かつて、世間の注目を一身に集めていた「ビーチの妖精」浅尾美和が引退し、はや3年。その後、人気も、実力も低迷が続いている日本ビーチバレーボール界に「期待の新星」が突如現れた。坂口佳穂(19歳)だ。

 坂口は、都内の大学で政治を学ぶ女子大生。9年間のバレーボール歴はあるものの、ビーチを始めてまだ1年半。まさに"原石"である。

 ビーチバレーボールの迫力と華やかさに魅了され、坂口が競技を始めたのが昨年の春。それ以来、週の大半を神奈川県川崎市にあるビーチスポーツクラブの砂の上で過ごし、ビーチバレーボールのオリンピアンや元代表選手らの指導を受けるなどして、経験の少ない競技者としてはこのうえない練習環境のもと、日々腕を磨いている。現在は決まったパートナーがいないものの、試合では実績のあるベテラン選手らとチームを組んで、さまざまな技術を習得中だ。

 今季序盤は下部ツアーのみのエントリーだったが、次第に出場するカテゴリーもステップアップ。国内トップツアーである、JVAビーチバレーボール・シリーズAの大会にも出場するようになった。

 同レベルの大会には、これまで3大会に出場。それぞれ決勝トーナメントに進むことはできなかったが、トップカテゴリーで2勝をマークし、日頃の練習の成果を徐々に発揮し始めている。

 そのあどけない笑顔と均整のとれたスタイルから、最近ではテレビや雑誌などのメディアに頻繁に登場。現状では、人気が先行している感もあるが、エンターテインメント性が高いビーチバレーボールというスポーツにおいては、それも必要な要素だ。

 競技における基礎的なスキルだけでなく、精神面もまだまだ足りない部分は多い。しかし坂口の、172cmの身長から繰り出す強打と、オーバーハンドにこだわったトスは魅力。素直な性格と真摯にビーチに取り組む姿勢も、彼女の成長を後押しする。

 かつての浅尾のように、ビーチバレーボール界のすべてを彼女に背負わせてはいけないが、低迷するビーチバレーボール界の"救世主"として期待される存在であることは間違いない。結果を出すまでには時間を要すとしても、試合に敗れて悔し涙を流す、負けず嫌いの一面を持つ"原石"は、今季中にもう一段、ステップを上がっていく可能性を秘めている。

 次なる公式戦は、彼女のホームコート『川崎マリエン』で行なわれるJBVツアー第3戦のビーチバレーボール川崎市長杯(10月9日〜11日)。次世代のヒロインが奮闘する姿は、見ておいて損はないはずだ。

小崎仁久●文 text by Kosaki Yoshihisa