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デジタルを活用して実施されたマーケティングコミュニケーションを対象に、アイデアや成果、技術力などを評価するコードアワード。2002年に「モバイル広告大賞」として創設され、2014年に「コードアワード」として刷新。グランプリやキャンペーン、イノベーションなど全6種の賞で構成されており、2015年で2度目の開催となる。

いずれの受賞作もデジタル領域で注目を集める作品ばかりだったが、本稿では今年、ベストキャンペーン賞を受賞した寺田倉庫の「minikuLOVE 〜元カレBOX・元カノBOX〜(以下、minikuLOVE)」にフォーカスしたい。同キャンペーンは、同社が提供するサービス「minikura(ミニクラ)」の認知度拡大とパートナー企業集めという、BtoC/BtoB両面での課題を解決するために展開された。

minikuraがリリースされたのは2012年、「Web上に自分の倉庫を保有できるサービス」としてスタートした。ダンボールにモノを詰めて送るだけで、月額250円〜と安価で保管できる"明朗会計"が売りの一つだ。さらに、同社では届いた箱を開封し、中身を一点ずつ撮影する。これによりユーザーは、マイページ上で「何を箱に入れて送り、何を保管しているのか」をいつでも確認できる仕組みだ。

「箱で管理するのではなく、モノで管理する方法です」と話すのは、minikuraグループ minikuraチームリーダーの柴田可那子氏。同サービスは、モノを一つずつ取り出し、洋服ならクリーニングに出したり、VHSテープならDVD化したりするなど、オプションを利用することもできる。2013年にはヤフオクと提携し、箱に入れたモノを出品できるサービスも始まり、好評を博す。

先進的なサービスではあるが、プロモーションに悪銭苦闘した時期もあったminikura。しかし、2014年4月にminikuLOVEの施策を実施後、売上が130%増、異業種の企業からの問い合わせが50件超となった。その勝因は何だったのか。過去の取り組みも交えて詳しく話を聞いた。

○minikura × ◯◯で企業/顧客獲得を目指す

柴田氏 :2012年9月にminikuraを公開した際は、常に改善を行いながらベータ版として運用していました。本格的にプロモーションを開始したのは、2013年1月からです。最初はどんな層に受け入れられるのかわからず、雑誌やWeb、交通広告など、あらゆる手法に手を出しました。

TVCMに限ってはコストが高いので、情報番組からお話をいただく機会があれば協力していました。何らかの施策を打てば確かに効果はありましたが、私たちには「100万箱を集める」という目標があり、もう少しスケールしたいなとは思っていました。

――― 今までの施策から転換するに至ったキッカケは何でしたか?

忘れもしない2013年のコミックマーケットです。minikuraの特徴と、たくさんのモノを収集するオタクやコレクターの方は親和性があるのではないかと思い、プロモーションを行いました。でも結果は散々……。「minikuraって何?」「どんなサービス?」というような反応が多く、あまりコンバージョンしなかったんです。

同人誌やフィギュア愛好家に対し、私たちが直接訴えても反応が薄い。それならフィギュアを販売する企業やサービスにminikuraを推してもらおうと、大きく方向転換しました。minikuraのAPIを開発し使っていただくことで、各企業にオリジナルの預かりサービスを提供してもらえば、その企業の商品を買う人たちも使ってくれるだけでなく、取扱い箱・モノの数も拡大していけると考えたのです。

その一例として2013年11月、アニメイトと連携し「アニメイトコレクション」という同人誌の入る箱を開発しました。かなり話題になり、Twitterでも拡散され、サーバーが落ちてしまったことも。その後、30〜40代男性をターゲットにしたバンダイのフィギュアレーベル「魂ネイションズ」のフィギュア専用のお預かりサービス「魂ガレージ」の開発に着手しました。

同サービスを2014年5月にローンチしたことを皮切りに、minikura×アニメグッズ、minikura×フィギュア……のように、minikura × ◯◯を増やしていくことが、箱もユーザーもモノも集まることが実感としてわかってきたんです。そんななか、minikura×◯◯でプロモーションを仕掛けて、APIを使ってくれる会社を集めるべく、2013年冬に構想し始めたたのがminikuLOVEでした。

○多くの人の共感を呼ぶテーマ。だから"失恋"をチョイス

――― テーマ(◯◯)を「LOVE(恋愛)」の中でも失恋に据えたのはなぜですか?

