2試合連続出番なしとなった本田圭佑【写真:Getty Images】

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日本のみならずイタリアでも「注目の人」

 所属するACミランに対して辛辣な意見を口にした本田圭佑。クラブで出場機会を失った状態で代表戦に臨むのは自身にとって初めてのことだが、クラブ批判とも取られかねない発言をした以上シリア戦のパフォーマンスにはイタリア国内でも注目が集まるだろう。自らの力を示すことがその「正義」を貫くために必要なことといえる。

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 今季開幕から所属のACミランでトップ下で起用されながら、9月27日のジェノア戦で控えに回され、10月4日のナポリ戦もベンチと2試合連続出番なしとなった本田圭佑。

 セリエAで11位に低迷する名門の苦境に黙っていられなかった彼はナポリ戦後、「(マンチェスター)シティーやパリ・サンジェルマンくらいお金を使うか、そうじゃないならもう少しストラクチャーの部分から見直していかないといけない。でも選手が気づいていてもこのチームは変わらないんで…。

 やはりその時に経営陣が気づく、そして監督が気づく、そして選手たちが気づく、と同時にファンたちもやっぱり気づいていかないと」と歯に衣着せぬ物言いで、真っ向からクラブ批判を展開した。それが日本国内のみならず、イタリアメディアにも大々的に報道され、今の彼はまさに「注目の人」となっている。

 そんな本田が5日夜、8日の2018年ロシアW杯アジア2次予選の天王山・シリア戦のためオマーン・マスカットに到着。チームに遅れて合流し、6日夕方にはスルタン・カブース・スポーツコンプレックス横のサブグランドで現地初練習を行った。

 この日は前日以上に暑さが厳しく、17時のトレーニング開始時の気温は35度超。「ヨーロッパとここ、日本とここの気温差がかなりあるんで、そこに数日で慣れないといけないと。相手の方がこの気温には慣れてる中で、1試合の中で差を埋めていくのは、考えている以上に簡単なことではない」と本田自身も環境適応の難しさを実感した様子だった。

「自分の正義を貫くことが自分自身であり続けるためにも必要なこと」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が急きょ、冒頭15分以外は非公開にしたことから、内容の詳細は明らかにされなかったが、セットプレーを含めた攻守両面の戦術確認を入念に行ったという。リスタートのキッカーを務める本田にはゴールに直結する仕事が9月2連戦以上に強く求められるところだ。

 とはいえ、ミランで2試合試合に出ていないのは気がかりな点。2008年6月のバーレーン戦(埼玉)で初キャップを踏んで以来、クラブで出場機会を失った状態で代表合流したことはこれまでほとんどない。

「やってみないと分からないですけど、問題はないと思います。不安? 不安はあると言えば毎試合ありますけど、いいサッカーをしてチームをしっかり勝たせないといけないという危機感はつねに持ってます。

 クラブで1日練習を休んだことも、そこまで大したことはなかったんでしけど、えらい心配をかけてしまったなと。言えることは『心配しないでください』ということですね」と本人はフィジカル面に対する周囲のネガティブな見方を払しょくしようとしていた。

 ミランでの騒動によって、尋常ならざる重圧やストレスがかかる可能性もあるが、本人は至って冷静に自分の取った行動をこう説明していた。

「サッカーをやってきて、下手なりにも本気でトップを目指してる身の人間として、行動を起こす時には、ただ行動を起こすことはない。目指すところの逆算で行動を取ってきているわけですから、それに相応しくない行動は逆に言えば取りたくないというのが自分のフィロソフィー。

 自分の正義を貫くことが、今後の自分にとっても、自分自身であり続けるためにも、必要なことだと思います」と本田はキッパリと発言。この一件に区切りつけ、シリア戦だけに全力を注ぐ構えだ。

批判やバッシングは覚悟の上。シリア戦でインパクト残せるか

 実際、シリアという相手は難攻不落のチーム。2011年アジアカップ(カタール)での前回対戦では退場者が出る乱戦となり、日本は最後の最後で得た本田のPKで2-1の勝利を収めている。

 4年半も前のことだが、このゲームに出た選手たちの記憶はいまだに濃い様子。本田自身も相手の球際の激しさやしぶとさが脳裏に焼き付いて離れないという。

「何度か対戦をしてきた相手なので、印象としては体が非常に強いと。この暑さの影響等で、ボール際のところで少しでも相手にチャンスを与えるようなことがあったら、ピンチも招くだろうし、チャンスも多く作れなくなる。そこは選手全員が強く認識してることなんで、あえて意識的に発言して、チームを引き締めて試合に向かいたいですね。

(堅守のシリア相手にどう攻めるかは)今までやってきたことの延長線。タテに速いサッカーは相手の守備の形や戦術次第になるけど、それに合わせながら相手の裏を数多く突いていければチャンスは多く作れるんじゃないかと。

 スペースがない場合には、これまでも課題だった引いた相手を崩すということに継続してトライしていきたいと思います」と、彼は相手の出方を見ながら戦い方を変えられる臨機応変さと柔軟性が大一番のポイントになると位置づけているようだ。

 今回のシリア戦でインパクトを残せなければ、イタリアメディアやクラブ関係者からさらなる批判やバッシングを受け、窮地に追い込まれる可能性もある。それを覚悟の上で、彼は本音を語り、オマーンの地へ乗り込んできた。

 このゲームはこうした外野の声を封印できるか否かの大きな分かれ目。本田圭佑の今後のキャリアを左右することになりかねない節目になることも考えられる。

 とにかく今、求められるのは日本のエースとしてゴール、あるいは得点に直結する仕事を見せることだ。数々の修羅場をくぐってきたこの男はピッチ上で明確な答えを出せるはず。本田の一挙手一投足から目が離せない。

text by 元川悦子