がすごく大事だと思う。2大会でポイントが取れなくても、まだチャンスがあるので、そんなに自分にプレッシャーをかけないつもりでいますけど、ここで大きなポイントが取れれば、かなり大きな差をつけられる。(10月)後半の数大会は、よりプレッシャーがかかってくるので、そのメンタルとどう付き合っていくか、これから学んでいかないといけない」

 年間成績上位8人しか出場できないツアーファイナルズの出場権争いに絡めるのは、安定した成績を残してきた超一流プレーヤーであることの証しである。その中で、過去には秋に猛チャージして出場にこぎつける選手もいれば、逆にそのプレッシャーのために、いつものプレーができなくなってしまい勝てなくなる選手もいた。

 そういう厳しい争いの中で、錦織が2年連続で出場権を獲得できるのかどうか。改めて、トッププレーヤーとしての彼の真価が、今問われている。

神仁司●文 text by Ko Hitoshi