前提として、minikura×◯◯に人の共感を生む要素を入れたいなと思っていました。恋愛は大抵の人が経験したことのあるものですよね。とくに失恋となると淡い思い出で、実に長い間覚えているものですから、共感が生まれるのではないかと。

制作に携わってくださったオリコムさん、クリエイティブオリコムさんを含めたメンバーと雑談をしていたときに、「元カレBOX・元カノBOXなんてどう?」と話がトントン拍子に進んでいったんです。

――― やや攻めのプロモーションだと思いますが、社内への説明・説得は難しくなかったですか?

センセーショナルな企画でしたので意見が割れましたね。メンバーを説得し、巻き込むのには苦労しました。ただ、私も上司もこれくらい振り切ったプロモーションに挑戦しない限り、minikuraはもちろん、minikuraのAPIも広く認知されるようにはならない、と強気で訴えたのを覚えています。

実は、minikura自体も、足掛け5年ほど構想期間がありました。最初は「どうして送られてきた箱を開けて、モノを一つずつ撮影する必要があるのか」「箱を開封することにリスクはないのか」といった反対の声も一部では上がったんです。

でも、箱を開けないと次のステージに進めないし、次の展開が広がっていかない、と周囲を説得する上司がいたからこそ、サービスとして産声を上げることができました。それに、実際に一つひとつのモノを撮影することで、ヤフオクやアニメグッズ、フィギュアなど、さまざまな業種とのコラボにつながりました。

そんな土壌も少しずつできつつあったので、きちんと理解してもらえれば、今までにない取り組みもなんとか進めていける環境やチームだった、という感じですね。

○「minikuraとコラボすれば課題を解決できそう」と思われたい

――― 制作時の裏話や苦労話など教えていただけますか?

実は、お蔵入りしたアイディアがあります。最初は、その第一案にするつもりでした。「失恋の思い出に浸りましょう」みたいな、ふわっとしたイメージのクリエイティブで。上司からのフィードバックで「ちょっとつまらないね」と言われ、ボツになりました。

その後出した第二案のクリエイティブが、実際にローンチしたもので、恋愛残留物処理班「LOVE DANGERS」という謎の組織を打ち出した、かなり振り切った内容のものです。

制作会社のカヤックさんには、サイトのクリエイティブやワイヤーを引き直してもらい、ご苦労をかけたと思います。リリース前の週末は皆でほぼ徹夜で最終テストをしながら、公開日を遅らせるか否か、ギリギリまで検討していました。社内からは10人程度、協力会社数社と共に、受発注の垣根なく皆で乗り切り、予定通り無事ローンチすることができました。

――― 構想から半年。満を持してローンチした施策が、200を超える媒体に取り上げられましたね

正直なところ……あそこまでバズるとはまったく予想していませんでした。ちょうどドラマ「失恋ショコラティエ (フジテレビ系)」が放送中でしたし、ブランディアさんが「失恋BOX」をリリースしたタイミングだったこともあり、一緒にテレビ取材を受けたり、Webで特集してもらったりと運も良かったと思います。

また、「minikuraと組んだら〇〇ができる」「minikuraとなら△△の課題を解決できる」と企業やユーザーに伝われば良いなと思い、インパクトのあるオプションを意識的に用意しました。元恋人からのラブレターを元恋人に似た声の声優が読み上げたり、思い出の品を360度舐め回すように閲覧できたりと、エッジを効かせることには徹底的にこだわりましたね。

とはいえ、いくら尖った内容でも、バーチャルなサービスだと意味がありません。実在するサービスであることがポイントだったと思います。実際に使えるサービスとしてリリースしたことも、拡散に成功した要因の一つだと思います。Twitterでも「本当に届いた!」とツイートされたこともあります(笑)。

たくさん露出した結果、minikuraのサイト訪問数はひと月2〜3万セッションだったのが、20万セッションになるなど、桁違いに上がりました。コンバージョンも2〜3倍に伸びました。minikuraや寺田倉庫といったキーワードで検索してくれる方も増え、手応えを感じましたね。

――― 最後に。プロモーションでBtoC/BtoB 双方に対する課題を解決するため、意識すべきことを教えてください

「これはB向け」「あれはC向け」など、BとCを分けたり、過度に意識したりしないことでしょうか。BもCの要素を持っているんですよ。というのも、企業の企画担当者も、当然消費者目線を持っていて「これ面白い!」と感じるわけです。

ヤフオク!と提携できたのも、弊社の交通広告を目にしたヤフーの担当者さんが「一緒に何か取り組みができないか」と持ちかけてくださったからです。C向けに刺さるコンテンツを発信すれば、Bも見てくれるんです。「Cの心をつかむように」という戦略は正しかったと思っています。

(池田園子)